SSブログ

007/ユア・アイズ・オンリー [2010年 レビュー]

007/ユア・アイズ・オンリー」(1981年・イギリス/アメリカ) 監督:ジョン・グレン

 シリーズ12作目。ボンド映画の検証を再開してみる(続ける自信ないけど)。

 前作「ムーンレイカー」が当時の特撮ブームに乗った“SFアクション映画”になってしまったこともあって、本作では初心に帰ろうとする姿勢が随所に見て取れる。
 何より12作目にして一番困ったのは「ボンドの派遣先」だろう。そもそも東西冷戦という大きな背景はあるものの、これまでの具体的な任務については「どうなの、それ?」と首を傾げたくなる小さなヤマも少なくなかった。そんな中でボンドは突然、宇宙へ飛び出すのだ。
 やりすぎである。
 しかし、やりすぎて困るのも作り手である。宇宙ステーションで大仕事をしたボンドが、次はどこへ行けば観客の期待を裏切らずに済むのか。「女王陛下の007」で編集を担当し、今回監督に抜擢されたジョン・グレンは悩んだと思う。そこで出した答えが「初心に帰る」だったのだ。

 「ユア・アイズ・オンリー」(どうして原題から「FOR」を外したのか、未だに理解に苦しむ)は、ボンドが亡き妻の墓前に花を手向けるシーンから始まる。続いて、どこからどう見てもブロフェルドとしか思えない車いすの男が登場する。この“謎の男”はボンドが乗ったヘリコプターを遠隔操作し、ボンドを殺そうとする。しかしボンドは驚くべき身体能力を発揮し(早い話がヘリコプタースタント)、逆に謎の男を葬り去るのだが、つまり本作は「ボンドの亡き妻」と「ブロフェルド(もどき)」という2つのアイコンを使って、「60年代のボンド映画に還る」意思表示をしているのだ。
 当時このプレタイトルに期待した人も多かっただろう。確かに秘密兵器に頼らない身体を張ったアクションは充実していたと思う。中でもボブスレーコースをスキー板で滑るボンドと、それをバイクで追いかける敵のスタントシーンは圧巻だった。しかし揉め事の種ともいうべきアイテム「ミサイル誘導装置ATAC」が、ちょっと小さなレジスターにしか見えないのはいかがなものか。こういった細部の詰めの甘さが、僕にはどうにも納得がいかないのである。

 ところで本作には、これまでのボンド映画には無い趣向が2つある。
 ひとつは、オープニングタイトルに主題歌を歌う歌手が顔出ししていること。
 登場するのは当時大人気を博していたシーナ・イーストンである(中野サンプラザでコンサートを観たのが懐かしい)。これはプロデューサーのブロッコリが「ビジュアルいいんだから出しちまえよ」とゼッタイ言ったに違いない。顔出しで主題歌を歌うのは2010年現在、これが唯一の事例だそうだ。
 もうひとつはボンドが“据え膳食わぬ”設定。
 「アイス・キャッスル」のリン=ホリー・ジョンソンがボンド・ガールの一人として出ているのだが、積極的なのは彼女のほうでボンドはまるでやる気ナシ。だったら出さなきゃいいだろう、と思ったのは僕だけか(笑)。
 
 当時は「スパイ映画の原点に戻った」とあちこちに書かれていたけれど、だからと言ってとびきり面白いわけでもなかった。個人的にはキャロル・ブーケのスレンダーさ加減がイマイチ乗れない原因だったかも。
 ちなみに本編にはMが登場しない。M役のバーナード・リーが撮影前に逝去したためで、彼への敬意を示し本編では休暇中という設定になっている。

 JAMES BOND WILL RETURN
 IN
 OCTOPUSSY

 あれ。文言が短くなってる(笑)。

ユア・アイズ・オンリー [Blu-ray]

ユア・アイズ・オンリー [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: Blu-ray

nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 2

コメント 2

きさ

この映画の本筋に関係ないイントロ、見た時に「レイダース/失われたアーク」のイタダキじゃないかと思ったのですが、レイダースも同じ年なんですね。
じゃあ偶然の一致かな。
まあ、ボンド映画固め見するのもキツイでしょうから、ボチボチお願いします。

by きさ (2010-06-13 21:19) 

ken

感覚が鈍る感じがあります。なのでボチボチ行きます(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-06-14 01:09) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

ACACIAアウトレイジ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。