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幸せになるためのイタリア語講座 [2005年 ベスト20]

幸せになるためのイタリア語講座」(2000年・デンマーク)

 「ドグマ95」認定作品です。ドグマと
はハリウッドとは一線を画す映画作りを目指す運動ですが、僕がこれまでに見たドグマ映画はシム・ウナ主演「インタビュー」のみ。これがあまり面白くなかったせいで「幸せになる…」もオープニングでドグマと知った瞬間、なんとなく肩透かしを食らった気分。というのもこの映画の予告編がとっても良く出来ていて、ちょっと期待を寄せていたのです。
 でもその期待を削がれたのが結果的には良かったのかも知れません。特に一昨日の「ハルク」ですさまじいオプチカル編集を見せられていたので、シンプルこの上ない構造と編集は、まるで森の中で深呼吸をするような清々しさを覚えました。

 ちょっと乱暴に、でも判りやすく言うなら「
ラブ・アクチュアリー」のような映画なのですが、まさにあの映画こそ「ハリウッド的」で、この「幸せになるための…」がハリウッドとは正反対の位置にある「ドグマ」映画だと言えるでしょうね。
 観る側としてはこのシンプルな構造を受け入れられるか否かが、序盤の大きなポイントだと思います。ただ最初に違和感を感じた人たちでも物語が進行するに連れ、やがて友達の恋愛話を聞いているようなドキドキ感が湧き上がってくると思います。
 (*観た人はこの先、イッてよし)。
 


 

 この映画の優れている点は、何の前触れもなくふいに事態が急転するところにあります。
 例えば、レストランで働いていたジュリアが、ヨーゲンに好意を抱いていた事実。
 あるいは、美容師のカーレンとパン屋で働くオリンピアが実の姉妹であった事実。
 少なくともこの2点はまったく予想だにしませんでした。何故ならそう思わせない伏線が両方ともに引かれているからです。
 ジュリアとヨーゲンの場合は、ヨーゲンがハルに「4年もセックスしていない」と打ち明ける場面をジュリアに目撃させ、さらにジュリアがヨーゲンに「いい人を見つけてね」と慰めるシーンがある。
 カーレンとオリンピアの場合は、母親の葬儀シーンの前に、出席する葬儀を間違えるエピソードを挿入している。これが効いています。
 いずれも、オチに気付かないよう観客の目を逸らす伏線なのですが、ここが完璧でしたね。
 
 また映画の冒頭でバラバラだった登場人物たちが、最終的には3つのカップルの話になること。 
 そして3つの恋愛パターンにちゃんと変化がついていて飽きさせないこと。
 さらにラスト、アンドレアスのセリフがハッピーエンドに導くセリフとしては秀逸だったこと。
 など、褒めどころ満載の傑作。

 脚本に必要な「伏線」の勉強にも使える「優れた教材」だと思いました。

幸せになるためのイタリア語講座 デラックス版

幸せになるためのイタリア語講座 デラックス版

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • 発売日: 2004/09/03
  • メディア: DVD

 追記:本日20.000HIT突破してました。サンキュ。


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コメント 12

keiko-nari

なかなかいいですよね~
借りてきたとき、あんま興味がなかったけど。
見てるうちに興味しんしんになってきたひとつだな。
うっしっし。
by keiko-nari (2005-04-20 21:54) 

ecco

なんかkenさんの映画の見方に脱帽です。
私はよかった、つまらなかった、もう一回みたい、二度とでてくるな、そんな
感想でしか映画をかたれないけど。
kenさんはそうではないんですね。
ま。私は私の感じたままにいつもコメントさせていただきますが。。。(笑)

私がこの映画でもう1つ感じた事。
映像の具合。
ドキュメンタリーの番組なんかにある、光を感じない画面。
『ブリキの太鼓』を思い出してしまいました。
TBさせてもらいます!
by ecco (2005-04-20 22:59) 

この映画がkenさんの琴線に触れたようで安心しました☆
eccoさんに同じく、kenさんの作り手の立場から見た論理的な評価には
いつもドキリとさせられます。
私も別の視点からこの映画の良さを確認できました。
by (2005-04-20 23:39) 

ken

keikoさん
 そうそう、この映画は「立ち上がり悪かったけど完封勝ちしたピッチャー」
 みたいな映画です。(あ、先日「男の人ってなんでも野球に例えて話を
 したがりますよね」と仕事仲間から忠告されたばっかりだったのに、また
 やっちゃった)。

eccoさん
 「光を感じない」は気付きませんでした。でも確かに「ドグマ95」は人工照明
 を認めていませんからね。
 なるほど「ブリキの太鼓」もそんな雰囲気なんですね。実は観てないんです。

paserinさん
 もう一度観たいと思ったし、メイキングが見たい映画でもありました。
 セルDVDにはついているのかなあ。
by ken (2005-04-21 13:11) 

keiko

休みの日に何してますか?
お見合い私は10回以上しましたが面白かったので。
この質問で野球話に行く確立はかなり高かった
のを、ふと思い出しました。
by keiko (2005-04-21 13:41) 

ken

どえー、お見合いを10回以上も経験してるんですか!
すごい人気者か、おせっかいな人に恵まれたのか、良家の子女か、
(あるいは奇妙な趣味?)、この時代に珍しいですねえ。
僕、休みの日はスカッとクルマを飛ばして、温泉入ったり
富士山眺めたりしてます。
by ken (2005-04-21 16:20) 

Sardanapalus

はじめまして。TBとコメントありがとうございました!

>友達の恋愛話を聞いているようなドキドキ感
あ、このコメントはこの映画にぴったりですね。これから友人に薦めるときに使わせていただきます!(^^)

>オチに気付かないよう観客の目を逸らす伏線なのですが、ここが完璧
同感です。ここまで計算して書き込まれた脚本は久しぶりで、隅々まで無駄の無い傑作だと思いました。
by Sardanapalus (2006-12-26 22:55) 

ken

この映画はエンディングも良かったんですよね。
中も良くて終わりも良い。申し分ありませんね。
by ken (2006-12-26 23:38) 

chelsea

コメントありがとうございました。こちらからもTBさせて頂きました。
立ち上がりの悪いピッチャーの喩えは完璧ですね!
これからもちょくちょくお邪魔します~。
by chelsea (2007-04-04 10:48) 

ken

cheseaさん、ようこそ。
記事を書いた季節柄、野球に例えて話をしたくなるんですよねえ(笑)。
また遊びに来てください。
by ken (2007-04-04 13:28) 

さすがkenさんおすすめの映画でした。
すごく良かったです。
姉妹だったのにはびっくりしましたよね。
by (2007-07-06 12:06) 

ken

いや~古い記事にコメントありがとうございました。
気に入ってもらえて良かったです。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-07-06 15:03) 

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