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犬神家の一族 [2006年 レビュー]

犬神家の一族」(2006年・日本) 監督:市川崑



 第19回東京国際映画祭クロージング作品。

 昨年の「力道山」とは比べ物にならないくらい華やかな舞台挨拶でした。
 でもどれだけ美しい女優が顔を揃えようと、この日の主役は完全に市川崑監督だったと思います。齢90にして長編映画を撮るなんて並大抵のパワーじゃありません。しかも上映を前にして「いろんな批評を聞かせて欲しい」とまで言い切る真摯な姿勢に僕はとても感動しました。
 さて。
 松嶋奈々子が意外とコメント下手だったことに驚いたほかは別段面白いこともなく、淡々と進んだイベントのあと会場が暗転してまもなく僕はふと、こう思いました。
 「そもそも、なんで犬神家をリメイクしたんだ?」
 というのも映画の冒頭、スクリーンに「角川映画30周年記念作品」の文字が大きく浮かび上がったからです。
 きっと往年の角川映画ファンは「なんで今、犬神家???」と大勢の人が思ったことでしょう。
 僕もその経緯はまったく知らなかったのですが、調べてみたら分かりました。
 今年の1月27日に開かれた製作発表会見の席上、角川映画の現社長である黒井和男さんがこう話していました。

 【一瀬隆重プロデューサーから「市川監督の映画をつくりたい」と相談を受けて、市川監督に何を撮りたいか聞いてみたら、「横溝正史をまたやりたい」と言われました。
 それで、横溝さんのどの作品を映画化するか色々と考えてみたんですが、「最初に戻って『犬神家の一族』をリメイクしてはどうか」という話になり、市川さんにお願いしたら「いいよ、やるよ」と言われて今回の話が決まったんです。】

 しかしこのリメイク版、30年前オリジナルを劇場で観た世代にとっては複雑な思いでした。なぜなら最も多感な時期に見た「犬神家の一族」はあまりに衝撃的な作品だったからです。豪華なキャストも、驚きのストーリーも、島田陽子のオッパイも(笑)

 冗談はさておき、考えてみたらオリジナルが公開された1976年って、戦後31年しか経っていないんですね。そんな時代に昭和22年の物語はまだ違和感もなかったんでしょうけど、戦後61年を迎えた今年、このリメイクが若い世代に受け入れられるかどうかははなはだ疑問。なんと言ってもホントに“完全コピー”のリメイクですから。

 実を言うと、オリジナル世代の僕はリメイク版に対して、密かにある期待をしていました。
 それは「オリジナルとは違う別のエンディング」。
 僕は心のどこかでやはり「リメイクの意味」を探っていたんだと思います。リメイク版を興行的に成功させるためには、かつての客も、新たな客も満足させられる作品に仕上げることが必須。だからたとえ「別のエンディング」でなかったとしても、プロデューサーとしてはゼッタイに「なにか」を仕掛けなければいけなかったんです。
 もし万が一、
本作の興行収入が伸び悩むようなら、これは完全に一瀬隆重氏の責任と僕は断言します。僕自身は今の段階ですでに「一体何のためのリメイクだったんだ?!」と一瀬氏に詰問したいのだけど。

 ついでに、どうしても言いたい細かい話をひとつ。
 佐武(葛山信吾)と佐智(池内万作)のキャスティングは大失敗。キャラが被ってて最悪でした。

 そして最後に。
 「市川監督!次回は下心のない真面目なプロデューサーと組んで、ぜひもう1本面白い“写真”を撮って下さい!よろしくお願いします!」


犬神家の一族

犬神家の一族

  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • 発売日: 2000/08/25
  • メディア: DVD

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コメント 12

ecco

朝。
出掛けにコメント書こうとしたら時間切れ・・・^^;
帰ってきたら改めてコメント書きますね~
ではでは。
出勤です!(笑)
by ecco (2006-11-01 07:18) 

ken

ひょー。eccoさんてお早い出勤なのね^^
いってらっしゃいませ。
by ken (2006-11-01 11:29) 

魚河岸おじさん

あえて、書かなったんですが
今回のエンディングは本当に好きなんです
汽笛が鳴らないエンディング
なんかいいですね
by 魚河岸おじさん (2006-11-01 19:41) 

ken

エンディングはね、ぐっと来ましたよ。
あと映画が終わってしばらく拍手はなかったのですが、
「監督市川崑」がクレジットされたときに、ようやく拍手が起きてました。
当日居合わせた観客の気持ちがそこに表れていたような気がしますね。
by ken (2006-11-01 20:19) 

ecco

こんばんは~~^^
今回のは見ていないのでたいしたこと書けないのですが。
今回の松嶋奈々子、前回の島田陽子。。
こういうフラミンゴみたいな女優さんがあの役にはいいんですかね(笑)

あの明朝体のどデカイクレジットタイトルが、印象強いです。
映研でクレジット手書きしてました^^;
by ecco (2006-11-02 00:07) 

ken

昭和22年が舞台ですからねえ。
ダイナマイトボディの女優じゃ、どう考えてもおかしいですよね。
だからやっぱりフラミンゴみたいな女優が適しているんでしょう。
そういえば、むちむちの深田恭子は違和感があったかも…(笑)。
by ken (2006-11-03 14:14) 

瑠璃子

奥菜と松嶋は完全にキャスティングが逆だった気が…。やっぱりでかいと殴ったらよよよと倒れるより殴り返しそうで。ドリフのコント状態になって頑張った奥菜…。
しかし一応お祭り企画というそれ以下でもそれ以上でもないできでした。一緒に行ったハニーコミヤマはスケキヨ好きなのでピンバッチ買って喜んでましたけどw
by 瑠璃子 (2007-01-29 18:50) 

ken

奥菜が演じた役は、川口晶が演じてたんですよねえ。怖かったなあ。
あの域には達してなかったっすね、奥菜。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-01-29 21:28) 

satoco

戦争がなければ起こらなかった事件ですね。「ゼロの焦点」も戦後ならではのストーリィですが、昨今の若い人にはピンとこないでしょう。
戦争の記憶が風化して行く現象というのはこういうところにも表れるんだなあと思っていました。
「犬神家」の話じゃなくなってますね。すみません。
by satoco (2010-04-08 21:55) 

ken

戦争の記憶の風化。
仰るとおりですね。当時の時代背景を理解しないと腑に落ちない映画は
きっとこれから作られなくなっていくんでしょう。
そもそも作り手がそういう世代になりますからね。不安だ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-04-08 22:11) 

芸夢人

 お久しぶりです。

金田一耕助物はテレビシリーズの古谷一行のものが記憶に残ってますね。
いままで何人かの俳優さんが演じましたが映画版では石坂浩二とか加賀丈史
すきですね。
 ただリメイクより昔の方がよかったです。

by 芸夢人 (2011-02-06 16:26) 

ken

「悪魔が来りて笛を吹く」で一度だけ西田敏行さんが金田一をやってますけど
あれはあれで意外と好きだったなあ、と思い出しました。
by ken (2011-02-06 23:43) 

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