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バンク・ジョブ [2010年 レビュー]

バンク・ジョブ」(2008年・イギリス) 監督:ロジャー・ドナルドソン

 ジェイソン・ステイサム主演だからと言って、B級映画と侮ってはいけない。
 これは1971年にロンドンで実際に起きた、通称「ウォーキートーキー強盗」をベースにした物語。
 なかなか見せるクライム・サスペンスである。

 ベーカー街にあるロイズ銀行。その地下にある“貸金庫室”が襲撃された。
 実行犯と見張り役の無線のやりとりをアマチュア無線家が傍受し、警察に通報するも銀行の特定は適わず、多額の現金と宝石貴金属が盗まれてしまう。犯人同士の無線のやりとりが公表され(それでウォーキートーキー強盗と呼ばれる)、マスコミも犯人探しに躍起になるが、事件から4日後すべてのメディアからこの事件の報道が消えることになる。
 D通告。
 国防機密報道禁止令を英国政府が発令したからだ。このD通告は英国史上数回しか発令されていない特例中の特例措置。そこまでして事件を隠蔽したかった理由は何なのか?本作の見どころは、闇に葬られた英国史上最大の銀行強盗事件の舞台裏である。

 もちろん国家が全力で隠ぺいした事件である故、物語の一部は推測でしかないが、「ありそうなハナシ」にまとめられているところが良い。ただ残念なのは、いろんな立場の人間が登場する割に背景の描き方が希薄で、途中ストーリーから逸脱しそうになったことだ。
 一番困ったのはMI5とロンドン市警の区別がつかなかくなったこと。
 ちなみにMI5はイギリス情報局保安部~イギリス国内の治安維持に責任を有する情報機関で、D通告を出したのもMI5。本作には市警の収賄疑惑も絡んでいて、二つの組織のビミョーな関係が、途中何箇所かで引っ掛かってくるのだ。だから未見の人には「字幕に追われて顔を見落とさないように」とアドバイスしたい。

 序盤は「オーシャンズ11」のように、銀行強盗の仲間集めをもう少し厚く見られれば良かった。印象に残っているのは“少佐”だけで、他はどうもインパクトに欠けた。もちろん役者の知名度もあったと思う。しかし「オーシャンズ11」の場合は、それぞれの背景がきちんと描けていたからこそ、見たこともない中国人俳優にも感情移入が出来たのだ。特に後半はこのメンバーたちにフォーカスするのだから、序盤でもっと丁寧に説明が出来ていれば、と思わずにはいられなかった。

 ジェイソン・ステイサム主演だがB級映画ではない。少なくともB+の評価は与えていい。
 僕たちには全く縁のない「銀行の貸金庫」というパンドラの箱を開けたらどうなるか。想像を膨らませて観ると面白いだろう。

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コメント 4

Betty

闇に葬りさられた事件。今でも未解決なのでしょうか
この映画チェックします!
by Betty (2010-03-03 12:50) 

ken

未解決もなにも、公式文書は2054年まで公開されないそうです。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-03-03 14:20) 

うろごつはくば

これ、肌に合いませんでした。
途中でみるの止めちゃったわ。
by うろごつはくば (2010-03-06 23:24) 

ken

ごろさんに合わなかったとしたら、推測が過ぎるところでしょうか?
なのにnice!ありがとうございます。
by ken (2010-03-07 02:44) 

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