白い巨塔 [2008年 レビュー]
「白い巨塔」(1966年・日本) 監督:山本薩夫 脚本:橋本忍 原作:山崎豊子
“骨太”日本映画シリーズです。相変わらず凝り性なもんで(笑)。
1978年放映のテレビドラマシリーズは両親が好きだったので一緒に観ていた記憶がありますが、いかんせん当時僕は15歳。「スター・ウォーズ」や「宇宙戦艦ヤマト」に「うきー!」となってた子供ですから、「大学病院の教授レース」って言われても、ぽかーんですよ。
それから30年後。
山本薩夫監督に目覚めた45歳のオッサンはオリジナル版を観るのですが、いや~面白いです。
田宮二郎、小沢栄太郎、東野英治郎、田村高廣、加藤嘉といった絶妙のキャスティングもさることながら、やはりキャラクターを際立たせた脚本と、テンポのいい編集が肝。中だるみは全く無く、バランスのいい緊張感を保ち続けたまま149分を駆け抜けます。
唯一不満があるとすれば、財前と正反対の志を持つ里見助教授(田村高廣)の“押し”が弱いこと。もう少し財前と丁々発止やってくれたら、と思ったのですが、それはあくまで結果論。
また、テレビシリーズを観た人には「そこで終わり?」ってタイミングでエンドマークが出ますが、大学病院内の派閥争い、教授レース、そして誤診医療による裁判と、見応え充分。単発の映画としては申し分ありません。
さてこの作品、実はタイトルバックからいきなり驚かされます。
財前五郎の手術シーンにスタッフ&キャストのクレジットが出るのですが、手術の手元がホンモノとしか思えないのです。まさか腹部にメスを入れるカットは、その瞬間別アングルに変わるのだろうと思って観ていたのですが、そのまま見事開腹され、臓器も確認できる状態。しかも、こんなカットが本編中も何度も出てくるのです。これは久し振りに驚きました。どうしてこんなことが可能になったのか。山本薩夫監督のこだわりもあったでしょうが、それを可能にしたプロデューサーや助監督の証言を聞いてみたいと思いました(どこかに資料がないかな?)。
そして本作を語る上で避けて通れないのが、田宮二郎。
設定年齢より若いのが少々物足りないのですが、彼は財前五郎の貪欲さを見事に醸し出していたと思います。これは恐らく、田宮二郎本人が内に秘めていた「欲」と重なるところがあったのでしょう。彼自身の俳優としての名声や格付けに対する執着心が、役に反映されたとしか思えません。
仮にこの役を田村高廣や、船越英二(菊川昇・金沢大学医学部教授)に演じろと言っても無理な話で、財前五郎とはそれ相応の人間でなければ演じられない強烈なキャラクターであり、田宮二郎が財前五郎に「命を与えた」と言っても過言ではないでしょう。
医学会の腐敗の実体を覗き見した満足度高し。78年のテレビ版を観直したくなった。
“骨太”日本映画シリーズです。相変わらず凝り性なもんで(笑)。
1978年放映のテレビドラマシリーズは両親が好きだったので一緒に観ていた記憶がありますが、いかんせん当時僕は15歳。「スター・ウォーズ」や「宇宙戦艦ヤマト」に「うきー!」となってた子供ですから、「大学病院の教授レース」って言われても、ぽかーんですよ。
それから30年後。
山本薩夫監督に目覚めた45歳のオッサンはオリジナル版を観るのですが、いや~面白いです。
田宮二郎、小沢栄太郎、東野英治郎、田村高廣、加藤嘉といった絶妙のキャスティングもさることながら、やはりキャラクターを際立たせた脚本と、テンポのいい編集が肝。中だるみは全く無く、バランスのいい緊張感を保ち続けたまま149分を駆け抜けます。
唯一不満があるとすれば、財前と正反対の志を持つ里見助教授(田村高廣)の“押し”が弱いこと。もう少し財前と丁々発止やってくれたら、と思ったのですが、それはあくまで結果論。
また、テレビシリーズを観た人には「そこで終わり?」ってタイミングでエンドマークが出ますが、大学病院内の派閥争い、教授レース、そして誤診医療による裁判と、見応え充分。単発の映画としては申し分ありません。
さてこの作品、実はタイトルバックからいきなり驚かされます。
財前五郎の手術シーンにスタッフ&キャストのクレジットが出るのですが、手術の手元がホンモノとしか思えないのです。まさか腹部にメスを入れるカットは、その瞬間別アングルに変わるのだろうと思って観ていたのですが、そのまま見事開腹され、臓器も確認できる状態。しかも、こんなカットが本編中も何度も出てくるのです。これは久し振りに驚きました。どうしてこんなことが可能になったのか。山本薩夫監督のこだわりもあったでしょうが、それを可能にしたプロデューサーや助監督の証言を聞いてみたいと思いました(どこかに資料がないかな?)。
そして本作を語る上で避けて通れないのが、田宮二郎。
設定年齢より若いのが少々物足りないのですが、彼は財前五郎の貪欲さを見事に醸し出していたと思います。これは恐らく、田宮二郎本人が内に秘めていた「欲」と重なるところがあったのでしょう。彼自身の俳優としての名声や格付けに対する執着心が、役に反映されたとしか思えません。
仮にこの役を田村高廣や、船越英二(菊川昇・金沢大学医学部教授)に演じろと言っても無理な話で、財前五郎とはそれ相応の人間でなければ演じられない強烈なキャラクターであり、田宮二郎が財前五郎に「命を与えた」と言っても過言ではないでしょう。
医学会の腐敗の実体を覗き見した満足度高し。78年のテレビ版を観直したくなった。
私もこの映画を見たとき、加藤嘉が内臓を取り出してしげしげと眺めたり、
そういう部分のリアルさに驚きました。
田宮二郎と財前については、おっしゃる通りと思います。
田宮二郎は、自分自身を見たのでしょうね。財前の中に。
この映画ではちょっと若すぎる感じもしましたが、やっぱり財前は田宮二郎でなくては、と思います。
by Sho (2008-11-02 07:40)
そだなー。里見の役は、山本学のほうがよかったよーな気がする。あと、太地喜和子も。
テレビ版の方が、後なんですね、しらなかった〜。
私も見たくなっちゃったよ。
by snorita (2008-11-02 08:55)
>Shoさん
そんなわけで僕は、唐沢バージョンは1秒も見ていませんw
nice!ありがとうございます。
>snoritaさん
テレビ版が放送されるまでに、田宮二郎も紆余曲折あったんですよ。
だからますます乗り移った感じが出てるんですよね。観たいなあ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-11-02 10:59)
タイトルパックだけでも観てみたい。
by ばくはつごろう (2008-11-02 14:25)
せっかくですから全部観ちゃって下さいw
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-11-02 18:23)