アイデン&ティティ [2005年 レビュー]
「アイデン&ティティ」(2003年・日本) 原作:みうらじゅん 監督:田口トモロヲ 脚本:宮藤官九郎
この映画を観る人たちは一体どんな人たちかちょっと考えてみた。
①【みうらじゅんの世界がたまらなく好き】派
てことは当然原作も読んでいたことでしょう。そんな人にとってこの映画はお祭り。
きっと劇場まで飛んで行っちゃったでしょうね。
②【宮藤官九郎の脚本を別の作品で「おもしれー!」と思っていた】派
そんな人たちはきっとみうらじゅんさんのことも嫌いじゃない人たちでしょうね。
でも、機会があったら観てみよう、と思っている程度。
③【田口トモロヲが実は「ばちかぶり」ってバンドをやってたこと知ってる】派
かなりマニアック。そんな人たちも当然みうらじゅんさんのことが嫌いじゃない。
でもクドカンマニアじゃない。バンドやってた人がどんなバンド映画を撮ったのかと思うだけ。
④【この3人が並んでいるのってなんとなく面白そう】派
サブカル好きな人たちですね。コラボとかユニットとかそういうことも好き。
でもどれも中途半端。実はディランなんて聴いたことないって人もいるはず。
⑤【役者に興味がある、その他】
その他の動機に関しては人それぞれですから。はい。
僕は④番です。ディランは聴いてましたけど。
もしも「自分はどれにも当てはまらない」と思うなら、この映画は観る必要ありません。
まったく必要ない。ついでにこの先を読む必要もありません(笑)。
これはバンドブームに乗ってデビューをしたロック青年が、自分が本当に目指す音楽は何なのかを探し求め苦悩する様を描いた映画です。
【音楽映画】というジャンルは簡単にドラマの「ヤマ」を作ることが出来るので、比較的感動的な作品に仕上げ易いのですが、この映画には万人が満足できる音楽的なヤマはありません。ここがこの映画のアキレス腱です。
また「音楽の楽しさを追求する物語」ではなく、「自分が追い求める音楽は一体なんなのかを見せられる物語」になっているのも辛い。つまり「みうらじゅんの私小説を映像化した映画」でしかないわけです。
主人公の中島が映画の後半である種の「悟り」を開くのですが、その達観が共有できないために観客は置いてきぼりを喰った気分になる。勝手にやってろよ、って感じです。
残念ながらトモロヲさんの監督としての技量も拙くて、映像にも見るべきところがありません。
ただ、中島の彼女を演じた麻生久美子だけが崇高な存在感を発揮しています。誰かが彼女のことを「日本映画界の至宝」と評していましたが、まったく同感です。彼女が出ているシーンだけはドキドキしながら観ていました。
結論。
①番に該当する人のみ、愉しんでください。
この映画劇場で見て、まあ好きなんですが、ほぼ同感です。
あまり誰にでもはお勧めできないかな。
麻生久美子は素晴らしいですが、こういう彼女がいたらそれはそれでキツイかなあとも思いました。
by きさ (2009-06-14 22:48)
そうは言っても、この映画をスゴク面白いという人もいるんですよね。
もちろん僕はまったく賛同しませんが、わざわざ「観なくていい」と言うのも
製作者に失礼なので、僕の中では「観なかったこと」になってますw
by ken (2009-06-15 00:31)