ボルサリーノ [2008年 レビュー]
「ボルサリーノ」(1969年・フランス/イタリア) 監督:ジャック・ドレー
フランスが生んだ世界的スター、ジャン=ポール・ベルモンドとアラン・ドロンが初共演したフレンチ・フィルム・ノワールの一篇。チェンバロの音色で有名なこのテーマ曲を知らないOVER40もいないでしょう。日本公開は1970年。
初見です。
思えばこの2年は歴史に名を残す映画を沢山観てきました。やっぱり旧い作品を観ていないと、新しい作品のことをうかつに批評出来ないんですよね。だからといって旧作ばかり観てもいられなくて(合間に仕事もするしサ)、1日24時間の使い道はつくづく難しいなあ、と思います。
そんな中、超有名なこの1本は突然wowowの企画で放送され(いろんな映画の放映権持ってんなあwowow)、「もちろん観ておいたほうがいい」と思って、僕は日本公開から38年目にしてようやく観たわけですが、率直な感想を言わせて頂くなら、駄作です。まぎれもなく。
一度は、「40年近く前の映画だからこんなもんかな?」と思ったりもしたんですが、いやいや同じ年日本で公開された「明日に向かって撃て!」は今観ても面白いですからね。
じゃ「ボルサリーノ」は何故イケてないのかと言うと、ジャック・ドレーがヘボ監督だからです。
「ボルサリーノ」は1930年のマルセイユを舞台に、シフレディとカペラという2人のチンピラが街の“顔役”までのし上がって行く様を描いたものです。このドラマをシリアスに作るか、シニカルに作るか、それともコメディにするのか。一番肝心なところがまったく定まっていません。驚いたのは冒頭でシフレディ(ドロン)とカペラ(ベルモンド)が殴り合うシーンが、ただのコントだったこと。カット割りも、芝居も、アクションの演出も、台詞も、事の成り行きも、まったく不自然極まりなく、作品に入り込むことが出来ません。思うのはただ、「ドロンもベルモンドも若いなあ」ってことだけ。
確認したら脚本には4人が名前を連ねていて、うち一人は監督自身。迷いのある人間が脚本に手を加えたって意味ないっつーの。
しかし、個人的に目を見張ったシーンがひとつだけありました。
それはドロンが振り向きざま、ある男めがけてナイフを投げると、見事胸に刺さって男は絶命するというシーン。これがワンカット、編集ナシで見せられます。
一連の動作があまりに見事だったので、僕は本当にドロンが投げたのか確認しようと思わず巻き戻してしまったのですが、これが驚きました。ドロンは振りかぶってナイフを投げる瞬間、背中の後ろにナイフを落として、まさに投げるフリだけし、瞬間男の胸元に仕込まれたナイフが(おそらくスプリングによって)飛び出すという仕掛けになっていました。この間合いがまた絶妙。僕は観客をアッと言わせたい“活動屋”の心意気を観た気がして、スタッフにもドロンにも感動しました。
それにしても、ドロンとベルモンドは恐ろしくカッコいい。主要登場人物のスタイリングも見事で、まるでエンジンは最悪だけどシートだけは抜群にいいフランス車みたいな映画です。
そんなワケで主演の2人に興味がなければ観る必要なし。
フランスが生んだ世界的スター、ジャン=ポール・ベルモンドとアラン・ドロンが初共演したフレンチ・フィルム・ノワールの一篇。チェンバロの音色で有名なこのテーマ曲を知らないOVER40もいないでしょう。日本公開は1970年。
初見です。
思えばこの2年は歴史に名を残す映画を沢山観てきました。やっぱり旧い作品を観ていないと、新しい作品のことをうかつに批評出来ないんですよね。だからといって旧作ばかり観てもいられなくて(合間に仕事もするしサ)、1日24時間の使い道はつくづく難しいなあ、と思います。
そんな中、超有名なこの1本は突然wowowの企画で放送され(いろんな映画の放映権持ってんなあwowow)、「もちろん観ておいたほうがいい」と思って、僕は日本公開から38年目にしてようやく観たわけですが、率直な感想を言わせて頂くなら、駄作です。まぎれもなく。
一度は、「40年近く前の映画だからこんなもんかな?」と思ったりもしたんですが、いやいや同じ年日本で公開された「明日に向かって撃て!」は今観ても面白いですからね。
じゃ「ボルサリーノ」は何故イケてないのかと言うと、ジャック・ドレーがヘボ監督だからです。
「ボルサリーノ」は1930年のマルセイユを舞台に、シフレディとカペラという2人のチンピラが街の“顔役”までのし上がって行く様を描いたものです。このドラマをシリアスに作るか、シニカルに作るか、それともコメディにするのか。一番肝心なところがまったく定まっていません。驚いたのは冒頭でシフレディ(ドロン)とカペラ(ベルモンド)が殴り合うシーンが、ただのコントだったこと。カット割りも、芝居も、アクションの演出も、台詞も、事の成り行きも、まったく不自然極まりなく、作品に入り込むことが出来ません。思うのはただ、「ドロンもベルモンドも若いなあ」ってことだけ。
確認したら脚本には4人が名前を連ねていて、うち一人は監督自身。迷いのある人間が脚本に手を加えたって意味ないっつーの。
しかし、個人的に目を見張ったシーンがひとつだけありました。
それはドロンが振り向きざま、ある男めがけてナイフを投げると、見事胸に刺さって男は絶命するというシーン。これがワンカット、編集ナシで見せられます。
一連の動作があまりに見事だったので、僕は本当にドロンが投げたのか確認しようと思わず巻き戻してしまったのですが、これが驚きました。ドロンは振りかぶってナイフを投げる瞬間、背中の後ろにナイフを落として、まさに投げるフリだけし、瞬間男の胸元に仕込まれたナイフが(おそらくスプリングによって)飛び出すという仕掛けになっていました。この間合いがまた絶妙。僕は観客をアッと言わせたい“活動屋”の心意気を観た気がして、スタッフにもドロンにも感動しました。
それにしても、ドロンとベルモンドは恐ろしくカッコいい。主要登場人物のスタイリングも見事で、まるでエンジンは最悪だけどシートだけは抜群にいいフランス車みたいな映画です。
そんなワケで主演の2人に興味がなければ観る必要なし。
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