クヌート [2009年 レビュー]
「クヌート」(2008年・ドイツ) 監督:マイケル・ジョンソン
ホントかどうか知らないが、動物の子どもの中で一番カワイイと言われているのがホッキョクグマなのだそうだ。そうかな。猫も犬もフツーにカワイイと思うけど。でも白クマの子どもなんてなかなか見られるもんじゃないから、希少価値という意味では一番かも知れない。そう思っていた。本作を観るまでは。でも。
この可愛らしさは尋常じゃない。
静止画だとぬいぐるみにしか見えないこのモコモコしたヤツが、息をして、まばたきをして、わしわしと動き回るのだ。本作を観た人は確実に「うわああ」と思い、「胸がキュンとなる」なんてありきたりな言葉で表現できないような気分を味わうことになる。僕はこの気持ちをどう表現すべきか1時間悩んだ。悩んだ末にこう伝えることにする。
まるで“心臓を甘噛みされた”ような気分。
「クヌート」とは2006年にベルリンの動物園内で生まれ、母グマに育児放棄をされてしまった子の名前。そして本作はクヌートの人工哺育の様子を追ったドキュメンタリーである。
この人工哺育については当時賛否両論あって、「母親に棄てられた子は安楽死させるべき」など、調べれば未だに物騒な記事を多数読むことが出来るが、本編ではその問題についてほとんど触れられていない。テーマは大きく「命の重要性」である。
「たとえどんな生き物であっても、それは軽んじられるものではなく、すべからく守られるべきもの」。
ありきたりなメッセージに個人的には失望したが、本作が今一歩踏み込んだテーマに落とし込めなかった理由は、「動物園の中で生まれ、動物園の中で暮らす」というクヌートの宿命そもそもが、自然の法則に反するという「絶対矛盾」を拭えないからだろう。
しかし本編に登場するのはクヌートだけではない。北極で生まれ、母クマの寵愛を受けて育つ三つ子のホッキョクグマと、母親を亡くした双子のヒグマも登場させ、人口哺育の功罪も隠そうとしていない点は評価できる。
動物園のシーンで一番興味深かったのは、育児放棄した母、父とクヌートを対面させたシーン。棄てた子どもに興味はないかと思いきや、母グマも父グマも異様なまでの興味を示していた。ところが、これが一体何を教えてくれるのか、そういった説明が一切ない。藤井フミヤが読んだナレーション原稿は終始こんな有様。なんの情報もなく、なんの捻りもなく、おまけに動物の気持ちを代弁するという、ドリトル先生にしか出来ないことまでやってのける。クヌートがそのとき何を考えていたかなんて、誰が理解できると言うのか。仮にオリジナル版がそうだったとしても、それは許し難い演出だった。
しかし難しく考えなければいい。
これを観た子どもたちはホッキョクグマの子どもを可愛いと思うだろうし、そんな小グマが地球温暖化の影響で明日にも溺れ死ぬかも知れない、と伝えられたら充分。
心がささくれているオトナはクヌートに心臓を甘噛みしてもらって、穏やかな気持ちになるべし。
甘噛みされた〜い。
「アース」でホッキョクグマの親子が登場した時、あまりの可愛さに泣いてしまったワタシ、こんなのみたら号泣しちゃうかも、です(笑)
by カオリ (2009-12-14 21:50)
和歌山県の人工飼育のホッキョクグマ「ピース」のドキュメンタリーは
見たことがあるのですが、人工飼育ゆえの問題も描かれていました。
今も元気に動物園で過ごしているようですが、生みの母親には拒絶されて
しまい、、クヌートのようにはいきませんでしたね。
この作品も見てみたいですね。
by うつぼ (2009-12-14 23:04)
>カオリさん
「アース」なんて論外です。号泣しちゃって下さいw
nice!ありがとうございます。
>うつぼさん
クヌートはつい先日3歳になったニュースが流れていましたね。
すっかりオッサンみたいな風貌になっていてたまげましたw
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-12-16 18:44)