キャピタリズム マネーは踊る [2009年 レビュー]
「キャピタリズム マネーは踊る」(2009年・アメリカ) 監督・脚本:マイケル・ムーア
デビュー作「ロジャー&ミー」は観ていない。けれどそれ以来、20年ぶりに経済問題を取り上げた作品なのだそうだ。リーマン・ブラザーズの破たんを契機に起きた世界的金融危機。その原因を探るマイケル・ムーアの“おなじみ”突撃取材である。
キャピタリズムとは資本主義のことである。
経済学者マルクスが19世紀に書いた、かの有名な「資本論」によると、資本主義とは「生産手段が少数の資本家に集中し、一方で自分の労働力を売るしか生活手段がない多数の労働者が存在する生産様式」なのだそうだ。
早いハナシ、この世は「雇用者」と「被雇用者」に分類されるということ。そして国は多額の税金を納め、多額の献金をする「雇用者」を優遇し、「被雇用者」は蔑ろにするもの、と理解しておけばいい。さらに細かく言うと重要なのは「企業」であり、「決裁権を持つCEO」であるということ。それ以外の人間は「虫けら」同然のようだ。少なくともウォール街では。
この程度の予備知識で本作は充分に楽しめる。
斜めから見たムーアの分析は相変わらず面白いし、ムーアならではのロジックが立て板に水の如く展開するため、127分の上映時間もまったく飽きない。レーガン大統領誕生の経緯、アメリカ自動車産業衰退の原因、社員に生命保険をかける企業の実態、コンチネンタル航空機がバッファロー空港の手前8キロ地点で墜落炎上した理由などなど、日本では報道されないもうひとつのアメリカの姿が、本作にはぎっしりと詰め込まれている。
僕が改めて知ったのは「アメリカが世界一の経済大国になり得た」理由と、「失墜した」理由である。すべては「戦争」が原因だった。勝っておごったアメリカと、負けて這い上がろうとした日本の差は大きかったのだ。
「成功は一日で捨て去れ」
先日読んだ本のタイトルが思わず頭に浮かんでしまった。
一方でこれはマイケル・ムーアのパフォーマンス・フィルムでもある。
断られることを承知で突撃取材をし、実際多くの現場で“撃沈”している。この計算高さが若干鼻についたりもするのだが、ムーアを煙たがる人間、好意的な人間、近づいてくる人間がいる辺りは、見世物として単純に面白い。今回一番笑えるのは元・ゴールドマン・サックス会長のポールソン財務長官に電話をしたシーン。ムーアが名乗った瞬間に電話を切られる件はまるで「知的なコント」のようだった。
経済問題はとても難しい。しかしムーア以下優秀な編集スタッフのおかげで見やすい作品に仕上がっている。問題は映画を観たあと観客がどうするかだ。
僕はいつまでも国や企業を信用していい時代は終わったと思う。
たとえば日本の2010年度税収は36兆円程度と言われる中、概算要求額は95兆円規模である。あり得ないだろう。仮に月36,000円の小遣いしかないお父さんが月95,000円使ったら、お母さんに怒られるだけでは済まないのだ。
マイケル・ムーアが最後に言う。
「もう僕ひとりで闘うのはムリだ」
そりゃそうだ。僕たちも変わらなきゃ。まずは「無関心」を止めることからはじめてみよう。
デビュー作「ロジャー&ミー」は観ていない。けれどそれ以来、20年ぶりに経済問題を取り上げた作品なのだそうだ。リーマン・ブラザーズの破たんを契機に起きた世界的金融危機。その原因を探るマイケル・ムーアの“おなじみ”突撃取材である。
キャピタリズムとは資本主義のことである。
経済学者マルクスが19世紀に書いた、かの有名な「資本論」によると、資本主義とは「生産手段が少数の資本家に集中し、一方で自分の労働力を売るしか生活手段がない多数の労働者が存在する生産様式」なのだそうだ。
早いハナシ、この世は「雇用者」と「被雇用者」に分類されるということ。そして国は多額の税金を納め、多額の献金をする「雇用者」を優遇し、「被雇用者」は蔑ろにするもの、と理解しておけばいい。さらに細かく言うと重要なのは「企業」であり、「決裁権を持つCEO」であるということ。それ以外の人間は「虫けら」同然のようだ。少なくともウォール街では。
この程度の予備知識で本作は充分に楽しめる。
斜めから見たムーアの分析は相変わらず面白いし、ムーアならではのロジックが立て板に水の如く展開するため、127分の上映時間もまったく飽きない。レーガン大統領誕生の経緯、アメリカ自動車産業衰退の原因、社員に生命保険をかける企業の実態、コンチネンタル航空機がバッファロー空港の手前8キロ地点で墜落炎上した理由などなど、日本では報道されないもうひとつのアメリカの姿が、本作にはぎっしりと詰め込まれている。
僕が改めて知ったのは「アメリカが世界一の経済大国になり得た」理由と、「失墜した」理由である。すべては「戦争」が原因だった。勝っておごったアメリカと、負けて這い上がろうとした日本の差は大きかったのだ。
「成功は一日で捨て去れ」
先日読んだ本のタイトルが思わず頭に浮かんでしまった。
一方でこれはマイケル・ムーアのパフォーマンス・フィルムでもある。
断られることを承知で突撃取材をし、実際多くの現場で“撃沈”している。この計算高さが若干鼻についたりもするのだが、ムーアを煙たがる人間、好意的な人間、近づいてくる人間がいる辺りは、見世物として単純に面白い。今回一番笑えるのは元・ゴールドマン・サックス会長のポールソン財務長官に電話をしたシーン。ムーアが名乗った瞬間に電話を切られる件はまるで「知的なコント」のようだった。
経済問題はとても難しい。しかしムーア以下優秀な編集スタッフのおかげで見やすい作品に仕上がっている。問題は映画を観たあと観客がどうするかだ。
僕はいつまでも国や企業を信用していい時代は終わったと思う。
たとえば日本の2010年度税収は36兆円程度と言われる中、概算要求額は95兆円規模である。あり得ないだろう。仮に月36,000円の小遣いしかないお父さんが月95,000円使ったら、お母さんに怒られるだけでは済まないのだ。
マイケル・ムーアが最後に言う。
「もう僕ひとりで闘うのはムリだ」
そりゃそうだ。僕たちも変わらなきゃ。まずは「無関心」を止めることからはじめてみよう。
ご無沙汰しております。(^_^;)
今までのマイケル・ムーア作品、見ておりますので、この映画もみようと
思っているのですが、このしつこさは彼ならでは結構好きだったりします。
アメリカという国自体が破綻しかけているのは本などを読んで私なりに
感じる部分もありますが、この映画も良いきっかけになると思います。
ホント、無関心ではいけないですよね。
by うつぼ (2009-12-14 23:00)
ムーアについて気がかりなのは、
彼自身がもはやセレブなのではないかということです。
そんなことないといいけどな。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-12-16 18:47)
>問題は映画を観たあと観客がどうするかだ。
ほんと、そうですよね〜。
わたしはとりあえず本買いました^^;
あまりに勉強不足を痛感したので。。。
by ジジョ (2010-01-20 12:12)
日本人が知らないことばかりでしたよね。
僕も勉強不足だったので、今改めて知識を詰め込もうとしています。
焼け石に水っぽいけどw
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-01-20 12:48)