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靖国 YASUKUNI [2008年 レビュー]

靖国 YASUKUNI」(2007年・日本/中国) 監督:李纓

 靖国神社の御神体は一振りの日本刀。
 これって本当なのか?
 この事実を一体どれだけの日本人が知っているんだろう?
 
 僕は東京に住みながら靖国神社へは数えるほどしか行ったことが無い。
 ましてや終戦記念日に、あの喧騒の中へ入って行こうと思ったことも無い。
 そもそも僕には靖国に関わる理由が無い。
 理由は単純、僕には靖国に祀られた親族が無いからだ。
 だからこの45年間、僕は靖国に興味が無かった。

 ニュースは見聞きしている。
 特に小泉首相(当時)が参拝したときの印象は強い。
本編にもその会見映像が使われている。
 靖国参拝を国内外から批判されるたびに繰り返して来た有名な一節。
 「日本人からの批判は理解できない。まして外国政府が一政治家の心の問題に、けしからんと言うのは理解できない」
 僕はこの会見を見たとき、「そりゃもっともなハナシだ」と思っていた。
 今の日本があるのは、先の大戦で命を落とされた先人たちのおかげ。その御霊に感謝の祈りを捧げ、さらなる平和を誓って何が悪い。
 この動機は間違っていないと思う。
 ただ、その祈りを捧げる場所に多くの問題がある、ということだ。
 
 そのひとつ「遺族による“合祀取り下げ”願い」については、取り下げてあげればいいじゃないかと強く思う。
 入りたくて入ったわけじゃない人たちは、どう考えたって出してあげるべきだ。戦死した本人たちの気持ちを、遺族が100%汲んでいるのかどうかは知らないけれど、「靖国で会おう」と言わなかった人たちは出してあげた方がいい。
 では、どうして出せない(名前を消せない)のかというと、そもそも合祀は“遺族の申し出”によって行われたものではなく、“国の申し出”によって行われたものだから、遺族の申し出には答えられないのだそうだ。
 なんだそりゃ。
 死んでまで国(一部の人々にとっては、日本という“外国”)に身柄を拘束されるなんて全くもってナンセンス。

 靖国問題を解決するためには「分祀」とか「解体」とかいろんな案があるようだけれど、とにかく「2度と過ちは繰り返してはいけない」という思いは万国共通なはず。
 ならば。
 そんな平和な世の中を構築するためには終戦記念日の靖国で小競り合いをしている場合じゃないのだ。
 
 いずれにしてもこの作品、日本人なら観ておいた方がいい。
 今年の終戦記念日は靖国へ行ってみたくなった。

靖国 YASUKUNI [DVD]

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  • 出版社/メーカー: CCRE
  • メディア: DVD

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コメント 16

瑠璃子

待ち合わせて一緒に行きますか?w>今年の終戦記念日
朝から夕方までいると、暑さゆえ水分が全て汗になるので、お手洗いに行こうという気になりません。結構過酷なんですよ。

2000年頃までは結構静かで閑散としていたんですけどね。マスコミが報道するようになってからいろんな人が来るようになりました。
去年のレポートは結局書かずじまいだったんですが、毎年行くと必ず「ある象徴的な出来事」を目にします。おととしは喧騒の中木陰で幼子を遊ばせている若い夫婦、去年は孫らしき少年の肩に掴まって拝殿に向かって歩くおじいさん、など…。
遺族の希望で取り除くことができないのは、神道にはいったん「同化」させた祭神を別途取り出すことができない宗教上の概念もひとつにはあります。つまり靖国神社へ「祀る」ということは、海の中へ一滴水を落とすようなもので、後から「さっき落とした水をとりだせ」といわれても不可能であるのと同じである、ということです。(また本人の意思≠遺族の意思だったりするのでその辺もかんがみるべきですね。)ただしこれははっきりいえば「神道的建前」であり、いろいろな本を読むと理論的には取り除くことは「可能」であることがわかります。
私は総理大臣や天皇陛下には是非靖国へ参拝(ご親杯)いただきたいと考えてます。国を守るために行きたくもないところへいき、したくもない殺人をし、のたれ死んだ人々のことを国が忘れていないということを示すためにも。ただそうなると国の施設に順ずる扱いをする必要があるとは思うので、(そしてそれこそは現在の靖国神社が望んでいることではないかとも思っているのですが)靖国神社の現在の体制には非常に納得できてない部分が多々ある私としては痛し痒しです。
遊就館に行って三池崇史の作ったアニメを見たりするのも一興ですぜ。また新東宝の「明治大帝と日露戦争」なんかもオススメです。
by 瑠璃子 (2008-03-06 12:33) 

ken

この記事にまずコメントをいただけるのは瑠璃子さんだと思っていました。
予想が的中して自分にnice!
それにしても「神道的建前」なんてクソ喰らえですね。
今年、スケジュールさえ都合がつけば本当に行ってみようと思います。
三池監督のアニメはそそるなあw
by ken (2008-03-07 02:09) 

