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エンジェル ウォーズ(2011年・アメリカ/カナダ) [2012年 レビュー]

原題:Sucker Punch
原案・監督・脚本:ザック・スナイダー 脚本:スティーブ・シブヤ

 セーラー服で日本刀を背負っているブロンドの少女。いかにもオタクが好みそうなビジュアルに目を留めた人も多いんじゃないかと思います。本作は「300/スリーハンドレット」「ウォッチマン」の監督ザック・スナイダーの新作ですが、アメリカでは散々な評価だったようです。
 コラムニストで映画評論家のリチャード・ローパーは、自身のサイト「RICHARD ROEPER & THE MOVIES」で評価を「D」とし、「派手で、アクションが多く、美女たちで溢れているが、それでもまだ退屈である」と評しました。オーランド・センチネル紙は4つ星満点の1つ星とし、「テレビゲーム型のアンエロティックでアンスリリングなエロティック・スリラーである」とし、「A.V.クラブ」は評価を「C」として、「不思議なトーテムを探すクエスト、明確に画定されたレベル、ノンストップのアクションの数々は冗長なテレビゲームや精巧なトレーラーよりも非映画的である」と。
 でも僕はまったく違う感想を持ちました。
「チョーイケてんじゃん!」
 これが僕の偽らざる正直な感想です。
 
 とある豪邸。2人の娘を持つ母が天に召される。悲しみに打ち拉がれる姉妹。継父が遺書を開封すると、そこには「すべての財産は娘2人に与える」との一筆。激高する継父。怒りの矛先を娘に向け、二女に襲いかかろうとしたところ、長女が銃を発砲。ところが銃弾は継父ではなく、妹に命中してしまう。愛する家族を2人同時に失った長女ベイビードール(エミリー・ブラウニング)は
継父の虚偽によって精神病院に入れられてしまう。そこで待ち受けていたのはロボトミー手術だった。ベイビードールは精神病院から脱出するため仲間を募り、空想の世界へ飛び込んで行く。

 多くの人は、このストーリー解説をふんふんと読みながら、最後の「空想の世界へ…」のところで「は?」ってなったと思います。「空想」ってなんやねん!ですよね。でもここが本作の最大の見せ場なんです。僕が評価するのもこの1点。説明しても解ってもらえない可能性がありますが、一応説明します。
 ベイビードールは精神病院でダンスを披露します。そのダンスが素晴らしくて関係者を唖然とさせ、その隙に仲間が脱出のために必要なアイテムを盗んだりするのですが、そのダンスを披露している間、観客はベイビードールの空想の世界へ誘われます。それが毎回激しいバトルの舞台になっていて、ベイビードールは日本刀と銃と超人的な肉体を使って、あらぬ敵と闘うのです。要するに「なんて彼女のダンスは素晴らしいんだ」的なセリフはあるものも、実際にダンスシーンは1コマもなく、どれほど見事なダンスかを表現するために、激しいバトルシーンが展開される、という構造なのです。
 と、説明しても多分解らないですよね。解らないと思います。僕の文章で伝わるほど単純な構造じゃないんです。だから観て欲しい。世界観は「マトリックス」と似ていますが、「バトル」を「ダンス」としたアイディアは今まで誰も持っていなかったはず。アメリカのメディアがこの作品に厳しかったのか理由は解りませんが、僕ならこう評します。

 「飛躍的な進歩を続けていたデジタル技術が一定のレベルに達したことで、映画製作者たちはそれをどう活かすべきか考える必要に迫られていた。ジェームズ・キャメロンが『アバター』で見せつけたのは現在の宇宙の果て。つまりデジタルの限界点。一方デジタル技術のおかげで描けないものは何もないことが解って、あえて“描かない”ことにトライしたのが、脳の内部に潜入するというエジソン級の発明をしたクリストファー・ノーランの『インセプション』。そしてザック・スナイダーは本作『エンジェル ウォーズ』で、『デジタルに頼るのではなく、デジタルを乗りこなせ』と訴える。どれほど技術が進歩しようと人間の想像力に勝るものは無いのだから」

 脚本の拙さはもはや論外。
 ミュージックビデオ風に仕立てられたプロローグから抜群に気持ちよく、アングルも編集もプロダクションデザインも音楽も何かと刺激的で心地良さ満点。

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きさ

この映画、話はちょっと弱い感じもありますが、結構楽しめました。
ヴィジュアルが結構楽しかったです。
お話は現実、幻想、さらにその世界での夢と三層構造になっているのですが、あまりその構造は効果的でない気がしました。
2層でいいんじゃないかなと思ってしまいました。
夢の世界で戦うあたりは結構好みでした。
設定は第一次大戦だったり第二次大戦風なのに主人公らの武器は今の物だったり、なんでも斬ってしまう刀が出てきたりまあテキトウですが。
なぜかパワースーツみたいなロボットや、ドラゴンが出てきたりやりたい放題ですが、個人的には割と好みでした。
日本アニメというか押井守みたいでした。敵兵士もケルベロスサーガのいただきだし。

by きさ (2012-02-25 16:15) 

ken

僕も大好物の部類でしたね。
世間じゃ「まんまテレビゲーム」って声もかなり聞きますが
「何が悪いの?」って思います。
ゲームには出せない映像クオリティだったと思いますしね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2012-02-25 23:11) 

通りすがり

この映画は、駄目でした。
「ドーン・オブ・ザ・デッド」
「300」「ウォッチメン」と、
外すことのない、ザック・スナイダーだったので、
期待していたのですが。

途中で、アクション・シーンは全部「想像」ということが
分かってからは、なんか、真面目に見る気が無くなりました。
普通にアクションものだったら、見たんですが…。
なんで、あんな設定にしたんだか、謎です。
というか、アメコミが原作だと思ってたら、
オリジナルだったんですね。今、ウィキではじめて
知りました
(やっちゃったな、ザック…)。

途中は、早送りで、
オチを見たら、例によって、「全部夢でした」系の
雑なドンデン返しで、あちゃ~というか、
ジョン・キューザックの「アイデンティティー」に、
オチが、似てるな~、と思いました。
これだったらまだ、「イーオン・フラックス」の方が、
マシかな、と思います
(話はつまらないけど、映像は奇麗だし、
主役はシャーリーズ・セロンだし)

ついでに、最近、アニメの
「ブラック・ロック・シューター」を見たら、
コンセプトが「エンジェル・ウォーズ」にそっくりだったので
(和製「エンジェル・ウォーズ」といってもいいくらい)
興味があれば、YOU TUBEで、覗いてみると、
いいかも、と思います。


by 通りすがり (2012-03-14 05:29) 

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