コマンダンテ [2008年 レビュー]
「コマンダンテ」(2003年・アメリカ/スペイン) 監督:オリヴァー・ストーン
コマンダンテとはスペイン語で司令官の意。ただし現在のキューバではフィデル・カストロの愛称として使われていると言う。
これはオリヴァー・ストーン自身がインタビュアーとなって3日間に渡り取材したカストロのインタビューフィルム。
もしも「13デイズ」や「JFK」、「グッド・シェパード」、「チェ2部作」など観たことがあれば、このドキュメンタリーはきっと面白い。今年、体調不良が伝えられ国家評議会議長の座を退いた今となっては、「キューバの歴史を語るカストロ自身の貴重な証言」が収められたフィルムであるからだ。
ケネディ暗殺に関する考察や、チェ・ゲバラを語る箇所など興味深い点は多いが、中でも僕が最も興味を寄せたのは、やはり「キューバ危機」に関する回想だ。
アメリカの歴史家たちが書く、「カストロはフルシチョフへの手紙の中でアメリカを核攻撃するよう迫った」と言う点について、カストロは「私は攻撃を要請していない」と真っ向から反論してみせた。北半球の歴史を大きく書き換え兼ねないこの問題についてカストロは、フルシチョフへのメッセージを託した駐ロシア大使のスペイン語が完全でなかったことと、ロシア語の通訳もないかったことが原因、と本編で話している。
しかし、具体的な事実関係についてはカストロの話す内容が曖昧だったか、それとも本作の字幕翻訳が下手だったのか分からないが、正しい事実関係が判明しない。この点については誠に残念である。
キューバ危機についてはさらにもうひとつ、カストロの重要な発言があった。
「(アメリカとソ連によって)我々は大変な危機にさらされ、この国の滅亡すら覚悟した。まず滅びるのは我々だ」
僕はこの言葉を聞いて、カストロがソ連に核攻撃を迫ったのはアメリカの歴史家による捏造だと確信した。キューバ危機が最悪のシナリオになっていたら…。何がどうしたってキューバは核によって滅びる可能性が極めて高かったのだ。
「自国を滅ぼしてまでアメリカに一矢報いたい」
そんなことを望む国家元首がはたしているのだろうか?
さらに、僕は本作でもう一つ確信したことがある。
それは、キューバ危機の遠因を作ったのは、アイゼンハワーとニクソンであるということだ。
キューバ革命後。援助を求めてアメリカを公式訪問したカストロ。その会談をアイゼンハワー大統領はゴルフのために欠席し、代わってカストロと会談した“小物”のニクソン副大統領は、カストロを「共産主義者」とアイゼンハワーに報告。これががすべての始まりだった。
カストロは語る。
「農地改革を語るだけで共産主義者扱いだ」
アメリカがキューバと言う国を、何よりカストロを軽く見ていた証である。時の大統領と副大統領が「共存」という単語を知っていれば、事情は大きく変わっていたかも知れないのだ。
カストロはニクソンのことを続けてこう語った。
「最初から彼は偽善的な政治屋で、虚栄心の強い男という印象を受けた」
カストロはキューバで絶大な人気を誇っている。ここが同じ社会主義国でも北朝鮮の金正日と大きく違うところだ。特に印象的だったのはカストロが大学を訪問したシーン。まるで韓国人スターに群がる日本人のおばちゃんのようにカストロを迎える学生たち。その中にアメリカ人留学生もいた。カストロは言う「外国人の学費は無料だ」。そういえば「シッコ」によるとキューバは医療費も無料だった。
そんなカストロに「あなたは独裁者ではないのか?」とオリヴァーが聞く。返したカストロの言葉も印象的だった。
「私は自分自身の独裁者であり、国民の奴隷だ」
今はともかく。
将来的には大きな意味を持つことになるだろう、歴史的価値の高いドキュメンタリー。
コマンダンテとはスペイン語で司令官の意。ただし現在のキューバではフィデル・カストロの愛称として使われていると言う。
これはオリヴァー・ストーン自身がインタビュアーとなって3日間に渡り取材したカストロのインタビューフィルム。
