KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR [2010年 ベスト20]
「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」(1997年・ドイツ) 監督:トーマス・ヤーン
2009年に長瀬智也、福田麻由子コンビでリメイクされた「ヘブンズ・ドア」のオリジナル。
タイトルはボブ・ディランが映画「ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯」(1973)のために書き下ろした名曲中の名曲(邦題「天国への扉」)。
余名わずかと診断された男2人が、まだ見ぬ海を見るために病院を抜け出し、いくつもの犯罪を犯しながら海を目指すロードムービーである。
ロードームービーと海が大好きな僕にはこれだけで充分“ご馳走”で、脳腫瘍の症状の描写に一部納得いかないところはあったが基本は楽しんだ。実はコメディでもある。
手の施しようの無い脳腫瘍と診断されたマーチン(テイル・シュバイガー)と、末期の骨肉腫と診断されたルディ(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)は病院の地下駐車場に停めてあったクルマを盗んで海を目指すのだが、そのクルマがヤクザのベンツで、しかもトランクには重要な“荷物”が乗っていた、という設定である。当然マーチンとルディの2人はヤクザに追われることになるのだが、このヤクザ2人が“おつむが少々弱い”というお約束の設定で笑いを牽引していく。
迫り来る死を真正面から受け止められる心の強い人はそうそういないだろう。恐怖心を払拭するために「楽しいこと」を求めようとするのは当然の成り行きで、未見だがロブ・ライナー監督の「最高の人生の見つけ方」も同様のテーマなのだと推測する。ただ本作の場合、あれもこれもやろうとしない。目的はただ一つ「海を見に行く」という単純なものだ。
ロードムービーのゴールは例えそれがなんであっても許されはするが、その「動機と理由がしっかりしていると、観客の興味は最後までブレない」ものなんだな、と僕は再認識した。マーチンとルディが海を見に行くことにしたいきさつはこうだ。ルディがマーチンに「実は海を見たことがない」と明かすと、マーチンは「いま天国で流行っていることは何か知ってるか?」と切り出す。
「それは壮大な海の美しさを語り合うことだ。夕陽が溶け合う前に放つ、血のように赤い光を語る。そして海によっていかに太陽がその力を失うかを語る。残るのは心の中の炎だけ…。だがおまえは会話に加われない。見たことがないからだ」
この詩的なセリフには参った。僕がルディでも絶対に海を見るまでは死ねないと思う。
映画を作るタイプは二通りあって、ひとつは映像で、もうひとつは言葉で組み立てようとするタイプだ。本作の場合は当然後者で、至るところに気の利いたセリフと設定が用意されている。感動的なのはクライマックス。ヤクザにまんまと捕まった2人が殺されようとする寸前、ボスに言われる一言が実にいい。個人的にはいまさら脚本賞をあげたいと思った。
始まって3分と経たないうちに笑いが一発あるだけで、映画に対してぐっと好感を持つことも勉強になった。
佳作。やっぱりロードムービーはおもしろい。
2009年に長瀬智也、福田麻由子コンビでリメイクされた「ヘブンズ・ドア」のオリジナル。
タイトルはボブ・ディランが映画「ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯」(1973)のために書き下ろした名曲中の名曲(邦題「天国への扉」)。
余名わずかと診断された男2人が、まだ見ぬ海を見るために病院を抜け出し、いくつもの犯罪を犯しながら海を目指すロードムービーである。
ロードームービーと海が大好きな僕にはこれだけで充分“ご馳走”で、脳腫瘍の症状の描写に一部納得いかないところはあったが基本は楽しんだ。実はコメディでもある。
手の施しようの無い脳腫瘍と診断されたマーチン(テイル・シュバイガー)と、末期の骨肉腫と診断されたルディ(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)は病院の地下駐車場に停めてあったクルマを盗んで海を目指すのだが、そのクルマがヤクザのベンツで、しかもトランクには重要な“荷物”が乗っていた、という設定である。当然マーチンとルディの2人はヤクザに追われることになるのだが、このヤクザ2人が“おつむが少々弱い”というお約束の設定で笑いを牽引していく。
迫り来る死を真正面から受け止められる心の強い人はそうそういないだろう。恐怖心を払拭するために「楽しいこと」を求めようとするのは当然の成り行きで、未見だがロブ・ライナー監督の「最高の人生の見つけ方」も同様のテーマなのだと推測する。ただ本作の場合、あれもこれもやろうとしない。目的はただ一つ「海を見に行く」という単純なものだ。
ロードムービーのゴールは例えそれがなんであっても許されはするが、その「動機と理由がしっかりしていると、観客の興味は最後までブレない」ものなんだな、と僕は再認識した。マーチンとルディが海を見に行くことにしたいきさつはこうだ。ルディがマーチンに「実は海を見たことがない」と明かすと、マーチンは「いま天国で流行っていることは何か知ってるか?」と切り出す。
「それは壮大な海の美しさを語り合うことだ。夕陽が溶け合う前に放つ、血のように赤い光を語る。そして海によっていかに太陽がその力を失うかを語る。残るのは心の中の炎だけ…。だがおまえは会話に加われない。見たことがないからだ」
この詩的なセリフには参った。僕がルディでも絶対に海を見るまでは死ねないと思う。
映画を作るタイプは二通りあって、ひとつは映像で、もうひとつは言葉で組み立てようとするタイプだ。本作の場合は当然後者で、至るところに気の利いたセリフと設定が用意されている。感動的なのはクライマックス。ヤクザにまんまと捕まった2人が殺されようとする寸前、ボスに言われる一言が実にいい。個人的にはいまさら脚本賞をあげたいと思った。
始まって3分と経たないうちに笑いが一発あるだけで、映画に対してぐっと好感を持つことも勉強になった。
佳作。やっぱりロードムービーはおもしろい。
ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア デジタルニューマスター [DVD]
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- メディア: DVD
こんにちは。
この作品も「ヘブンズ・ドア」も未見です。面白そうですね~!
映画は難しいのも考えさせられるのも軽いのもいいですけど、
やっぱり笑いのある作品が一番好きです。
いつかチャレンジしてみたいです☆
by non_0101 (2010-03-06 15:31)
難しい作品はレビューを書くのにも力が要りますよねw
この作品は人生の意義を考えたいときにいいかも知れません。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-03-06 18:11)
観ました。良かったッス!
http://ohjiro.blog.so-net.ne.jp/2009-05-09
by おぉ!次郎 (2010-03-06 22:52)
キャストたちの面構えは思いっきりドイツなのに、
ノリが妙にアメリカ寄りなのが新鮮でした。
おふざけとシリアスのバランスもよかったですね。
by CORO (2010-03-07 00:50)
>おぉ!次郎さん
ドイツ映画のリズムなのか分かりませんが、いい間でしたね。
nice!ありがとうございます。
>COROさん
バランス!仰るとおりです。それってすごく大事ですね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-03-07 02:43)
私、この映画好きなのです。
ただ長瀬君の「ヘブンズドア」はどうも観る気になれません。
食わず嫌いかな?
by hana (2010-05-05 17:33)
僕も観る気になれません。食わず嫌いでもいいですw
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-05-05 17:40)