より良き人生(2011年・フランス) [2011年 レビュー]
原題:Une Vie Meilleure/A BETTER LIFE 監督・脚本:セドリック・カーン
24thTIFF6本目。
ちょっとした賭けが裏目に出て人生を大きく踏み外してしまう男の物語。かといって奈落へ堕ちて行くだけでのハナシではない。最後は精神的V字回復を果たすのだが、そこがこの映画の見どころである。
給食センターでコックをしているヤン(ギョーム・カネ)と、ナイトバーでウェイトレスをしているナディア(レイラ・ベクティ)は、ある日出かけた湖畔で空き家を見つける。ヤンはかねてからの夢だった自分の店を持つ決意をし、銀行に融資を申し込む。審査は通ったが、実は「ある」前提だった頭金をヤンは持っていなかった。どうしても自分の店を持ちたかったヤンは、町金で頭金を調達することに。しかし、これがすべての間違いだった…。
映画は時として“転ばぬ先の杖”になる。
本作で主人公のヤンが教えてくれるのは、「気持ちが焦ると判断ミスを冒し易い」ということ。
もちろんサラ金から金を借りる以外に道がないときもあるだろう。僕も若いとき、もう二進も三進もいかなくて、消費者金融で金を借りたことがある。しかし、さすがの僕も「頭金をサラ金から引っ張って、マンションを買おう」とは思わない。そう。目当てがマンションなら「別に必要ない」といった真っ当な理由で過ちを犯すこともないのだが、じゃあこんなときならどうだろう。
「いいカンジになったのにコンドームがない」
うわあ、である。なんでこんなときのために用意しておかなかったんだろう、と思う。それはコンドームも貯金も同じこと。チャンスはいつやってくるか分からないのだ。しかし、そんなことを今さら後悔しても仕方が無い。それよりも今、目の前にぶら下がっているチャンスを逃したくないと男なら誰でも思う。だからヤンはイッてしまったのだ。僕はヤンの気持ちが痛いほどよく分かった。男ならほとんどの客がヤンに感情移入を果たすだろう。
人生とは真夜中にセント・アンドリュースのコースを歩くようなものだ。花道を歩いていたつもりが、一歩間違うだけでロード・ホール・バンカーに墜ちてしまう。
墜ちてからのヤンの暮らしは悲惨だ。ところが面白いのはここからで、観客は人間の逞しさを思い知るだろう。それは「如何なる状況に追い込まれても、人間は最悪の中の最良を見出そうとする」生き物であることを知るからだ。
最後にヤンが見つけた“幸福”に心が温かくなること必至。これぞまさに「A BETTER LIFE」
幸せを手にする方法もきっと見つかる映画。佳作。
ギョーム・カネが素晴らしく良い。
>如何なる状況に追い込まれても、人間は最悪の中の最良を見出そうとする
おっしゃるとおりだと思います。
ヤンの「精神的V字回復」を、私も観てみたいと思いました。
by Sho (2011-11-22 06:22)
僕も新しく会社を興したばかりだったので、身につまされる映画だったんですけど
後味のイイ映画でしたよ。nice!ありがとうございます。
by ken (2011-11-22 18:38)