FLOWERS フラワーズ [2010年 レビュー]
「FLOWERS フラワーズ」(2010年・日本) 監督:小泉徳宏 脚本:藤本周、三浦有為子
資生堂シャンプー「TSUBAKI」の映画である。
主演は蒼井優、鈴木京香、竹内結子、、田中麗奈、仲間由紀恵、広末涼子と、いずれも「TSUBAKI」のCMに出ている人たち。ではどういう映画かというと、昭和初期から現代へと続く、ある家族の三世代に渡る系譜を描いていて、蒼井優の娘を竹内結子、田中麗奈、仲間由紀恵が、仲間由紀恵の娘を鈴木京香、広末涼子が演じ、それぞれの時代の“女性の普遍的な悩み”を表現している。テーマは「女の幸せとは何か?」である。
一企業の強い思惑によって生まれた映画だ。きっと商業主義の極みだろうと大した期待はしていなかった。それが良かったのか、僕は劇中3度泣けた。日常に満ちている“小さな幸せ”と“大きな思いやり”にフォーカスした脚本はなかなかの出来栄えだったと思う。そして三世代に渡るドラマをわずか110分にまとめた監督の手腕にも驚いた。体感時間は2時間オーバーだったけれど、これはいい意味。それほど(断片的ではあるが)濃厚なドラマだったと思う。
愉しみかたはいくつかある。
まずはこれだけの女優が出演する映画であるということ。
主役級の女優6人が1本の映画で顔を揃えるというのは、過去にもなかなか例の無かったことである。遠い昔に使い古された「オールスターキャスト」という言葉がまさにぴったりで、もちろんそれぞれに見せ場がある(ただし均等とは言い難い)。斜めに観ると「男性が理想とする女性の在り方を描いた脚本」と言えなくもないが、はたして女性の目にはどう映ったか。僕は男なので純粋に美しい女優の競演を愉しんだ。なんたってヒロスエが可愛くていい(笑)。
映像も愉しめる。
昭和初期から現代へと続く物語は、まるで日本の映画史を観るような映像で綴られていく。
昭和11年から始まるオープニングはモノクローム。タッチは明らかに小津安二郎である。シンプルなタイトルの出し方にも驚いた。
昭和30年代に入ると色彩が濃厚になり、日活映画や東宝の「クレージーキャッツ・シリーズ」を髣髴とさせる。高度経済成長期の勢いと力強さが色に出ていた。
昭和50年代は寅さん全盛の時代である。オイルショックなどはあったものの「一億総中流」と言われた時代でもあり、格差の無い社会は今にしてみれば懐かしく、結果「平和な時代」であったと思う。その柔らかな質感が山田洋次風に仕上げられていて、個人的にはこの時代のカラーが一番心に響いた。こうして順番に観て来ると、現代のブルーを基調にした質感も“時代の色”であることが分かって面白い。
ただ残念なのはクライマックスで、本作がコマーシャリズムに満ちた映画であることを思い出させるワンカットがあること。ドラマが終息に向かい、観客が息を整えようとするタイミングで、これ見よがしに“椿の花”がインサートされるのだ。
なんたる下品な演出。「椿三十郎」じゃあるまいし。僕はこれ一発で萎えてしまった。これさえなければ80点の映画だったのに、結果的には65点の気分である。
それでも。
本作を観ると自分のルーツを考える。
普段父や母、あるいは祖父母のことは想っても、なかなか曽祖父母のことまでは想わない。しかし本作によって、今の自分は祖先の誰か一人が欠けていても生まれなかったのだ、という“奇跡”に気付かされる。だから僕は、ヒロスエの「生きてるだけで楽しいんだよ。お母さんに感謝だよ」のセリフに泣けたのだ。
「考えさせる映画」としてはまったく悪くない。余計な「TSUBAKI」の花さえなければ。
資生堂のための映画だという先入観を思い切り持っていたのですが・・・見応えがあるんですね。ちょっと楽しみになりました。
出演者のインタビューで「こんな一族あいえない」と誰かが言ってましたが、ほんとにこんなに美人揃いっていのはあり得ない。一人くらいみそっかすが混じってるとリアリティあったかもですね(笑)
by カオリ (2010-06-15 18:48)
「一人くらいみそっかすが…」とはいいアイディアですねえ。
個人的には山田花子さん希望(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-06-15 22:37)
私も「どうせあんまり面白くないんだろうな・・」と思っていたクチです。
書いていいのかわかりませんが、確か最初に監督をされていた方が、自殺されましたね。いろんなしがらみが大きすぎたのでしょうか。
「その時代を見る」という意味では、とても興味深いです。
by Sho (2010-06-16 13:10)
ええ、そんなことがあったんですか。それは知りませんでした。
by ken (2010-06-16 20:46)
こんにちは。
私は女優陣が観たいとチャレンジしたのですけど、
意外に思いっきり泣かされました~
“椿の花”はちょっと笑ってしまいましたけど、
あなどれない作品だなあと思わされました(^^ゞ
by non_0101 (2010-06-17 07:08)
そう、あなどれないという言葉がぴったりの映画かも知れませんね。
でも、この記事の閲覧数を見る限り、ヒットしそうもないなあ(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-06-17 09:21)
ちょっとした広告宣伝的意図を感じたくなくて、
この手の映画は敬遠してしまうのですが、、、
観てみてもいいかな、と思わされました。
みそっかすはイモトアヤコ希望です。
by movielover (2010-06-18 00:38)
正直この作品は気にもかけていませんでしたが、
時代の移り変わりを映像に反映するアイデアが面白そうですね。
椿の花の衝撃?にも妙に期待してしまいます^^;
by CORO (2010-06-18 21:17)
>movieloverさん
イモトアヤコもいいですねえw
この映画、資生堂のスポットCMが逆パブになってますね。もったいない。
nice!ありがとうございます。
>COROさん
期待していなかった分、楽しめたというのが正直なところです。
椿にげんなりしてくださいw
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-06-19 23:45)