ホワイト・プラネット [2007年 レビュー]
「ホワイト・プラネット」(2006年・フランス/カナダ) 監督:ティエリー・ラコベール他
自然ドキュメンタリー作品がここ数年多作になった理由は2つある。
ひとつは撮影技術が飛躍的に進歩したこと。
撮影技術の進歩によって「Wataridori」というヒット作が生まれた。
2002年度のアカデミー長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたこの作品は、残念ながら「ボウリング・フォー・コロンバイン」に敗れたものの、世界中のドキュメンタリー作家に大きな勇気を与えることになった。
なぜなら、それがもうひとつの理由なのだが、「人間が環境問題に興味を持ち始めた」ということを証明したからだ。
これを受けて“自然ドキュメンタリーの老舗”とも言うべきイギリスBBCが、海洋生物の生態をまとめた「ディープ・ブルー」(2003年)を発表する。日本では80万人を動員、興行収入11億円をあげるヒットとなった。
2005年にはフランス人監督のリュック・ジャケが「皇帝ペンギン」を発表し、アカデミー長編ドキュメンタリー賞を獲得する。
「ホワイト・プラネット」もそんな時代の流れに乗って作られたドキュメンタリー映画なのだが、特筆すべきは「地球温暖化で危ぶまれている北極の現実」をテーマに打ち出した点である。
それまでの自然ドキュメンタリーは「人間が知る善しもない自然の神秘」が大テーマだった。前出の「Wataridori」しかり、「ディープ・ブルー」しかり。
ところが「ホワイト・プラネット」がテーマに打ち出したのは「人間が破壊した自然の姿」だった。そこで暮らす動物たちの生態は「人間の知らない事実」ではなく、すべて「人間が知らなければならない事実」だったのだ。そういう意味で「ホワイト・プラネット」は意義ある作品だったと思う。
しかし、純粋にドキュメンタリー作品として面白いかと言われると、残念ながら素材の選び方とまとめ方に失敗していると言わざるを得ない。
本編の軸となるキャラクターはホッキョクグマだ。
今年、ドイツで「クヌート」と名づけられたホッキョクグマの子供が大人気になったが、クヌートでなくてもホッキョクグマの子供は可愛い。本編の冒頭にもそれはそれは可愛いホッキョクグマの子供たちが登場する。僕はこの子供たちを追いかければ良かったのに、と思う。もちろん北極に住む動物たちがホッキョクグマだけじゃないのは誰でも知っている。本編に登場するイッカク、ジャコウウシ、セイウチ、カリブーなどの生態も確かに興味深い。だからといって、なんでもかんでも詰め込めばいいというのは違うのだ。我々は何かに感情移入できないと感動出来ないものだし、環境問題をベースにするドキュメンタリーなら尚更、アル・ゴアが「不都合な真実」の中で報告した、「氷が少なくなってきたため溺れてしまうホッキョクグマがいる」という現実をもっと集中的に見せても良かったと思う。
環境破壊をテーマにした自然ドキュメンタリーはこれからも多く作られることだろう。
ただしテレビの世界では、「環境ネタは視聴率を獲らない」が定説になっている。
この定説を打ち破る方法は無いものか。この定説を打ち破る作品が生まれないものか。
僕は僕で知恵を絞りつつ、密かにそんな作品の誕生を心待ちにしている。
自然ドキュメンタリー作品がここ数年多作になった理由は2つある。
ひとつは撮影技術が飛躍的に進歩したこと。
撮影技術の進歩によって「Wataridori」というヒット作が生まれた。
2002年度のアカデミー長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたこの作品は、残念ながら「ボウリング・フォー・コロンバイン」に敗れたものの、世界中のドキュメンタリー作家に大きな勇気を与えることになった。
なぜなら、それがもうひとつの理由なのだが、「人間が環境問題に興味を持ち始めた」ということを証明したからだ。
これを受けて“自然ドキュメンタリーの老舗”とも言うべきイギリスBBCが、海洋生物の生態をまとめた「ディープ・ブルー」(2003年)を発表する。日本では80万人を動員、興行収入11億円をあげるヒットとなった。
2005年にはフランス人監督のリュック・ジャケが「皇帝ペンギン」を発表し、アカデミー長編ドキュメンタリー賞を獲得する。
「ホワイト・プラネット」もそんな時代の流れに乗って作られたドキュメンタリー映画なのだが、特筆すべきは「地球温暖化で危ぶまれている北極の現実」をテーマに打ち出した点である。
それまでの自然ドキュメンタリーは「人間が知る善しもない自然の神秘」が大テーマだった。前出の「Wataridori」しかり、「ディープ・ブルー」しかり。
ところが「ホワイト・プラネット」がテーマに打ち出したのは「人間が破壊した自然の姿」だった。そこで暮らす動物たちの生態は「人間の知らない事実」ではなく、すべて「人間が知らなければならない事実」だったのだ。そういう意味で「ホワイト・プラネット」は意義ある作品だったと思う。
しかし、純粋にドキュメンタリー作品として面白いかと言われると、残念ながら素材の選び方とまとめ方に失敗していると言わざるを得ない。
本編の軸となるキャラクターはホッキョクグマだ。
今年、ドイツで「クヌート」と名づけられたホッキョクグマの子供が大人気になったが、クヌートでなくてもホッキョクグマの子供は可愛い。本編の冒頭にもそれはそれは可愛いホッキョクグマの子供たちが登場する。僕はこの子供たちを追いかければ良かったのに、と思う。もちろん北極に住む動物たちがホッキョクグマだけじゃないのは誰でも知っている。本編に登場するイッカク、ジャコウウシ、セイウチ、カリブーなどの生態も確かに興味深い。だからといって、なんでもかんでも詰め込めばいいというのは違うのだ。我々は何かに感情移入できないと感動出来ないものだし、環境問題をベースにするドキュメンタリーなら尚更、アル・ゴアが「不都合な真実」の中で報告した、「氷が少なくなってきたため溺れてしまうホッキョクグマがいる」という現実をもっと集中的に見せても良かったと思う。
環境破壊をテーマにした自然ドキュメンタリーはこれからも多く作られることだろう。
ただしテレビの世界では、「環境ネタは視聴率を獲らない」が定説になっている。
この定説を打ち破る方法は無いものか。この定説を打ち破る作品が生まれないものか。
僕は僕で知恵を絞りつつ、密かにそんな作品の誕生を心待ちにしている。
難しいものですね。自然ドキュメンタリーは、人間ドキュメンタリー程こころ惹かれないのですが、人間ドキュメンタリーもつまらないのが増えてきた気がします。
>なんでもかんでも詰め込めばいいというのは違うのだ
ここで、笑ってしまいました。確かにそうですよね。
by Sho (2007-07-02 00:12)
人間ドキュメンタリーに心惹かれないのは、
地球上のどこも平和じゃなく、どこにも問題があるからじゃないかと思います。
一億総中流時代は良かったんですよ。
でも今は完全に格差社会になりましたからね。
自分の周りの人間を見ているだけで充分に面白し、
充分に身につまされるんだと思います。
by ken (2007-07-02 01:16)
余りにも”環境ビデオ”なのが辛かった・・・。
by tomoart (2007-07-02 20:24)
ドラマがなかったんですよねえ。
残念でした。nice!ありがとうございます。
by ken (2007-07-02 22:26)