瑠璃子

秦郁彦氏や半藤利一氏もいっていますが、いわゆる平泉史観というものがあり、それらが靖国神社へ入り始めてからおかしくなってきたといわれています。そのもっとも最たるものが例の「A級戦犯合祀」ですね。
とまあこんな話を今年の夏靖国神社でできることを期待しつつ。
その前に是非ゆる会でお会いしたいものですな。
ノー・カントリーかクローバーフィールドみませんか?wゆる会で。
by 瑠璃子 (2008-03-07 09:40) 

ken

ゆる会は近々開催の予定です。
ただし「ノーカントリー」の予定はナシ。観ちゃったし。
「クローバーフィールド」は興味アリです。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-03-07 11:56) 

江戸うっどスキー

歴史音痴なんで(特に近代史)、映画でなければ興味を持てなかったかも。
予告で観て、気になっていました。公開されたら、観てみます。

by 江戸うっどスキー (2008-03-08 00:31) 

ken

僕は外国人が撮った映画だから観ようと思いました。
そして、観て良かったと思っています。
内容が内容だけに、余計なことはあまり書きませんでしたが、
意外な事実がてんこ盛りで、ドキュメンタリーとしての面白さも充分。
ぜひご覧になって下さい。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-03-08 08:00) 

魚河岸おじさん

ゆる会で熱心にチラシを読んでいたkenさんの姿を思い出しました
知っているようで、何も知らない自分は
もう少し真剣に、昭和のことに目を向けなければ・・・・
叔父がいるであろう靖国
1度だけ訪れましたが、自分の中の戦争感なのか
拝殿まで行くことはしませんでした
コノ作品、必ず見ようと思います
by 魚河岸おじさん (2008-03-09 10:26) 

ken

我々の世代も靖国と向き合わなければいけないんじゃないかな、
と思った1本です。知らないでは済まされないような気がしてきました。
by ken (2008-03-09 15:53) 

デクノボー

赤字部分にnice。
でも、一方では小競り合いがなくなったときこそが怖いとも思います。

「蟻の兵隊」での、終戦記念日の靖国における奥村さんと小野田さんのぶつかりありにはやりきれなさを感じました。
by デクノボー (2008-03-09 17:53) 

ken

「蟻の兵隊」は、その存在すら知りませんでした。
虚しくなるのを承知で、近いうちに観てみたいと思います。
nice!ありがとうございます。

by ken (2008-03-09 20:02) 

瑠璃子

100人切り訴訟で有名な稲田朋美議員がこの映画に関して「事前検閲させろ」と言ってニュースになりましたね。

「蟻の兵隊」は以前見てそれについてのブログ記事も書きました。今でもその時抱いた感想は、変わっていません。個人的にはあの手のドキュメンタリー手法は限界があるのではと思っています。
それよりも同時期に見た「ヨコハマメリー」には撃ち抜かれました。戦後の描き方としてはあれが最近見たものの中ではトップです。いつか機会があれば是非。日本のドキュメンタリーって対象者を煽ったりしなくても十分ものすごいものが出来上がるということの証左ですね。
by 瑠璃子 (2008-03-10 13:43) 

ken

実は「YASUKUNI」も事前検閲させろと騒いだ“右曲がりのダンディ”が
いるようです。呆れてモノも言えません。
「ヨコハマメリー」、知りませんでした。
by ken (2008-03-10 14:34) 

瑠璃子

靖国、見てきました。例の日弁連の主催の試写会です。
隣の席のおっさんが、加齢シューがすさまじい上に、映画を見ている間携帯はみるわ挙句に電話かけるわ…で辟易でした。1500通の中から選ばれたんだからもうちょっとちゃんとみてやれよ、と思いましたが。
それにしても感想の言いづらい映画ですねえ…。それだけに「巧い」といえますが。
で、例の稲田サンの「ご神体を靖国刀だといってる」ってあれは完全に嘘ですね。冒頭で「御祭神として太刀奉納」の感謝状が当時の松平宮司から贈られてきていました。そもそも太刀奉納するというのは江戸時代の大名が地元の有名神社に対してよく行っていたことなので、ぜんぜん不思議じゃない。神体は御太刀なので、「一振りの刀である」という紹介はぜんぜん間違ってないです。
シンポジウムに参加もしてきました。ルポは今日明日上げる予定です。
by 瑠璃子 (2008-04-24 15:17) 

ken

映画の最中に電話かけるようなジジイに観てもらいたくないなあ。
それにしても稲田朋美ってナニモノなんだ???
by ken (2008-04-24 15:37) 

瑠璃子

稲田がその背後にある日本会議(神社本庁やキリストの幕屋≠統一教会?が支援している政治団体)の意向を受けての発言であるのは間違いないですね。間違った国政調査権まで行使しようとしたらしいから、よほどヤヴァイ場面がうつっていたのかなって思ったんですが…。やっぱり左翼青年が靖国の記念式典に乱入して、追い出され追い詰められ警察が介入したにも関わらず血だらけになるまで殴られたのがまずいのかもしれませんねwウヨクになにかされても警察は何もしてくれないんだよってことの証左かもw
by 瑠璃子 (2008-04-24 15:58) 

ken

僕はあのシーンを観たあとで、今年の聖火リレーを観たので
いったいぜんたいどういう世の中になっとるんだ、と思いました。
軍隊も警察もひどい連中です。
by ken (2008-04-24 16:42) 

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