ダウト ~あるカトリック学校で~ [2010年 レビュー]
「ダウト ~あるカトリック学校で~」(2008年・米) 原作・監督・脚本:ジョン・パトリック・シャンリー
いよいよ待望のブルーレイ生活が始まった。
その第1作目に選んだのが、画質なんか別段関係ない質素なドラマ「DOUBT」である。
なぜこの作品を選んだかと言うと、TSUTAYA豊洲店の品揃えがイマイチだったから。どうやらレンタルリリースはまだまだ少ないようで、レンタルブルーレイ生活を楽しむにはもう少し時間がかかりそうだ。
そのブルーレイ映像。妻は「どこが違うの?」とポカンとしていたが、DVDとの容量の差は歴然。ひとことで言うなら「濃厚」という表現が適切だと思う。ただ本作に限っては映像よりも内容の方がより「濃厚」だった。
どれくらい「濃厚」だったか。それは昨年のアカデミー賞にも表れていた。なんと本作の主要登場人物4人が4人ともノミネートされたのだ。その紹介スピーチを採録しよう。
まずはカトリック学校の校長、シスター・アロイシアスを演じたメリル・ストリープ(主演女優賞)。
ソフィア・ローレン
「次の候補者をどう紹介したらいいでしょう。彼女の名前そのものが比類なき才能を示します。そう、メリル・ストリープです(大拍手)。『ダウト』で厳格なカトリックの尼僧を演じ、激動の時代、彼女の抱える葛藤を私たちに実感させてくれました。これで15回目のノミネートですね。すばらしいメリル・ストリープです」
校長にある疑い<ダウト>をかけられるフリン神父、フィリップ・シーモア・ホフマン(助演男優賞)。
アラン・アーキン
「“俳優の中の俳優”とは、演技や自身にたゆまぬ努力を注ぎ、それを誇示せずに真実を追求する人々です。フィリップ・シーモア・ホフマンがそうです。映画「ダウト」では観客に“真実とは何か”を問い続けるフリン神父を演じました。真実を追求する彼の姿に、私たちは指標を見失わずにすむのです。迷いに捕らわれたときさえも。その功績を今年も讃えます」
最初に疑いを持った若きシスター・ジェイムズ、エイミー・アダムス(助演女優賞)。
ウーピー・ゴールドバーグ
「修道女役は大変です(会場爆笑)。私も演じたのでわかります。第一に顔が太って見えます。衣装はいつも同じだし、憧れの相手は天にいるので映りません。そんな中、エイミー・アダムスが演じた経験の浅い修道女は、勇気をふりしぼって深い闇にひそむ道徳ミステリーに立ち向かいます。心動かされる演技はダウト<疑い>の余地がありません。神のご加護を」
そして、学校唯一の黒人生徒の母親、ミラー夫人を演じたヴィオラ・デイビス(助演女優賞)。
エヴァ・マリー・セイント
「短い出演時間で強烈な印象を残すのは難しいことです。その役でアカデミー賞にノミネートされるのはさらに大変です。それを成し遂げたのがヴィオラ・デーヴィスです(拍手)。「ダウト」のあなたは登場のたびにその才能で強い存在感を発揮し、真に迫った母親の愛情を感じさせました。あなたをもっと見たかった。ヴィオラ・デービス、おめでとう」
過去の受賞者にこう紹介された俳優たち。このスピーチを聞いて本作を観たくならない人がいるだろうか。観れば確かにいずれも素晴らしい演技を披露していた。中でもヴィオラ・デイビスのインパクトは絶大だった。
なにより最も濃厚なのはストーリーである。
教会の古くからの伝統とルールを頑なに守ろうとする校長と、教会は時代とともに変化すべきという革新派の神父。その神父が黒人生徒との“不適切な関係”を疑われ、校長に糾弾されるというもの。
最大のテーマは「信仰とは何か」である。
宗教を語るときに避けては通れないこの大テーマは、これまでも何度となく映画化されて来た。その中にあって本作は最も静かで、最も恐ろしい作品と言える。ヴィオラ・デイビス演じたミラー夫人の“告白”は、過去最高に衝撃を受けた言葉だった。
ゴールドバーグはこれを「道徳ミステリー」と言った。素晴らしく的確な表現。この一言に本作の面白さがすべて詰まっている。
そういえばブログのサブタイトル。「ブルーレイ日記」と改めるべきだろうか。
いよいよ待望のブルーレイ生活が始まった。
その第1作目に選んだのが、画質なんか別段関係ない質素なドラマ「DOUBT」である。
なぜこの作品を選んだかと言うと、TSUTAYA豊洲店の品揃えがイマイチだったから。どうやらレンタルリリースはまだまだ少ないようで、レンタルブルーレイ生活を楽しむにはもう少し時間がかかりそうだ。
そのブルーレイ映像。妻は「どこが違うの?」とポカンとしていたが、DVDとの容量の差は歴然。ひとことで言うなら「濃厚」という表現が適切だと思う。ただ本作に限っては映像よりも内容の方がより「濃厚」だった。
どれくらい「濃厚」だったか。それは昨年のアカデミー賞にも表れていた。なんと本作の主要登場人物4人が4人ともノミネートされたのだ。その紹介スピーチを採録しよう。
まずはカトリック学校の校長、シスター・アロイシアスを演じたメリル・ストリープ(主演女優賞)。
ソフィア・ローレン
「次の候補者をどう紹介したらいいでしょう。彼女の名前そのものが比類なき才能を示します。そう、メリル・ストリープです(大拍手)。『ダウト』で厳格なカトリックの尼僧を演じ、激動の時代、彼女の抱える葛藤を私たちに実感させてくれました。これで15回目のノミネートですね。すばらしいメリル・ストリープです」
