しゃべれども しゃべれども [2008年 ベスト20]
「しゃべれども しゃべれども」(2007年・日本) 監督:平山秀幸 脚本:奥寺佐渡子
TOKIOの国分太一は好きだ。あんなに天真爛漫に笑うJのタレントを僕は他に知らない。
そんな彼がちょっと堅物の二つ目を演ると聞いて、「なんだかイメージと違うな」と思っていた。佐藤多佳子原作の映画化には興味があったけれど、公式ポスターのアートワークも好きになれずに、結局今日まで未見だった。
しかし。
実にいい。
なんでもないカットや、なんでもないやりとりが、妙に心の琴線に触れる。
本当になんでもないようなことが。
なぜだろうと思っていたら、この映画に登場する主要3人の男が、自分の過去から現在に重なっていることに気が付いた。
大阪から東京へ転校してきて、うまく馴染めないでいる小学生の村林(森永悠希)。
目標を持って打ち込んでいるつもりでも、この先の道筋が見えていない「今昔亭三つ葉」こと外山達也(国分太一)。
自分の思いをうまく伝えられないせいで、仕事もうまくいかない元プロ野球選手の湯河原(松重豊)。
それぞれ年代は違うけれど、この3人が抱える悩みはかつての僕が抱えていた悩みだ。だから僕は彼らの気持ちを理解し、「なんとか乗り越えて欲しい」と願う。
僕は映画を観ながら、かつての自分にエールを送っていたのだ。
だからふいに涙もこぼれる。
落語という世界もいい。
この設定は、日本人が古来持っていた「粋で筋の通った」生き方が描き易い。
主人公の達也も噺家(しかも古典にこだわり、新作落語に手を染めない頑固者)という設定でなかったら、きっと偏屈な男に見えただろうし、八千草薫が絶妙の間合いで演じて見せた祖母の役もまったくリアリティを持たなかっただろう。また現代の東京にあって希少価値の高いレトロなロケーションを見せることが出来たのも、この設定のおかげだ。
ただしキャスティングには一言ある。
元プロ野球選手の役に松重豊は無い。バットを振るシーンが2度あるが、いずれも経験者に見えない所作でがっかりした。ここは永島敏行か柳葉敏郎あたりを持ってきて欲しかった。
香里奈も個人的には賛成しない。むっつり美人という設定なら(今、完全にブームが来ている)真木よう子がいい。
反対に伊東四朗さんと八千草薫さんは素晴らしく良かった。
四朗さんの演った「火焔太鼓」は、さわりだけとはいえ素人の僕には充分「真打」の仕事に思えたし、八千草薫さんのとぼけた味わいは絶品だった。
中でも後半、落語の魅力にハマった小学生の村林が達也に、「オレ、弟子予約しとくわ」と言った八千草さんの返しが絶妙だった。
「大人になりゃ、それが間違いだって分かるよ」
エンディングのまとめ方に多少の不満は残るものの、久しぶりに観た気持ちのいい1本。
TOKIOの国分太一は好きだ。あんなに天真爛漫に笑うJのタレントを僕は他に知らない。
そんな彼がちょっと堅物の二つ目を演ると聞いて、「なんだかイメージと違うな」と思っていた。佐藤多佳子原作の映画化には興味があったけれど、公式ポスターのアートワークも好きになれずに、結局今日まで未見だった。
しかし。
実にいい。
なんでもないカットや、なんでもないやりとりが、妙に心の琴線に触れる。
本当になんでもないようなことが。
なぜだろうと思っていたら、この映画に登場する主要3人の男が、自分の過去から現在に重なっていることに気が付いた。
大阪から東京へ転校してきて、うまく馴染めないでいる小学生の村林(森永悠希)。
目標を持って打ち込んでいるつもりでも、この先の道筋が見えていない「今昔亭三つ葉」こと外山達也(国分太一)。
自分の思いをうまく伝えられないせいで、仕事もうまくいかない元プロ野球選手の湯河原(松重豊)。
それぞれ年代は違うけれど、この3人が抱える悩みはかつての僕が抱えていた悩みだ。だから僕は彼らの気持ちを理解し、「なんとか乗り越えて欲しい」と願う。
僕は映画を観ながら、かつての自分にエールを送っていたのだ。
だからふいに涙もこぼれる。
落語という世界もいい。
この設定は、日本人が古来持っていた「粋で筋の通った」生き方が描き易い。
主人公の達也も噺家(しかも古典にこだわり、新作落語に手を染めない頑固者)という設定でなかったら、きっと偏屈な男に見えただろうし、八千草薫が絶妙の間合いで演じて見せた祖母の役もまったくリアリティを持たなかっただろう。また現代の東京にあって希少価値の高いレトロなロケーションを見せることが出来たのも、この設定のおかげだ。
ただしキャスティングには一言ある。
元プロ野球選手の役に松重豊は無い。バットを振るシーンが2度あるが、いずれも経験者に見えない所作でがっかりした。ここは永島敏行か柳葉敏郎あたりを持ってきて欲しかった。
香里奈も個人的には賛成しない。むっつり美人という設定なら(今、完全にブームが来ている)真木よう子がいい。
反対に伊東四朗さんと八千草薫さんは素晴らしく良かった。
四朗さんの演った「火焔太鼓」は、さわりだけとはいえ素人の僕には充分「真打」の仕事に思えたし、八千草薫さんのとぼけた味わいは絶品だった。
中でも後半、落語の魅力にハマった小学生の村林が達也に、「オレ、弟子予約しとくわ」と言った八千草さんの返しが絶妙だった。
「大人になりゃ、それが間違いだって分かるよ」
エンディングのまとめ方に多少の不満は残るものの、久しぶりに観た気持ちのいい1本。
これ、興味あったんです。太一くんの演技している姿って考えてみるとあんまり思い出せないけど、彼の持ち味がいいかんじで出ている作品なのかな〜なんて思ってました。次にDVD借りる時、探してみます!
