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ファンタスティック・フォー:銀河の危機 [2007年 レビュー]

ファンタスティック・フォー:銀河の危機」(2007年・アメリカ) 監督:ティム・ストーリー

 ここに記事を書くとき、ときどき迷うのが「ボールorストライク、どっちともとれる微妙な球が飛んできたとき、どう判定するか?」だ。もちろん野球のハナシじゃなく、映画の感想についてである。
 映画としては面白くないんだけど、特筆に価する部分が無いわけじゃない。
 こんな映画の場合。
 「別に白黒つける必要ないじゃん」と言う人もいるが僕の中でそれは有り得ない。スタンスがはっきりしないとブレブレの記事になってしまうし、そんな記事はまず面白くない。
 そんなわけで僕は迷ったときは極力「ボール」と判定するようにしてきた。
 その理由は大きく二つある。

 まず「賞賛記事よりも、批判記事の方が、記事としてのハードルが高い」と思うからだ。
 人やモノを褒めるとき、多くの人はあまり言葉を選ばない。選ぶ必要がないと言ってもいい。自分の気持ちを素直に表現すればそれが最大の賛辞になる。
 しかし、厳しい評価を与えるときは少なからず言葉を選ぶことになる。直接的な言葉を使えば確実に人を傷つけるし、いさかいも生まれる。そうしないために必要なのは「厳しい評価を下すことになった理由」を明らかにすることである。例えばこのブログでも「批判の根拠」さえ明らかにしておけば大抵の“言いがかり的な書き込み”はなくなる。それは僕が気分で批判しているわけではなく、信念を持って批判していることが伝わるからだろう。
 ただそれ以上に僕にとって大切なことは、批判の根拠を明確にする作業が、実は“作品”を深く知ることに繋がっているということである。そもそもここに掲載している記事は「面白い脚本を書くための覚書」と言うべき個人的メモからスタートしているので、微妙な球は「ボール!」とコールしてその理由を分析するのは必然の作業なのだ。

 もうひとつの理由は、人の慈悲に訴えるためである。大げさだけど(笑)。
 批判する者が先立つと人は少なからずフォローしたくなるものだ。どんなに酷い映画でも「褒められるところもあるぞ」と言う気になる。僕はそこに期待している。「アイツが書くほど酷い映画じゃなかった」という感想を持ってもらえたら僕は素直に嬉しい。

 さて。今日はどうしてこんな枕を書いたかと言うと、僕はある映画ライターが書いた本作の記事を読んであまりの褒めっぷりに驚き、「そこまで書くなら観てみるか」と睡眠不足の目をこすりながらわざわざ劇場まで出かけて観たからだ。
 その記事を要約するとこんな風だった。
 「オープニングが日本の駿河湾から始まるのが楽しい。アメコミ映画に付き物のCGは見ごたえのある演出で思わず息を呑む。それでいて1時間半ちょっとだからありがたい。エンディングも日本の観客にはサプライズ」
 そんなわけで「ファンタスティック・フォー」の続編である。
 
 ハッキリ言ってなんのこっちゃな映画です。
 アメコミなんだから設定をとやかく言うのは無粋と理解しています。もちろん。
 しかし、惑星を食って生きる生命体から地球を守るためにどうするか、という壮大なムチャ振りには、それなりの信憑性を持たせたウソを作らなくてはなりません。SFで大事なのは「ウソで塗り固めた設定の中に、如何にリアリティを持たせるか」だと思います。本編で最高に意味不明だったのは、シルバーサーファーとサーフボードを分離するための妙なロジック。
 「一体化しているはずのシルバーサーファーとボードは実は別モノで、ボードにすべてのパワーが集中している」という設定は100歩譲ったとして、どうすれば分離できるのかの説明は本当にちんぷんかんぷんで、僕は「右から左へ受け流す」状態になってしまいました。
 前出の映画ライターが書いた、日本人向けのサプライズについては完全に興ざめ。
 いったいいつの時代の日本を描いたんだ!って怒鳴りたくなるくらい屈辱的なワンシーン。設定を日本にしたストーリー的な意味も分からないし。これを「日本人だけのお楽しみ」的意味合いで書いた映画ライターは是が非でも見つけ出して、「オマエはアホか」と言ってやりたい。
 興ざめしたポイントはもうひとつ。今回新たに登場した乗り物。コレ。
 
 

 三つに分離したりしてなかなかカッコいいんだけど、驚いたことに座席部分は常時フルオープン。
 劇中、どう見たって高度2万メートルくらいのところを飛んでるのにフルオープン(笑)。ジェシカ・アルバの髪の毛はそよぐ程度で、隣座席の人とも会話はすんなり。こういうバカ設定は大嫌いなんだよなあ。オレ。
 楽しむべきはジェシカ・アルバのナイスバディくらいかと途中からすべてをあきらめたのですが、そんなサービスショットもほとんどなく、どちらかというと「ダーク・エンジェルの頃は可愛かったなあ」と昔を懐かしんでしまう有様。結論は「まったくファンタスティックじゃない映画」なのでした。

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ファンタスティック・フォー:銀河の危機 (特別編/初回生産分限定特典ディスク付・2枚組)

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD

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Labyrinth

小声で! bravo~ d^^;
by Labyrinth (2007-09-27 23:59) 

ken

小声で? どう受け止めればいいのか…(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-09-28 00:00) 

tomoart

まだ観てないけど、多分行きます。
ご指摘は重々承知の助w それが「ファンタスティック・フォー」なんだから・・・・しょうがない(爆)。
米国なら観客のほとんどに通じる“お約束”ですからね〜。例えばファンタスティ・カーでヘッドセットかなんか使って話をしてたら、ファンタスティック・フォーにならなくなっちゃうんですよね・・・・クラシカル過ぎる約束事ではありますね、確かにw
by tomoart (2007-09-28 01:27) 

YaCoHa

こんにちは。
私も先日観ました。面白かったのですが、1回見れば充分。。。
by YaCoHa (2007-09-28 01:51) 

ジジョ

こんにちは☆
その評論家の言葉の中で
「1時間半ちょっとだからありがたい」
↑ここだけは同意です☆ ほんとにありがたかったデス。
by ジジョ (2007-09-28 02:06) 

ken

>tomoartさん
 なるほど、原作の味をそのまま映像にしただけなんですね!
 そりゃ知らなかった。知っても「ありえねー!」ですけど(笑)。

>Yakohaさん
 面白がり方は人それぞれですよね。
 もちろん寝ないで1回観れば充分(笑)。
 nice!ありがとうございます。

>ジジョさん
 これで2時間あったら怒り狂ってます(笑)。
 nice!ありがとうございます。
by ken (2007-09-29 20:43) 

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