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告発のとき [2008年 レビュー]

告発のとき」(2007年・アメリカ) 監督・脚本:ポール・ハギス

 これは2003年、アメリカで実際に起きた事件をモチーフに作られた物語。
 イラク戦争から帰還したばかりの若い兵士が、失踪後に焼死体で発見される。
 犯人は一体誰なのか?
 遺体発見現場が軍の敷地内であったため捜査に及び腰になる州警察。
 何故か事実関係を隠ぺいしようとする軍警察。
 そのはざまで、元軍人でもある兵士の父親が、その謎に迫ろうとする。

 米プレイボーイ誌に掲載された「Death and Dishonor (死と不名誉)」にヒントを得て、アカデミー賞受賞脚本家のポール・ハギスが書き下ろした作品です。
 戦争がもたらす狂気は、これまでも数多くの映画で描かれてきました。
 その中にあってこの作品は、最も静かな作品だと思います。それは真犯人はもとより、殺害の理由が人々の理解の範疇を超えたところにあるからです。特に元軍人の父親にとっては怒りのぶつけようもない、絶句するしかない結末だった。
 
 Why?
 なぜ息子は殺されたのか?
 なぜ息子を殺したのか?
 無事任務を終えて帰還した祖国で、なぜ?

 戦争が人にもたらす影響。
 それは体験した者でなければ分かりません。
 しかし、彼らの心に棲み付いた“狂気”は、誰にもコントロールできない“悪魔”だということが本作を観ると分かります。劇中、帰還した兵士の一人がこうつぶやきました。
 「イラクへ帰りたい」
 いずれ国を背負って立つべき若者が、戦争によって壊れていく…。
 戦争で得るものよりも、失うものの方がいかに大きいか。ポール・ハギスは事件を通して国家の危機を訴えていました。

 殺された兵士の父親(トミー・リー・ジョーンズ)とその妻(スーザン・サランドン)。そして軍の壁に阻まれながら捜査を牽引する女刑事(シャーリーズ・セロン)。
 3人とも落ち着いたいい芝居をしています。
 唯一残念なことはあまりに展開が静か過ぎること。波がないわけじゃないのですが、うねりは作らなかった。これが本国での興行成績に繋がらなかった理由じゃないかと思います。
 ポール・ハギス名義に期待すると、若干肩透かしを食ってしまう佳作。

告発のとき [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: DVD

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コメント 6

魚河岸おじさん

見たい・・・・早く見たい
by 魚河岸おじさん (2008-05-07 16:49) 

ken

あまり期待しすぎませんように…。
by ken (2008-05-08 10:02) 

non_0101

こんばんは。
思っていたよりも静かな展開でした。
でも、静かだからと安心していると、ドーンと重さがやって来ました~
あの遺体を見てしまったら、あとはもう事件の解決を祈るだけだったのに
真実はもっと重かったです(T_T)
> ポール・ハギス名義に期待すると、若干肩透かしを食ってしまう佳作
この物語にこの出演者を持って来れたところが
ポール・ハギスの力なのかも知れませんね(^^ゞ

by non_0101 (2008-06-20 01:10) 

ken

この展開は「ポール・ハギスらしさ」と言っていいのかも知れませんね。
もう少し劇的な展開があるのかと思った僕は失敗でした。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-06-20 01:14) 

地蔵

初めまして。拙文へのnice!とコメント
さらにトラバまでいただきありがとうございます。

> 殺害の理由が人々の理解の範疇を超えたところにあるからです。
というご指摘、なるほどと思いました。
それ故に当方にはこの作品から腹落ち感が得られなかったのかも
しれません。

いろいろと参考にいたしますので今後も寄らせていただきます。
by 地蔵 (2008-07-01 19:07) 

ken

地蔵さん、ようこそ。
やはり「映画は雄弁」でなければならないのかしら?
と思った作品でした。悪くないんだけど。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-07-01 19:21) 

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