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ナビィの恋 [2008年 レビュー]

ナビィの恋」(1999年・日本) 監督・脚本:中江裕司 脚本:中江素子

 僕にとって本作は「沖縄映画」というジャンルを確立した記念碑的存在で、その功績はもっと讃えられるべき!と思っている1本なんですが、その一方で「
おばぁが昔の男と逃げる後味の悪い映画」という印象が強い作品でもありました。そこで今回、観直してみることに。

 この映画は沖縄俗謡の「十九の春」がモチーフになっている作品だったんですね。今回初めて気が付きました。と同時にミュージカルとまではいきませんが、音楽映画であることも忘れてはいけないポイントだと思います。
 特筆すべきは沖縄音楽界の重鎮たちが多数出演していること。
 まず、主人公・奈々子(西田尚美)のおじぃ、恵達を演じているのは、沖縄伝統音楽における現役最高峰のシンガーで“沖縄のジミヘン”とも呼ばれる登川誠仁。
 島の長老を演じているのは“沖縄民謡の至宝”、嘉手苅林昌(映画公開直前に死亡)。
 長老の妻は沖縄を代表する女性シンガーで嘉手苅林昌とコンビも組んでいた大城美代子。
 翁面をつけた(アブジャーマー)男は“八重山民謡の大家”、山里勇吉。
 それぞれが実に味わい深い歌唱を劇中披露しています。

 キャスティングの妙という点では60年前、愛し合いながらユタの占いによって引き離されたサンラー(平良進)とナビィ(平良とみ)を演じている2人が実の夫婦であることも重要なポイントであると思いました。
 「ナビィは50年連れ添った恵達を捨てて、サンラーと島を出る」という展開も、演じる2人が夫婦であるが故に観客は無意識のうちに“腑に落ちる”という構造になっていたんじゃないかと思います。個人的には巧い演出(キャスティング)だなと感心してしまいました。
 脚本で言うと、恵達の年齢設定(ナビィよりも年下)と、子供の頃からナビィを慕っていたという設定が技あり。回想シーンにあたる古いフィルムのシーンも感情移入しやすい、いい作りだったと思います。

 結論。
 この作品はやはり秀作でした。
 そして、男の悲哀をさらりと演じた登川誠仁さんに、改めて猛烈に感動しました。

 thanks! 800,000prv

ナビィの恋

ナビィの恋

  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • メディア: DVD

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コメント 4

snorita

友人がほい、と貸してくれたDVDだったのですが、そのあと私も沖縄映画にはまり続けておりました。
by snorita (2008-06-01 08:16) 

ken

たとえば「猟奇的な彼女」があったおかげで、韓国映画が広く知られたように
ひとつのジャンルを広げるためにはキラーソフトが重要なんですよね。
だからこそ本作はもっと評価されるべきだと思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-06-01 13:35) 

satoco

沖縄流行の真の立役者はこの映画だとおもいます。大ヒットした朝ドラ「ちゅらさん」も本作がなければ作られなかったことでしょう。
ものすごくよくできた映画ですよね。子ども時代の、小さな恵達が美少女のナビィにあこがれているシーンがすべてに説得力を与えていたと思います。そして美しい音楽や若者の恋など、すべてが「主人公が夫を棄てて駆け落ちする」という話の苦々しさを緩和するためにあったようです。
そして登川誠仁さんは本当に格好良かったです。恵達のキャラも格好いいのですが登川誠仁さんご自身格好良くてうっとりでした。
by satoco (2008-06-02 09:03) 

ken

楽器が出来て、歌の上手いおじいちゃんはモテるってことでしょうか?
そうじゃないですよねw 誠仁さんだからなんだよなあ。ホントカッコいい。
中江裕司監督はもっと評価されていいのにね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-06-02 13:24) 

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