by カオリ (2008-05-05 09:41)
古典にこだわる二つ目さんが主役というのが面白そうですね。
といっても私の好きな古今亭寿輔は創作落語ばかりで現在古典は殆どかけない噺家さんなのですが。(笑)
劇場で観るタイミングを逃して未だ観ていない作品なのですが、伊東四朗さんが見たいです。「火焔太鼓」ですもんね。これだけでも観る価値はありそうです。
by うつぼ (2008-05-05 10:11)
>カオリさん
正直言って悪くないと思います。
よくぞこの役を引き受けたな、と思うくらいなんだけど、
実は、国分クンじゃないと出来ない役のような気がします。
>うつぼさん
伊東四朗さんは、噺家らしくないんだけど、喋りは艶があるんです。
もしかしたら天才じゃないでしょうか?
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-05-06 14:15)
八千草さん良かったです
粋なおばあちゃん、近所にいたら、毎日遊びに行っちゃいそう(笑)
by 魚河岸おじさん (2008-05-07 16:53)
勝手に上がりこんでお茶飲んでたりしそうw
by ken (2008-05-08 10:03)
私も、kenさんと同じ理由で未見の作品なのですが…見てみようと決意しました。
背中を押してくださってありがとうございます!
by ぎんと (2008-05-08 15:45)
観れば分かりますが、日本酒が飲みたくなる映画でもありますw
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-05-08 16:45)
そうですね、真木よう子が演じる十河なら違和感なさそうです。
香里奈では陰湿な感じが薄かったように感じました。
by robert (2008-05-10 12:38)
こんにちは、わたしも最近この映画を観ました!
わたしもエンディングには消化不良でしたが、なかなかいい映画でした。
あいかわらず八千草さんは素敵です!
by のん (2008-05-10 17:42)
>robertさん
真木よう子、いいですよね!
nice!ありがとうございます。
>のんさん
ちょっと唐突なエンディング(セリフ)でしたが、まあいいかと思いました。
八千草薫さんはホントにグゥ~でしたw
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-05-10 18:59)
元気になれる一本ですよね~。
松重豊さんのプロ野球選手、ダメでしたか~。個人的にツボだったんですけどね^^;
by 江戸うっどスキー (2008-05-11 12:39)
うーん、松重さんは猫背なんですよねえ。あれがちょっとダメで…w
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-05-12 00:04)
この作品は映画館で見ました。大好きな作品です。
映画館の中は年配の落語の好きな人と、まあまあ若い国分太一の
ファンが一緒に観るという不思議な雰囲気に包まれてました。
粋さとそれぞれの人間の不器用な部分が面白くそして、ぐっと、くる様に
描かれていて、泣いたり、笑ったりでした。
この映画を見た年配の方と話す機会があったのですが、
その方も伊藤四郎と国分太一の「火焔太鼓」は最初から最期まで
見たいと、言っていました。
村林役の森永悠希はあまりにも枝雀師匠が蘇った様で関心しました。
映画館の中は最期にはみんな一つになって、和んだ感じになりました。
それを思い出して、今でも心温かくなります^^♪
by ミック (2008-05-25 14:36)
まったく層の違う観客が、映画に満足して劇場をあとにするシーンは
イメージすると心が和みますね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-05-25 19:55)