もしも「13デイズ」や「JFK」、「グッド・シェパード」、「チェ2部作」など観たことがあれば、このドキュメンタリーはきっと面白い。今年、体調不良が伝えられ国家評議会議長の座を退いた今となっては、「キューバの歴史を語るカストロ自身の貴重な証言」が収められたフィルムであるからだ。
ケネディ暗殺に関する考察や、チェ・ゲバラを語る箇所など興味深い点は多いが、中でも僕が最も興味を寄せたのは、やはり「キューバ危機」に関する回想だ。
アメリカの歴史家たちが書く、「カストロはフルシチョフへの手紙の中でアメリカを核攻撃するよう迫った」と言う点について、カストロは「私は攻撃を要請していない」と真っ向から反論してみせた。北半球の歴史を大きく書き換え兼ねないこの問題についてカストロは、フルシチョフへのメッセージを託した駐ロシア大使のスペイン語が完全でなかったことと、ロシア語の通訳もないかったことが原因、と本編で話している。
しかし、具体的な事実関係についてはカストロの話す内容が曖昧だったか、それとも本作の字幕翻訳が下手だったのか分からないが、正しい事実関係が判明しない。この点については誠に残念である。
キューバ危機についてはさらにもうひとつ、カストロの重要な発言があった。
「(アメリカとソ連によって)我々は大変な危機にさらされ、この国の滅亡すら覚悟した。まず滅びるのは我々だ」
僕はこの言葉を聞いて、カストロがソ連に核攻撃を迫ったのはアメリカの歴史家による捏造だと確信した。キューバ危機が最悪のシナリオになっていたら…。何がどうしたってキューバは核によって滅びる可能性が極めて高かったのだ。
「自国を滅ぼしてまでアメリカに一矢報いたい」
そんなことを望む国家元首がはたしているのだろうか?
さらに、僕は本作でもう一つ確信したことがある。
それは、キューバ危機の遠因を作ったのは、アイゼンハワーとニクソンであるということだ。
キューバ革命後。援助を求めてアメリカを公式訪問したカストロ。その会談をアイゼンハワー大統領はゴルフのために欠席し、代わってカストロと会談した“小物”のニクソン副大統領は、カストロを「共産主義者」とアイゼンハワーに報告。これががすべての始まりだった。
カストロは語る。
「農地改革を語るだけで共産主義者扱いだ」
アメリカがキューバと言う国を、何よりカストロを軽く見ていた証である。時の大統領と副大統領が「共存」という単語を知っていれば、事情は大きく変わっていたかも知れないのだ。
カストロはニクソンのことを続けてこう語った。
「最初から彼は偽善的な政治屋で、虚栄心の強い男という印象を受けた」
カストロはキューバで絶大な人気を誇っている。ここが同じ社会主義国でも北朝鮮の金正日と大きく違うところだ。特に印象的だったのはカストロが大学を訪問したシーン。まるで韓国人スターに群がる日本人のおばちゃんのようにカストロを迎える学生たち。その中にアメリカ人留学生もいた。カストロは言う「外国人の学費は無料だ」。そういえば「シッコ」によるとキューバは医療費も無料だった。
そんなカストロに「あなたは独裁者ではないのか?」とオリヴァーが聞く。返したカストロの言葉も印象的だった。
「私は自分自身の独裁者であり、国民の奴隷だ」
今はともかく。
将来的には大きな意味を持つことになるだろう、歴史的価値の高いドキュメンタリー。
すごく面白そうな映画。
一つのことを続けるのは実は大変なことだと思います。
来年も楽しみにしています。
よい新年をお迎えください。
by ばくはつごろう (2008-12-31 09:57)
昨夜、泥酔状態で仕上げた原稿なので、今朝若干手直ししましたw
それはともかく、このドキュメンタリーは面白いです。機会があれば。
今年は鮨会が開けずに残念でした。年明けにでもまた是非。
良いお年を!nice!ありがとうございます。
by ken (2008-12-31 12:20)