自虐の詩 [2007年 レビュー]
「自虐の詩」(2007年・日本) 監督:堤幸彦 脚本:関えり香、里中静流
原作は業田良家のビンボー四コマ漫画。
ビンボーというカタカナ表記をメジャーにしたのはテレビ朝日の「銭形金太郎」だ。そもそもこの番組がヒットしたのは「格差社会」という言葉で一括りにされた輪の中で、圧倒的多数の「持たざる者」たちが見つけた心の支え「貧困者」にスポットを当てた番組だったからだ。
人は自分の置かれた立場を打開できないと知ると上を見ることを諦め、下を見て自らを慰めようとする。
「自分はまだマシな方」
そう言い聞かせてビンボーを笑い、救いを求めるのだ。だから「ビンボー」はヒットした。
「自虐の詩」は1985年に発表され1990年に完結している。これはバブル景気が始まる直前から終了間近に当たり、好景気の影で貧困にあえぐ人々の暮らしを描いた漫画はやはりヒットした。
そして映画化。出資会社も「ヒットするなら今しかない」という読みなのだろう。その読みは外れていないと思う。ただし問題はその中味だ。原作を読んでいなくても面白いと思える仕上がりでないと客は集まらないだろうし、オリジナルが秀作だけに原作ファンの目も厳しい。考えようによってはかなりアゲインストな状態で公開されるワケだ。
実を言うと僕は原作を読んだことが無かった。
原作を読まないまま映画を観た結果、「コントとしては面白いけれど映画としては面白くない」と思った。だから原作を読んでみることにした。
読むと映画が面白くない理由が分かった。それは(一部を除いて)原作通りに作ろうとした結果の有様だった。
これは監督・堤幸彦の決定的なミスだと思う。
原作は連載を続ける中で微妙にスタンスを変えてきた作品だ。
初期はイサオがちゃぶだいをひっくり返すだけのギャグ四コマだが、中期になると幸恵の生い立ちが描かれるようになり、後期はその背景を生かしてストーリー性の高い四コマ漫画へと変化していく。これは読者の反応を受けての変遷だったと思うが、どういうわけだか映画もこの流れを汲んだ脚本になっているのだ。
これは全く意味が無い。
原作が辿った道をわざわざなぞる必要がどこにあるというのだ。映画化に際してはすでに完結しているストーリーを再構築し、映画版ならではの「自虐の詩」を編み出すべきではなかったか。
そうは言っても面白いところもあった。
原作と異なる設定のひとつ、幸恵の父を演じた西田敏行さんが良かった。この人はこう言う役をやらせると本当に巧いし、面白い。幸恵に好意を寄せる「あさひ屋のマスター」の遠藤憲一さんも良かった。この2人がいなかったら本作はどうなっていたんだろうと思う。怖い。
ラストも笑った。
原作では感動的なシーンが本編ではギャグになってしまっている。熊本さんは完全に「出オチ」。
結論。
あまり期待せずに観に行ってください(笑)。
原作は業田良家のビンボー四コマ漫画。
ビンボーというカタカナ表記をメジャーにしたのはテレビ朝日の「銭形金太郎」だ。そもそもこの番組がヒットしたのは「格差社会」という言葉で一括りにされた輪の中で、圧倒的多数の「持たざる者」たちが見つけた心の支え「貧困者」にスポットを当てた番組だったからだ。
人は自分の置かれた立場を打開できないと知ると上を見ることを諦め、下を見て自らを慰めようとする。
「自分はまだマシな方」
そう言い聞かせてビンボーを笑い、救いを求めるのだ。だから「ビンボー」はヒットした。
「自虐の詩」は1985年に発表され1990年に完結している。これはバブル景気が始まる直前から終了間近に当たり、好景気の影で貧困にあえぐ人々の暮らしを描いた漫画はやはりヒットした。
そして映画化。出資会社も「ヒットするなら今しかない」という読みなのだろう。その読みは外れていないと思う。ただし問題はその中味だ。原作を読んでいなくても面白いと思える仕上がりでないと客は集まらないだろうし、オリジナルが秀作だけに原作ファンの目も厳しい。考えようによってはかなりアゲインストな状態で公開されるワケだ。
実を言うと僕は原作を読んだことが無かった。
原作を読まないまま映画を観た結果、「コントとしては面白いけれど映画としては面白くない」と思った。だから原作を読んでみることにした。
読むと映画が面白くない理由が分かった。それは(一部を除いて)原作通りに作ろうとした結果の有様だった。
これは監督・堤幸彦の決定的なミスだと思う。
原作は連載を続ける中で微妙にスタンスを変えてきた作品だ。
初期はイサオがちゃぶだいをひっくり返すだけのギャグ四コマだが、中期になると幸恵の生い立ちが描かれるようになり、後期はその背景を生かしてストーリー性の高い四コマ漫画へと変化していく。これは読者の反応を受けての変遷だったと思うが、どういうわけだか映画もこの流れを汲んだ脚本になっているのだ。
これは全く意味が無い。
原作が辿った道をわざわざなぞる必要がどこにあるというのだ。映画化に際してはすでに完結しているストーリーを再構築し、映画版ならではの「自虐の詩」を編み出すべきではなかったか。
そうは言っても面白いところもあった。
原作と異なる設定のひとつ、幸恵の父を演じた西田敏行さんが良かった。この人はこう言う役をやらせると本当に巧いし、面白い。幸恵に好意を寄せる「あさひ屋のマスター」の遠藤憲一さんも良かった。この2人がいなかったら本作はどうなっていたんだろうと思う。怖い。
ラストも笑った。
原作では感動的なシーンが本編ではギャグになってしまっている。熊本さんは完全に「出オチ」。
結論。
あまり期待せずに観に行ってください(笑)。
阿部寛♪髪型素敵★
Mrオクレ気になる・・・
でも、ギャンブルとお酒とちゃぶ台ひっくり返しは・・・
by **feeling** (2007-10-19 20:58)
実は、原作は私のバイブルのうちの一つです。(バイブルが何冊かある時点でなんというか..)
なのでこの映画は見ないつもりです。
予告を見ただけで、私はあの伝説(?)の「笑う大天使」の映画化以上に傷ついています.....。
by satoco (2007-10-19 21:46)
私も試写会でみました。
この映画、本当に惜しいんですよね。印象的なシーンもあるし、カットも「お!」と思わせる箇所があるし。なんでドラマにしなかったのかな。そうすればまだよかったのに。詰め込みすぎて駄目にする典型例ですね。ただ堤監督が原作好きなんだろうなってことはわかりました。そういう意味ではSHINOBIの下山監督とは大違いですね。
あの原作では感動シーンで笑いが起きたのに一番びっくり。
(それでいて臨死?シーンですすり泣きって…記号的だなと思いました。)
それにしても佐田真由美?でしたっけ?アレはどう考えてもミスキャストだった。
個人的には中谷美紀じゃなくて、篠原涼子でもいいような気がしました。中谷美紀、シャブ中に見えないんだもん。
by 瑠璃子 (2007-10-19 22:07)
>keiko_keikoさん
阿部寛ってコスプレやらせると面白いねえ。
>satocoさん
そうですか。原作がバイブルなら観ないほうがいいです。
笑う大天使よりはいいような気がしますけど…。
>瑠璃子さん
SHINOBIは観てない(これからも観ない)ので何とも言えませんw
中谷美紀、確かにシャブ中には見えないなあ。
by ken (2007-10-20 00:04)