バリー・リンドン [2007年 レビュー]
「バリー・リンドン」(1975年・イギリス) 監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック
土曜日、久しぶりに雨の中でゴルフをしたら風邪をひいてしまった。
風邪をひいたのは今年初。熱は7度4分しかなかったけれど、とにかく身体の節々が痛い。というわけで翌日曜はどこに出かけるわけにも行かず、ひたすらソファーに横たわって映画を観た。1日3本観たのは何年ぶりだろうか。
その1本目がコレ。
劇場公開時にはintermission(休憩)まで入った186分の大作「バリー・リンドン」である。
調べてみたらキューブリックが世に送り出した作品は全部で12作品だった。
僕は「2001年宇宙の旅」と「博士の異常な愛情」しか観ていない。
ちなみに「時計じかけのオレンジ」は一昨年途中で挫折したまま。「フルメタル・ジャケット」と「アイズ ワイド シャット」はDVDを持っていながら未見という状態だ。
「バリー・リンドン」は18世紀後半のヨーロッパを舞台にした作品で、前半はアイランド出身の青年バリー(ライアン・オニール)がリンドンを名乗るようになるまでの物語。後半はリンドンを名乗ってからの苦悩に満ちた人生を描いている。
個人的にはこの時代の作品にはあまり興味が無い。その理由は僕がいつもこだわる「リアリティ」の線引きとなる知識を、僕自身が持ち合わせていないからだ。
しかしこの作品に限っては「キューブリックを信じていいんだ」と思った。それくらい映像が凄まじい。
そこには「1975年に18世紀を実写で撮った」としか言いようの無い美しさがある。
ロケーションハンティングも随分と時間をかけたのだろう。劇中登場する数々の古城も、庭園も、田舎道もすべて20世紀のものとは思えない不思議な生々しさがある。
もっと驚くのはインドアのナイトシーンだ。僕も途中で気が付いたのだけれど、シーンのすべてが蝋燭の灯りだけで撮られている。正直言って信じられなかった。信じられないほどの美しさなのだ。実は照明を使わずに撮影するため、NASA用に開発されたレンズを使用したというのも有名なエピソードなのだそうだ。恐るべしキューブリック。
本作は75年のアカデミー賞で作品、監督、脚色、撮影、音楽(編曲・歌曲)、美術監督・装置、衣装デザインの7部門にノミネートされたが、主要の作品、監督、脚色賞は逃している(作品、監督賞は「カッコーの巣の上で」ミロシュ・フォアマンが。脚色賞は「狼たちの午後」のフランク・ピアソンが受賞した)。
「バリー・リンドン」は映像だけを観ると圧倒的に素晴らしい作品なのだが、ストーリー的にどうかと聞かれるとどうしても刹那主義的な印象が拭えず、虚しさだけが漂うエンディングだったと思う。
奇しくもそれはキューブリックが記したエピローグにも要約されていた。
これはジョージ三世の治世、その時に生き、争った人々の物語。
美しい者も醜い者も、今は同じすべてあの世。
このエピローグをどう受け止めるかで、作品に対する評価は大きく異なるだろう。
僕個人はキューブリックの言わんとしたことを「諸行無常」と受け止めた。
90分ずつ2度に分けて観るつもりなら気も楽か。
土曜日、久しぶりに雨の中でゴルフをしたら風邪をひいてしまった。
風邪をひいたのは今年初。熱は7度4分しかなかったけれど、とにかく身体の節々が痛い。というわけで翌日曜はどこに出かけるわけにも行かず、ひたすらソファーに横たわって映画を観た。1日3本観たのは何年ぶりだろうか。
その1本目がコレ。
劇場公開時にはintermission(休憩)まで入った186分の大作「バリー・リンドン」である。
調べてみたらキューブリックが世に送り出した作品は全部で12作品だった。
僕は「2001年宇宙の旅」と「博士の異常な愛情」しか観ていない。
ちなみに「時計じかけのオレンジ」は一昨年途中で挫折したまま。「フルメタル・ジャケット」と「アイズ ワイド シャット」はDVDを持っていながら未見という状態だ。
「バリー・リンドン」は18世紀後半のヨーロッパを舞台にした作品で、前半はアイランド出身の青年バリー(ライアン・オニール)がリンドンを名乗るようになるまでの物語。後半はリンドンを名乗ってからの苦悩に満ちた人生を描いている。
