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さくらん [2008年 レビュー]

さくらん」(2007年・日本) 監督:蜷川実花 脚本:タナダユキ

 映画を観終わってエンドロールを観たら驚いた。
 改めて確認してみたけど製作プロデューサー陣がなんと21人も名前連ねてやんの。
 なんだよ、オマエらが花魁・蜷川実花の客じゃねーか(笑)。

 安野モヨコの原作は読んでいないが、僕たちの世代は「吉原モノ」と聞けば誰もが、古典落語「雪の瀬川」のような“遊女の郭抜け”を想像する。当然この「さくらん」もその類のハナシだろうと思いつつ観たがどうにも違うようだ。それほど土屋アンナのキャラが立ち過ぎている。だから僕は途中から「もしも、現代っ子のムスメが遊郭にいたら…」という設定のエンタテイメントとして観ることにした。おかげで「じゃあ、どんなオチをつけるつもりなんだ?」と期待をしてしまい、結果としてハードルは上がってしまったのだけれど。

 赤、赤、赤!を基本にした原色の美術と照明は、蜷川実花の写真を見たことがないので僕には「鈴木清順のパクリ」にしか見えなかった。本当は違うのかもしれないけれど僕にはそうとしか見えないから、つまり鈴木清順のレベルには当然達していないということになる。
 ビジュアルに別段期待するものが無くなると、あとは役者と脚本に期待するしかない。
 僕は土屋アンナが特別好きなワケじゃないので、「下妻物語」のようないい芝居をしてくれないと楽しくない。けれどその期待には応えてくれなかった。きっと蜷川実花の役者に対する演出がなってないんだろう。それはアンナだけでなく他の役者の芝居についてもそう。「リハーサルレベルの芝居にOK出すなよ」と思うシーンがあまりに多かった。
 頼みの綱の脚本は、結局お約束の“郭抜け”に落ち着く始末。
 だったら序盤、子供時代のエピソードに清次(安藤政信)とのシーンは増やすべきだし、中盤、惣次郎(成宮寛貴)との終わり方を分かり易く描くべきだし、終盤、倉之助(椎名桔平)に対する気持ちの揺れをもっと具体的にして欲しかった。
 …と思うのは僕が人情噺を聞いて育った中年だからであって、一緒に観ていた妻は「面白かった」と素直に一言。僕が「ゆるかった」と言うと「そう?」と返したので、若い世代にはまずまずの作品かも知れません。
 ただPG-12は甘い気がするなあ。

さくらん 特別版

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  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • メディア: DVD

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コメント 4

satoco

実は暮れに見たんですが、自分のブログにレビューを書く優先順位としては下の方に行っちゃってました。
なんというか、絵柄も含めて予定調和的と言いますか。そして菅野美穂の台詞回しがよろしくなかったです。
セットや衣装の素材もも微妙に安普請な感じでした。
でもゼブラ柄の帯は私も欲しいです。
by satoco (2008-01-30 21:27) 

ken

そうそう。書くのを忘れちゃいましたが、菅野美穂はいただけなかった!
オッパイ揉まれる芝居は良くやったなあと思いましたけどねえ。
それにしてもどうしてあんなに金魚好きだったんだろう?(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-01-30 23:06) 

**feeling**

モヨコ~!!
それはおいといて、原作のほうがねえ。いいわなあ・・・
あの最後の話の展開はありえないの一言だ。
それを我慢できたのは、アンナがいたから。
アンナの目だけを見ていたから。

お花の生け方がとても綺麗でそれが印象的だった。
でかいし、大胆だし、原色だし。
あの映画で私の評価は私は花だけだった。
by **feeling** (2008-01-30 23:52) 

ken

アンナが好きなら許せる映画でしょうね。
お花の生け方綺麗でしたか。
なるほどそこに目は行かなかったな。
by ken (2008-01-31 00:14) 

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