校長にある疑い<ダウト>をかけられるフリン神父、フィリップ・シーモア・ホフマン(助演男優賞)。
アラン・アーキン
「“俳優の中の俳優”とは、演技や自身にたゆまぬ努力を注ぎ、それを誇示せずに真実を追求する人々です。フィリップ・シーモア・ホフマンがそうです。映画「ダウト」では観客に“真実とは何か”を問い続けるフリン神父を演じました。真実を追求する彼の姿に、私たちは指標を見失わずにすむのです。迷いに捕らわれたときさえも。その功績を今年も讃えます」
最初に疑いを持った若きシスター・ジェイムズ、エイミー・アダムス(助演女優賞)。
ウーピー・ゴールドバーグ
「修道女役は大変です(会場爆笑)。私も演じたのでわかります。第一に顔が太って見えます。衣装はいつも同じだし、憧れの相手は天にいるので映りません。そんな中、エイミー・アダムスが演じた経験の浅い修道女は、勇気をふりしぼって深い闇にひそむ道徳ミステリーに立ち向かいます。心動かされる演技はダウト<疑い>の余地がありません。神のご加護を」
そして、学校唯一の黒人生徒の母親、ミラー夫人を演じたヴィオラ・デイビス(助演女優賞)。
エヴァ・マリー・セイント
「短い出演時間で強烈な印象を残すのは難しいことです。その役でアカデミー賞にノミネートされるのはさらに大変です。それを成し遂げたのがヴィオラ・デーヴィスです(拍手)。「ダウト」のあなたは登場のたびにその才能で強い存在感を発揮し、真に迫った母親の愛情を感じさせました。あなたをもっと見たかった。ヴィオラ・デービス、おめでとう」
過去の受賞者にこう紹介された俳優たち。このスピーチを聞いて本作を観たくならない人がいるだろうか。観れば確かにいずれも素晴らしい演技を披露していた。中でもヴィオラ・デイビスのインパクトは絶大だった。
なにより最も濃厚なのはストーリーである。
教会の古くからの伝統とルールを頑なに守ろうとする校長と、教会は時代とともに変化すべきという革新派の神父。その神父が黒人生徒との“不適切な関係”を疑われ、校長に糾弾されるというもの。
最大のテーマは「信仰とは何か」である。
宗教を語るときに避けては通れないこの大テーマは、これまでも何度となく映画化されて来た。その中にあって本作は最も静かで、最も恐ろしい作品と言える。ヴィオラ・デイビス演じたミラー夫人の“告白”は、過去最高に衝撃を受けた言葉だった。
ゴールドバーグはこれを「道徳ミステリー」と言った。素晴らしく的確な表現。この一言に本作の面白さがすべて詰まっている。
そういえばブログのサブタイトル。「ブルーレイ日記」と改めるべきだろうか。
ブルーレイで私も『THIS IS IT』をみました。
ブルーレイは奥行きがありますね。
立体感があるっていうか。
うわっ!
スゴイ!キレイ!って思ったんですが・・・
そんなに変わらないのかな・・・(笑)?
by ecco (2010-02-10 20:56)
見応えあるドラマでしたよね。
それぞれの名演もさることながら、タイトルと中身が、
これほどマッチしている作品もないなーと感心しながらみてました。
ブルーレイ・・・SonyのTVだし欲しいけれど・・・。
まだ、さきのはなしです。
by クリス (2010-02-11 00:32)
いやあ、kenさんのレヴューを読ませていただくうちに、もう観たくて観たくてたまらなくなりました。
そういえば高画質のテレビが出始めた当初は、私もどこが違うのかよくわかりませんでした。
by Sho (2010-02-11 11:30)
>eccoさん
照明がどかーんと当たった明るい映像なら、その違いが分かりそうです。
「ダウト」は暗かったからなあ。
nice!ありがとうございます。
>クリスさん
ブルーレイの実力を確認できるのは、大型テレビなのだそうです。
ちっちゃいテレビだとそうでもないらしいw
うちも50インチくらいにしたいなあ。
nice!ありがとうございます。
>Shoさん
ですよね? 恐ろしく地味ですが、恐ろしい物語です。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-02-11 11:49)
こんばんは^^
濃厚な作品でしたね~。
どっぷりと物語の中に入り込んでしまってました。
同業者である俳優さんたちからの賛辞の言葉も納得、の演技でした~。
by てくてく (2010-02-13 01:59)
僕はオリジナルの舞台劇も観てみたいと思いました。
どんだけ濃厚なんだろうと。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-02-13 11:40)
紹介スピーチに納得です。
舞台劇というもともとの脚本を最大限生かした映画だったと思います。メリル・ストリープはほんとに上手いですね。
by カオリ (2010-02-26 17:13)
メリルは史上最高のイタコかも知れませんね。
何にでもなれるw
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-02-26 17:58)