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クラッシュ [2006年 ベスト20]

クラッシュ」(2004年・アメリカ) 監督・脚本:ポール・ハギス 脚本:ボビー・モレスコ

 2005年度アカデミー作品賞、脚本賞、編集賞受賞作品。
 まだ記憶に新しいところだが、作品賞の大本命は実は「ブロークバック・マウンテン」だった。しかし「クラッシュ」の受賞は「大逆転」と書いた現地のメディアもあったくらい、まさにどんでん返しだったがために「アカデミーは相変わらず保守的だ」との体質批判が先行し、「クラッシュ」はアカデミー賞報道の“蚊帳の外”にいたように思う。
 そんなわけで僕も実際に観るまでは「なんとなく地味な作品だな」という先入観があって、しかも出演している役者もサンドラ・ブロックが唯一主役クラスで、続いて名の知れたところではドン・チードルくらいと来ているから、アメリカはともかく日本では爆発的にヒットしていたという印象は薄い。
 つまりこの「クラッシュ」はアカデミー作品賞を受賞したがために正当な評価が伝わり難くなった珍しい作品なのだ。では実際のところどうなんだろう?
 僕は「ブロークバック・マウンテン」をまだ観ていないので比較は出来ないけれど、少なくとも「クラッシュ」は決して生易しい映画ではなかった。
 どちらかというとかなり刺激的で、そしてアカデミー脚本賞に相応しい内容だったと思う。
 
 ここには実に多様な人間が登場する。
 観客はこの中の誰かを自分に置き換えて見ることになるだろう。
 年齢も、性別も、職業も、肌の色も、人種も関係なく、登場人物の中の誰かを嫌悪し、誰かに加担したくなるはずだ。そしてその瞬間、あることに気付く。
 人間は誰もが加害者であり、被害者なのだと。
 僕はこの先、「クラッシュ」を観る度に新たな発見と新たな反省をすると思う。
 被害者と加害者は表裏一体。コインを回した力加減で、キャッチするタイミングで、ほんの些細なことで、被害者は加害者になり、加害者は被害者になるのだ。

 ここから先は、観客一人一人が何かを受け止めればいいと思う。

 僕はこう思った。
 人間に「先入観」というものがある限り、これから先も「差別」と「偏見」はなくならないだろう。
 しかし、「差別と偏見」は「知恵の輪」と同じだ。
 「知恵の輪」は一見すると解けるようには見えないが、この世に解けない「知恵の輪」は存在していない。それは人間が作ったものだからだ。
 差別と偏見も人間が作ったものである。
 だから必ず人間の力で解決することが出来るはずなのだ。

 「クラッシュ」は(PG12に引っかからない)すべての人にオススメする傑作です。

クラッシュ

クラッシュ

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2006/07/28
  • メディア: DVD

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コメント 4

瑠璃子

ご都合主義だという批判もあったようですが、私は愛読書が「ダロウェイ夫人」なので、そういうこともあるだろう、とすんなり受け入れてました。ブロークバックをみていないのであんまり言及できないのですが、でもこの映画は当て馬呼ばわりされるようなできじゃないと思うんですがね。私はいい映画だったと思いました。
うーん。次回作はニライカナイですか。凄く楽しみです。
by 瑠璃子 (2006-08-12 17:24) 

ken

「ブローバック・マウンテン」は、それはそれで面白いんだと思います。
が、確かに当て馬呼ばわりされる筋合いはありませんね。
特にダイアローグは素晴らしかったと思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-08-12 17:52) 

魚河岸おじさん

キョウレツな作品でした
何度見ても新鮮です。
by 魚河岸おじさん (2006-08-16 07:31) 

ken

もしも自分に子供がいたら、まずロスに連れて行って、
いろんな人たちを見せて回り、
そのあとでこの映画を見せてやりたいと思いました。
見聞を広める、とはこういうことでもあると思います。
本当にキョウレツな作品でした。
by ken (2006-08-16 10:50) 

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