アメイジング・スパイダーマン(2012年・アメリカ) [2012年 レビュー]
原題:THE AMAZING SPIDER-MAN
監督:マーク・ウェブ
脚本:ジェームズ・ヴァンダービルド、アルヴィン・サージェント、スティーヴ・クローヴス
2002年からスタートした「スパイダーマン」の実写プロジェクトが2007年の「3」を持ってリセットされ、リブートされると聞いたときには驚いた。僕の世代からすると10年前はつい最近である。それでまた1から出直すなんて、と思ったけれど、いろいろ周辺を見渡すとSONYの事情も分からなくもなかった。
一番は興行成績。
ワールドワイドで見るとシリーズ1は8億2千万ドル、2は7億8千万ドル、3は8億9千万ドルと悪くないのだけれど、ドメスティックは見事な右肩下がりで、4億ドル、3億7千万ドル、3億3千万ドルと下降して行く。制作費は右肩上がりなのにだ。
二番はクリストファー・ノーランの「ダークナイト」の存在。
「スパイダーマン3」の翌2008年に公開され、ドメスティックだけで5億3千万ドル、ワールドワイドではなんと10億ドルを稼ぎ出した桁違いのアメコミ映画である。SONYは2011年に「スパイダーマン4」をラインナップしていたものの、2010年の段階でサム・ライミが降板したという情報もあり、「ダークナイト」が彼らに何かしらの影響を与えたのは間違いないだろう。
三番はトビー・マグワイア。
2008年の段階ではシリーズ4と5を同時に撮影する計画があって、トビー・マグワイアのギャラは2本合わせて5千万ドルという情報も流れていた(制作費高騰の原因のひとつ。ちなみに1の出演料は400万ドルだったとか)。
と、これら3つの要素を勘案すると「監督も主演も外してリブートするのが得策」となるのは致し方ないと言うことだろう。結果、個人的には大賛成である。僕は主演女優がどうしても好きになれなかったので。
さて1作目を再び作るとなるとハードルは高い。
1)ピーター・パーカーはいかにしてスパイダーマンになったのか?
2)ピーターとMJの関係は?
3)スパイダーマンが最初に対決する相手は何者か?
誰もが容易に想像するこの3大プロットをいかに処理するかで、作品の評価が決まってしまうからだ。
結論から言うと「とても良く出来ていた」と思う。
少なくとも僕は“ある1点”を除いて何の不満も無かったし、136分という尺に中だるみを感じることも無かった。それは良い意味で前シリーズの流れを引き継いでいないからだと思う。
一番驚いたのは「MJを登場させない」という選択である。
MJの代わりに登場するのはグウェン・ステイシー。原作ではピーターの最初の恋人として登場し、のちにグリーン・ゴブリンに殺される悲劇のキャラクターなのだが、そんなこと知ってようがいまいが“赤毛”じゃなくて“ブロンド”なのが良い。それでいてグウェンを演じるエマ・ストーンが薫り立つようなフェロモンを放っているのだから、キルスティン・ダンストをどうしても好きになれなかった客からすると文句なしである。彼女はアメコミヒロイン史上最強の女優と言っていいと思う。「(500)日のサマー」の監督だけあって、女の子を撮るのも巧くて良かった。
もうひとつ重要な点は「スパイダーマンがマスクを脱ぐ回数が意外と多い」ということだ。
マスクのままではなかなか感情移入し難いシークエンスで、今回のスパイダーマンは躊躇なくマスクを脱いでみせる。だからか今作のスパイダーマンは以前よりも血の通ったキャラクターに感じた。
主演のアンドリュー・ガーフィールドはトビー・マグワイアほどのスターではないから、サービスでマスクを脱ぐ必要はないはずなのだ。ということは、この「顔出し」は監督の周到な計算と見ていいだろう。
さて僕が不満を抱いた“ある1点”とは、手首からクモの糸を発射する装置のことだ。
前作ではかなりあやふやに処理していたけれど、今回は何やら腕時計を改良したようなものを手首につけて、糸を発射する仕掛けにしたようなのだが、その説明が足りなくて、どういう仕掛けなのかが全く分からなかった。ここだけが最後まで気になってどうしようもなく(しかも最後にその仕掛けが意外と大事になる)、もう少し丁寧に説明してくれても良かったんじゃないかと思った。
3Dについて。
全編を通して3Dが効いているかというと意外とそうでもない。しかしこれは「必要なところとそうじゃないとところ」を考えた上で使い分けていたように思う。もちろんスパイダーマンのジャンプは見応えがあるけれど、今さら3D効果に驚くほどでもない。2Dでも充分に楽しめる。
最後に。
スパイダーマンの根底にあるテーマは「大いなる力には、大いなる責任が伴う」である。
この精神は反古にされること無く、かと言って大げさにすることなく、さりげなく脚本に落とし込んであったと思う。ピーターの叔父と叔母を演じたのがマーティン・シーンとサリー・フィールドなのも往年の映画ファンには嬉しい。この味わいも僕は気に入っている。
続編にも期待。
サム・ライミ監督の前シリーズは好きで3本とも見ています。
主人公の苦悩が印象的だった前シリーズと比べるとこちらは軽めに処理していますが、これはこれでありかな。
アンドリュー・ガーフィールドの主人公もエマ・ストーンのヒロインもなかなかいいです。
主人公が子供を助けるシーンとその恩義を父が返そうとする所が良かったです。
ラストは一応事件は解決しますが、謎が色々残るので続編に期待ですね。
クモの糸が装置になったのは原作通りに戻したんですよね。
確かに原作知らない人には説明不足だったかな。
by きさ (2012-07-16 09:15)
こんにちは。
とてもワクワクして楽しかったです~
とにかく私にとっては主役の2人と監督さんが好きなので、
今回のシリーズを楽しみにしていました。
前シリーズの二人は、二人とも目が怖くて苦手でした^_^;
“アメコミヒロイン史上最強の女優”も納得です☆
by non_0101 (2012-07-16 19:52)
こんばんは
>キルスティン・ダンストをどうしても好きになれなかった客からすると文句なしである
→私このクチです。きらいじゃなかったけどMJに合っていなかったと思います。
エマ・ストーンのヒロインは、原作云々関係なくムチっとした健康的な色っぽさがよかったです。次回作も登場してほしいですね(^^)
by コザック (2012-07-17 00:14)
>きささん
僕も3本とも観ていますし、1と2は嫌いじゃありません。
ウェブシューターの件は知りませんでした。
そもそも原作なんて読んだこと無いしw
nice!ありがとうございます。
>non_0101さん
この主役2人を以前から知ってたなんて、さすがに通ですね。
nice!ありがとうございます。
>コザックさん
キルスティンはクールビューティなんですよね。
笑った顔がイマイチ可愛くないw
主演2人の続投は決まっていると聞きました。ゼッタイに観ます。
エマ・ストーン推しなんでw
nice!ありがとうございます。
by ken (2012-07-17 01:52)
こんばんは。
監督さん、「500日のサマー」の人なんですね。じゃあ観に行かなくっちゃ!この映画好きです。
キルスティン・ダンストはなんだか人気がないですよね。角度によって
変な顔に見えちゃうと思うんですけど。
キャストもよし、色々な映画事情もわかったし、そのうち観に行きますね。
by coco030705 (2012-07-18 23:57)
今年はアメコミ映画の当たり年ですから、乗り遅れないようにして下さいね!
nice!ありがとうございます!レビューも楽しみにしています。
by ken (2012-07-19 11:20)