不都合な真実 [2006年 レビュー]
「不都合な真実」(2006年・アメリカ) 監督:デイヴィス・グッゲンハイム
パラマウントの試写室で観る。
仕事がらみではあるがこの作品は大いに興味があった。
これは温暖化による地球の危機を訴える元アメリカ合衆国副大統領、アル・ゴアの姿を追ったドキュメンタリー映画である。
僕はこのタイトルが好きだ。
本作を観れば、これ以上ない素晴らしいタイトルだと誰もが思うだろう。
しかし作品自体にはもう少し手を加えるべきだったと思う。
アル・ゴアが講演会で訴える内容は世界中の人間が耳を傾けて聞くべき、極めて重要かつ深刻な問題ばかりだ。ところが、この作品自体にも重大な問題点がある。
まず「講演会の模様が長過ぎる」という点だ。
確かに本作品において講演会の内容は最も重要な項目である。しかしこれはドキュメンタリー映画であって、フィルム講演会ではない。
そしてもうひとつ。ドキュメンタリー映画としては欠落しているものがある。
それは「主人公の葛藤」である。
アル・ゴアが闘う相手は地球上に存在する“すべての消費者”だ。
地球温暖化の原因を作る“消費者”こそ彼の敵なのだが、“敵”はこの映画を観ている“観客”でもあって、まるで身内に敵がいるようなものだから、ゴアのコメントは誠に歯切れが悪い。この歯切れの悪さが映画全体の切れ味の悪さにも繋がっているように思う。ではこれを打開するためにはどうすべきだったのか。
“消費者”を“敵”に出来ないのなら、“生産者”を“敵”にするべきだったと思う。
アメリカは利権のためなら大統領をも殺す国だ。
おそらくアル・ゴアにも相当の圧力がかかっているだろう。その圧力と戦う姿をなぜ織り込まなかったのか、僕には不思議でならない。
地球が破滅するかもしれない由々しき事態に、それでも金に固執する愚かな大人が世の中にはゴマンといるのだ。これを真正面から訴えても良かったのではないか。僕はそう思う。
そうは言っても、この作品は一見の価値がある。
劇中明らかにされる驚くべきデータの数々は、多少ではあっても確実に我々“消費者”の意識を変えるだろう。
もちろん気がついたすべてのことを行動に起こすのは難しい。
僕だってオープン2シーターからハイブリット・カーへの乗り換えは躊躇する。でも出来ることから始めることが大事なのだ。
出来ることからはじめること。
「まずはこの映画を観に行って欲しい」
僕の最初の一歩はこの一言から始まる。
パラマウントの試写室で観る。
仕事がらみではあるがこの作品は大いに興味があった。
これは温暖化による地球の危機を訴える元アメリカ合衆国副大統領、アル・ゴアの姿を追ったドキュメンタリー映画である。
僕はこのタイトルが好きだ。
本作を観れば、これ以上ない素晴らしいタイトルだと誰もが思うだろう。
しかし作品自体にはもう少し手を加えるべきだったと思う。
アル・ゴアが講演会で訴える内容は世界中の人間が耳を傾けて聞くべき、極めて重要かつ深刻な問題ばかりだ。ところが、この作品自体にも重大な問題点がある。
まず「講演会の模様が長過ぎる」という点だ。
確かに本作品において講演会の内容は最も重要な項目である。しかしこれはドキュメンタリー映画であって、フィルム講演会ではない。
そしてもうひとつ。ドキュメンタリー映画としては欠落しているものがある。
それは「主人公の葛藤」である。
アル・ゴアが闘う相手は地球上に存在する“すべての消費者”だ。
地球温暖化の原因を作る“消費者”こそ彼の敵なのだが、“敵”はこの映画を観ている“観客”でもあって、まるで身内に敵がいるようなものだから、ゴアのコメントは誠に歯切れが悪い。この歯切れの悪さが映画全体の切れ味の悪さにも繋がっているように思う。ではこれを打開するためにはどうすべきだったのか。
“消費者”を“敵”に出来ないのなら、“生産者”を“敵”にするべきだったと思う。
アメリカは利権のためなら大統領をも殺す国だ。
おそらくアル・ゴアにも相当の圧力がかかっているだろう。その圧力と戦う姿をなぜ織り込まなかったのか、僕には不思議でならない。
地球が破滅するかもしれない由々しき事態に、それでも金に固執する愚かな大人が世の中にはゴマンといるのだ。これを真正面から訴えても良かったのではないか。僕はそう思う。
