天然コケッコー [2008年 ベスト20]
「天然コケッコー」(2007年・日本) 監督:山下敦弘 脚本:渡辺あや
昨年、仕事で長崎へ出かけたときのこと。
行く場所行く場所、坂を上がったり下りたりの連続で車酔いしそうになっていた僕に、「長崎は坂が多いから、ここで生まれ育った娘はみんな大根足になるんですよ」と地元のカメラマンが声を掛けてくれた。
あとで地図を広げてみると、確かに長崎市は三方を山に囲まれた「すり鉢」状になっていて平野部が少なく、住宅地の多くは山の中腹にあった。これが「坂の街」と言われる所以である。
「足の太い子は地元の子。細い子はよそから来た子」と続けてカメラマンは笑った。
「天然コケッコー」は山陰地方の田舎町に住む少女の物語だ。
僕はその主人公、右田そよを演じた夏帆の“足”が気に入った。
夏帆は東京出身で、小学生のときにスカウトされて芸能界に入った女の子だ。間違っても自分のことを「ワシ」などと言わないし、東京の人ごみに圧倒されて貧血を起こすような子でもない。
ところがここでの夏帆は微妙なニュアンスの方言を体得し、豊かな自然と暖かな人たちに囲まれてすくすくと育った田舎の少女を見事に演じている。
役者であれ監督であれ優れたテクニックを認めたとき、僕はそれを「巧い」と評してきた。
夏帆も驚くほど巧い。
特にセリフのない芝居が絶妙で、喜怒哀楽のどれでもない感情の表現は天才的だったと思う。
しかし、夏帆の女優としてのテクニックを、まさかそうとは思わせなかったのが彼女の“足”だ。
愛らしい顔立ちからは想像し難い幾分たくましい足。
それはこの土地で生まれ、この土地で育った少女の証。
僕に「イングリッシュ・ペイシェント」のジュリエット・ビノシュを思い出させたこの足こそが、「右田そよ」を実在させた最大のリアリティだった。
村の子どもたちも特筆に価する。
中でも田浦家の幼い姉妹を演じた2人(当時9歳と7歳)は「どうすればこんな芝居をつけられるんだ?」と驚くばかり。これはチャン・イーモウの「あの子を探して」以来の衝撃だった。
さて個人的には、どの立場で観ればいいのか一瞬迷った。
僕はそよの父親(佐藤浩市)の世代だし、そよが東京からの転校生に惹かれていく過程は、「こら、そんな東京モンに惚れてんじゃねー!」というオヤジの気持ちが先に立ってハラハラし、ドラマに乗り損ねた感が無いでもなかった。けれど「これじゃいけないんだな」と分かってからは、僕自身楽しかった中学時代を思い出しながら観ることにした。多分これが正解なのだ。
実を言うと僕は、本編が始まって5分もしないうちに泣きそうになっていた。
日本の原風景とも言うべき美しい田舎の風景は、いつかはそんな場所へ還りたいと思わせるに充分で、かつ過去のさまざまま出来事をフラッシュバックさせたからだ。
夏帆の“足”を観ながら、僕は中学時代に好きだった女の子の足をふと思い出した。
そういえば彼女もそんなに細い足じゃなかったなと思ったら、ますます「そよ」のことが好きになった。
昨年、仕事で長崎へ出かけたときのこと。
行く場所行く場所、坂を上がったり下りたりの連続で車酔いしそうになっていた僕に、「長崎は坂が多いから、ここで生まれ育った娘はみんな大根足になるんですよ」と地元のカメラマンが声を掛けてくれた。
あとで地図を広げてみると、確かに長崎市は三方を山に囲まれた「すり鉢」状になっていて平野部が少なく、住宅地の多くは山の中腹にあった。これが「坂の街」と言われる所以である。
「足の太い子は地元の子。細い子はよそから来た子」と続けてカメラマンは笑った。
「天然コケッコー」は山陰地方の田舎町に住む少女の物語だ。
僕はその主人公、右田そよを演じた夏帆の“足”が気に入った。
夏帆は東京出身で、小学生のときにスカウトされて芸能界に入った女の子だ。間違っても自分のことを「ワシ」などと言わないし、東京の人ごみに圧倒されて貧血を起こすような子でもない。
ところがここでの夏帆は微妙なニュアンスの方言を体得し、豊かな自然と暖かな人たちに囲まれてすくすくと育った田舎の少女を見事に演じている。
役者であれ監督であれ優れたテクニックを認めたとき、僕はそれを「巧い」と評してきた。
夏帆も驚くほど巧い。
特にセリフのない芝居が絶妙で、喜怒哀楽のどれでもない感情の表現は天才的だったと思う。
しかし、夏帆の女優としてのテクニックを、まさかそうとは思わせなかったのが彼女の“足”だ。
愛らしい顔立ちからは想像し難い幾分たくましい足。
それはこの土地で生まれ、この土地で育った少女の証。
僕に「イングリッシュ・ペイシェント」のジュリエット・ビノシュを思い出させたこの足こそが、「右田そよ」を実在させた最大のリアリティだった。
村の子どもたちも特筆に価する。
中でも田浦家の幼い姉妹を演じた2人(当時9歳と7歳)は「どうすればこんな芝居をつけられるんだ?」と驚くばかり。これはチャン・イーモウの「あの子を探して」以来の衝撃だった。
さて個人的には、どの立場で観ればいいのか一瞬迷った。
僕はそよの父親(佐藤浩市)の世代だし、そよが東京からの転校生に惹かれていく過程は、「こら、そんな東京モンに惚れてんじゃねー!」というオヤジの気持ちが先に立ってハラハラし、ドラマに乗り損ねた感が無いでもなかった。けれど「これじゃいけないんだな」と分かってからは、僕自身楽しかった中学時代を思い出しながら観ることにした。多分これが正解なのだ。
実を言うと僕は、本編が始まって5分もしないうちに泣きそうになっていた。
日本の原風景とも言うべき美しい田舎の風景は、いつかはそんな場所へ還りたいと思わせるに充分で、かつ過去のさまざまま出来事をフラッシュバックさせたからだ。
夏帆の“足”を観ながら、僕は中学時代に好きだった女の子の足をふと思い出した。
そういえば彼女もそんなに細い足じゃなかったなと思ったら、ますます「そよ」のことが好きになった。
ねっ
イイ作品でしょう
明日は、語れそうですね(笑)
by 魚河岸おじさん (2008-02-22 16:52)
じっくり行きましょうw
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-02-23 00:14)
いいですねー、kenさんの感想。
私も語りに参加できることを期待して。
by クリス (2008-02-23 00:30)
参加お待ちしていますw
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-02-23 01:27)
マンガもいいので読んでみてくらさい。
by snorita (2008-02-23 09:46)
はーい。
by ken (2008-02-23 11:27)
原作の大ファンなのですが、映画もとても評判が良くて嬉しいです。
ポスター等のビジュアルを見ても、夏帆ちゃんを見ても、原作のイメージが全然壊れないんですよー。
絶対見ます!
by satoco (2008-02-23 17:15)
そうですか。原作ファンなのですね。
satocoさんの感想が楽しみです。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-02-24 01:19)
本当に子供が光ってるいい映画でした
自然体に見えるのがいいのかな?
by (2008-02-24 20:59)
それがリアリティってヤツなんでしょうね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-02-24 21:01)