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Vicky Cristina Barcelona [2010年 ベスト20]

それでも恋するバルセロナ」(2008年・スペイン/アメリカ) 監督・脚本:ウディ・アレン

 昨年のアカデミー賞を賑わせた映画がレンタル店に出揃い、今が見どころといった感がある。
 本作はペネロペ・クルスが助演女優賞を獲得した作品。
 コダックシアターの舞台上でアンジェリカ・ヒューストンはペネロペをこう讃えた。

 「『それでも恋するバルセロナ』のペネロペ・クルスは、英語とスペイン語でしゃべり続けます。言葉の意味は分からなくても彼女の感情がありありと伝わります。奔放さと力強さが融合されています。美しい容姿の下に真のコメディエンヌが見えました。おめでとう」

 「ダウト」のヴィオラ・デービスを差し置いて、この賞をもらう資格があったかどうかは分からない。
 しかし並びを見てみるとエイミー・アダムス(ダウト)、マリサ・トメイ(レスラー)、タラジ・P・ヘンソン(ベンジャミン・バトン)と、強敵がいなかったのも事実。ペネロペは「ボルベール<帰郷>」(2006年)で主演女優賞にノミネートされたときに、強敵だらけ(ヘレン・ミレン、ジュディ・デンチ、メリル・ストリープ、ケイト・ウィンスレット…なんたる顔ぶれ!)で受賞を逃しただけに念願の受賞だっただろう。

 さて本題。
 本作でまず最初に気付くのは、ウディ・アレンのリラックスぶりである。と言っても彼が出ているわけじゃない。映像の端々からカメラの後ろにいるだろうウディの表情が見えて来るのだ。画面のどこにも力んだ様子が無く、自然体であると同時に、撮影そのものを愉しんでいる様子が伝わってくる。こんなことを感じる映画は初めてだった。
 リラックスの理由は俳優にあると思う。
 お気に入りのスカーレット・ヨハンソンに加えて、ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルス、パトリシア・クラークソンという実力者が顔を揃え、さらにタイトルロールの一人レベッカ・ホールまでもがかなりの巧者で、満足のいく脚本を素晴らしい俳優たちに演じてもらったウディは間違いなくご機嫌だっただろう。
 また、バルセロナで撮影した理由をウディは、「出資者がいたから」とカンヌでの会見で語っていたが、この街のロケーションを気に入ったのも事実。観光名所のみならず何気ない表情の街角でも、まるでスナップ写真を撮るように、お気に入りのカットを重ねているのが分かる。

 物語はバルセロナのアーティスト、フアン・アントニオ(ハビエル・ベルデム)を軸に、自由恋愛主義のクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)と堅実派のヴィッキー(レベッカ・ホール)、そしてフアンの元妻マリア(ペネロペ・クルス)の“四角関係”を使って、ウディ得意の「恋愛論」を展開して行く。
 かなり面白い。しかも笑える。これは3人の女優を相手にまったくスタミナを損なわなかったハビエル・ベルデムの“体力”が大きいと思う。「ノーカントリー」でも見せたタフさは彼特有の持ち味かもしれない。仮にフアンをビル・マーレイがやっていたら、こんな作品にはなっていなかっただろう。いや、ふいにビルがやったら違う面白さが出たかもと、思っただけなのだが。

 スカーレットを起用した3本の中では出色の出来栄え。オススメ。

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カオリ

バルセロナ、という舞台がとても重要な映画だと感じました。バルセロナで生きている人たちと旅行者たちという構図が印象的でした。
by カオリ (2010-02-26 17:18) 

ken

旅は気持ちを変えますからね。
普段ならNOなものが、OKになったりする。
いやいや、不思議なものです。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-02-26 18:01) 

coco030705

こんばんは。
kenさんがウディ・アレン作品をほめていらっしゃるのは、初めてではないでしょうか?
俳優たちもよし、セリフもよし、風景もよしでいうことなしの楽しい映画でしたね。アレン監督はやっぱりコメディのほうがいい作品が多いかもです。
by coco030705 (2010-05-14 20:17) 

ken

てへ。
おっしゃる通り、こんなに気に入ったのは初めてです。
他にもいろいろ観てみたくなりました。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-05-15 00:15) 

てくてく

こんばんは^^
爽やかな風が駆け抜けるような
バルセロナの街並みが素敵でした。
そこに生きる情熱的な人たちも印象的。
ウディ・アレン監督も肩の力が抜けて
いい感じに撮ったんですね~^^
by てくてく (2010-11-29 01:08) 

ken

撮る人がリラックスしていると、それはそのまま絵に出るようですね。
写真と一緒のようです。リラックスしてこんな作品が撮れるウディもスゴイけどw
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-11-30 02:11) 

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