フォッグ・オブ・ウォー [2005年 レビュー]
「フォッグ・オブ・ウォー/マクナマラ元米国防長官の告白」(2003年・アメリカ)
一夜にして10万人の命を奪った東京大空襲は、今から60年前の今日の出来事でした。
マクナマラ元米国防長官はその生き証人。
第2次大戦、キューバ危機、ベトナム…。戦争と共に歩んだ人生を、戦争の中で学んだ教訓を軸に語る、実に意義あるドキュメンタリーです。
その教訓とは以下の11項目。
1.敵の身になって考えよ
2.理性には頼れない
3.自己を越えた何かのために
4.効率を最大限高めよ
5.戦争にも目的と手段の“釣り合い”が必要だ
6.データを集めよ
7.目に見えた事実とは限らない
8.理由付けを再検証せよ
9.人は善をなさんとして悪をなす
10.“決して”とは決して言うな
11.人間の本質は変えられない
この項目の中にひとつでも興味をそそるものがあったら観る価値アリです。
仮にひとつとして興味を持てなくても、教訓5のパートだけはぜひ観て欲しい。「戦争にも目的と手段の“釣り合い”が必要だ」は東京大空襲のことを語ったもので、戦争当事者が語る事実に驚きを隠せません。「空襲の生き残り」と呼ばれる方たちがマクナマラのコメントを聞いたらどんな気持ちになるだろう、と想像すると胸が苦しくなります。
また教訓8はベトナムを語ったパートですが、イラク戦争にも通じるコメントが出て来ます。
「アメリカは世界最強だがその力を一方的に他国に押し付けるべきではない。それが判っていればベトナム介入はなかった」
“言うは易し行なうは難し”ではある。
けれどまさに教訓9、「人は善をなさんとして悪をなす」だと思った。
マクナマラの言葉にはどうしても保身にしか聞こえない箇所もあるのですが、語ったマクナマラと語らせた監督(エロール・モリス)には拍手を送っていいと思う。もちろん60年も経たずにこんなドキュメンタリーが作られていれば、時代はもっと違っていたかも知れないと思う(思いたい)のだけれど。
マクナマラは1916年生まれ。
亡くなった僕の父は1920年生まれ。
戦争に行った親父が生きていて、この映画を観たら、はたして何と言っただろう。
そればかり考えていた107分でした。
最後にもう一度。
教訓5のパートだけでもぜひ観て下さい。
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