そうは言っても、この作品は一見の価値がある。
劇中明らかにされる驚くべきデータの数々は、多少ではあっても確実に我々“消費者”の意識を変えるだろう。
もちろん気がついたすべてのことを行動に起こすのは難しい。
僕だってオープン2シーターからハイブリット・カーへの乗り換えは躊躇する。でも出来ることから始めることが大事なのだ。
出来ることからはじめること。
「まずはこの映画を観に行って欲しい」
僕の最初の一歩はこの一言から始まる。
少し前のプレイボーイ(もちろん月刊のほう)でこの映画の特集を読んで
ぜひ観たいと思ってました。
筋金入りのエコロジストが手がける「映画」は、「映画」としての魅力には
欠けるだろうとは予想していたのですが・・・。
とあるアメリカのコメディで「アル・ゴアとデートさせるぞ!」というのが
脅し文句で使われていて(これはこれですごく私にはウケた)、
彼の講演会の模様が長いというのは
それだけで致命的な気がします。
by 蓮花 (2006-11-03 11:05)
確かに「映画」としての魅力は希薄です。残念。
「アル・ゴアとデートさせるぞ」は、この映画を観ると笑えませんね。
これを笑うアメリカ人が、京都議定書への批准を足踏みさせているような
気がします。
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-11-03 14:05)
環境問題・・・人類に突きつけられた重い課題ですね。
先日『普天間かおり』のサイトに、ken様 と同じ論点で
発言している『黒木和彦』という方がおりました。
すごい文章でした!
「映像の達人」 などという言葉も出て来たりして
イメージが ken様 にダブりました。
お二人が同一人物でないとしたら(半信半疑)・・・ぜひ読んでみて!
http://futenma.net/i/ の BBS の 10月 12日の欄です。
by sakura (2006-11-03 18:04)
残念ながら「黒木和彦」さんとは同一人物ではありません(笑)。
僕にはあんなに力強い文章は書けません。
映画以外の芸術にも明るくないし…。
でも勉強になりました!ありがとうございます。
by ken (2006-11-03 18:48)
内容に賛同できるかどうかはともかく、この作品には興味があります。あと、もうひとつドキュメンタリーでWho killed the electric car?という作品がアメリカで公開中だそうで、こちらのほうがより気になっておりますw
by わらばー@見ッチェル (2006-11-08 02:32)
なるほど「誰が電気自動車を抹殺したか」ですか。
トレーラーを見ましたが面白そうです。
http://www.sonyclassics.com/whokilledtheelectriccar/
こういうドキュメンタリーって自分でも作ってみたいと思いますね。
by ken (2006-11-08 18:30)
コメント、niceありがとうございます。
見るべき内容ですが、作りはもひとつでしたね。
私も「主人公の葛藤」がないのは気になりました。
大学時代の先生との出会いや息子の大事故のくだりだけでは
ちょっと弱かったかな。
kenさんが書かれてる通り、この作品を観て、何か行動をす
ることのメッセージは伝わったと思います。
by ELEY (2007-01-01 02:17)
2070年だかの世界地図にはびっくりしましたね。
あれだけでも観る価値があると思いました。
劇場公開後の反応も楽しみです。
by ken (2007-01-01 19:06)
良い素材をそのままみせてしまった、工夫のたらない作品にも感じましたが、今作には環境問題の伝道師となって欲しいなと思います。
そして「うまい鮨を食らう会」に参加したかったデス(予定あわず)。
次回期待していますね。
by クリス (2007-12-03 22:30)
あれから時間が経過して、この映画が果たした意義の大きさに
感慨を新たにしています。
クリスさんの言う「伝道師」の役割は担ってくれていますね。
その後に出た、ディカプリオの同様の映画を観ると、この作品のクオリティは
決して低くないように見えるから不思議です。
by ken (2007-12-04 02:13)