イップ・マン 最終章(2013年・香港) [2015年 レビュー]
原題:葉問 終極一戦
監督:ハーマン・ヤオ
脚本:エリカ・リー
イップ・マン物件なので無条件で観てしまった。
タイトルから分かる通り晩年のイップ・マンを描いたものである。とはいえ特に「事実」との断りもないので物語はフィクションと捉えたほうがいいだろう。中国から香港に渡り、武館を開くことなく僅かな弟子たちにカンフーを教えていたイップ・マン。突然の国境管制による妻との別れ、美しいクラブ歌手との交流、そして裏社会のトラブルに巻き込まれた弟子の救出などを経て、その生涯を閉じるまでを描いている。
今作でイップ・マンを演じるのは「インファナル・アフェア」でウォン警部を演じたアンソニー・ウォン。52歳のときの作品だが、なかなか美しいカンフーを披露している。また序盤の敵役として登場するのが香港映画界の重鎮で、やはり「インファナル・アフェア」でマフィアのボスを演じたエリック・ツァン。本作「イップ・マン 最終章」もこの人が出て来た瞬間にグッと締まるから大したもの。ただし残念ながら脚本の出来が悪くて作品の完成度は高くない。
一番気になったところはそれぞれのシーンが断片的であること。
物語としての脈絡はあるものの、シーンごと話に“丸(句点)”がついてしまっていて、次のシーンは又一から話が始まる構造になっているのだ。シーンの継続性がないと続きを見るモチベーション(あるいは期待感)は低下する。となるとレンタル視聴の場合は、途中で「もういいかな」ってことにもなってしまう。映画はシーンの積み重ねによって完成するものと分かっていても、実はその積み重ね方がかなり難しい。…とはある映画プロデューサーの受け売りである。
最も有名になった弟子ブルース・リーとのエピソードもある。
我々の世代は本物と偽物の相似形にこだわってしまうため、輪郭が似ていないだけでガッカリし、ドラマに没入できないという悪い習性を持っているが、身の丈に合わない派手なことを嫌うイップ・マンの描写には役立ったように思う。
それにしてもイップ・マン物件で見ごたえがあったのは「序章」だけだったかも。
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