個人的にはこの時代の作品にはあまり興味が無い。その理由は僕がいつもこだわる「リアリティ」の線引きとなる知識を、僕自身が持ち合わせていないからだ。
しかしこの作品に限っては「キューブリックを信じていいんだ」と思った。それくらい映像が凄まじい。
そこには「1975年に18世紀を実写で撮った」としか言いようの無い美しさがある。
ロケーションハンティングも随分と時間をかけたのだろう。劇中登場する数々の古城も、庭園も、田舎道もすべて20世紀のものとは思えない不思議な生々しさがある。
もっと驚くのはインドアのナイトシーンだ。僕も途中で気が付いたのだけれど、シーンのすべてが蝋燭の灯りだけで撮られている。正直言って信じられなかった。信じられないほどの美しさなのだ。実は照明を使わずに撮影するため、NASA用に開発されたレンズを使用したというのも有名なエピソードなのだそうだ。恐るべしキューブリック。
本作は75年のアカデミー賞で作品、監督、脚色、撮影、音楽(編曲・歌曲)、美術監督・装置、衣装デザインの7部門にノミネートされたが、主要の作品、監督、脚色賞は逃している(作品、監督賞は「カッコーの巣の上で」ミロシュ・フォアマンが。脚色賞は「狼たちの午後」のフランク・ピアソンが受賞した)。
「バリー・リンドン」は映像だけを観ると圧倒的に素晴らしい作品なのだが、ストーリー的にどうかと聞かれるとどうしても刹那主義的な印象が拭えず、虚しさだけが漂うエンディングだったと思う。
奇しくもそれはキューブリックが記したエピローグにも要約されていた。
これはジョージ三世の治世、その時に生き、争った人々の物語。
美しい者も醜い者も、今は同じすべてあの世。
このエピローグをどう受け止めるかで、作品に対する評価は大きく異なるだろう。
僕個人はキューブリックの言わんとしたことを「諸行無常」と受け止めた。
90分ずつ2度に分けて観るつもりなら気も楽か。
「2001年宇宙の旅」、「時計じかけのオレンジ」「シャイニング」「アイズワイドシャット」どれもきっと深くはわからないままにすごく好きです。
バリーリンドンは、名前しか知りませんでした。
キューブリックと「諸行無常」ですか。すごく見てみたいです。
by Sho (2007-07-23 19:30)
「わからないから好き」ってのは、僕の場合リンチ以外にないんですけど、
キューブリックはどうなのか、僕もこれからいくつか観てみます。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-07-23 22:51)
この作品は見ました。
美しいけれどむなしさが漂う映画でした。
kenさんの解説を読んで初めて、すごく凝った作品だったんだと
わかりました。やはり、kenさんの解説は素晴らしいですね。
ブログだけだともったいない気がします。
キューブリックの作品で一番すきなのは、「2001年宇宙の旅」です。
まったく非の打ち所のない映画だと思っています。
そのほかに見たのは、
「アイズ・ワイド・シャット」(意味不明なところもあるけど、おもしろかったです。)
「シャイニング」(こんな怖い映画ははじめて。)
「時計仕掛けのオレンジ」(これも怖いですねー。)
「ロリータ」(これはお薦めです。おもしろいです。)
何でこんなに惹かれるのかわかりませんが、やっぱり好きな監督に違いありません。
by coco030705 (2007-07-25 00:39)
いよいよ僕も「キューブリックワールド」に突入するときが来たようです。
coco030705さんにまで言われたら、もはや行くしかありません(笑)。
「2001年宇宙の旅」も改めて観てみよう。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-07-25 01:08)
これはリアルタイムで観て、正直退屈しました。しかし、この映画は私の人生観を変えてしまいました。美も醜も、善も悪も、年月が経てば全て土の中というのは無常でもありますが、全ての人間の営みに対する肯定・赦しでもあると思います。
by Hide (2011-07-02 18:16)
この作品、若いうちに観ちゃったら、退屈かも知れませんね。
少なくともキューブリック作品はU-30向きじゃない気がします。
by ken (2011-07-03 01:04)