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鰐~ワニ~ [2009年 レビュー]

鰐~ワニ~」(1996年・韓国) 監督・脚本:キム・ギドク

 日本では2007年に公開されるまで「キム・ギドク幻の処女作」と呼ばれていた一篇。
 
 漢江の橋の下で生活をする浮浪者のワニ(チョ・ジェヒョン)は、橋から飛び降り自殺をした人間から金品をかすめ取って生活をしていた。そんなある日、若く美しい女性自殺者を川底から拾い上げたワニは女をそのまま強姦し、我が物にしようとするが…。

 設定を見れば分かるとおり、処女作からすでにギドクワールド全開です。ただ地元韓国で「ギドクの評判は真っ二つに分かれる」と言われる所以も、ここにあったように思いました。
 とにかく性衝動に固執した描写が多過ぎる。
 性欲は人間の三大欲求のひとつですから、人間の本質を描くには欠かせません。それを飾ることなく正面突破で描こうとする監督の姿勢は評価に値すると思います。
 ただキム・ギドクの作家性を認められなければ、「難解なポルノ映画」というレッテルを貼られないとも限らない。僕が観た限り本作品のタッチは、日本映画でいうアート系のATG映画に近いのですが、男と女の物語と言えば純情でロマンティックな展開を好む韓国人に、キム・ギドクの“味”は刺激がすぎたのだと思います。だから一部の人たちは評価する以前に拒否してしまうのでしょう。
 これは僕が「3-4X10月」を観て以来、北野作品を毛嫌いするようになった感覚と似ています。一旦「生理的にムリ」と突き放してしまうと、なかなかその監督を再評価する気になれないものです。

 致し方ないことではありますが、監督の“若さ”も随所に見られました。まず映像作品として詰めが甘い。「映画の撮り方は独学で学んだ」と監督のプロフィールでよく見かけますが、脚本、撮影、編集いずれも拙さが顕著に見られます。このアマチュアっぽさがまるで「ポルノ映画」に見えてしまう要因でもあるでしょう。

 コレ以降のギドク作品との決定的な違いは、主人公が雄弁すぎること。
 ギドク監督の“反省”はこの作品以降で大きく花開いて行くのです。その意味でも「キム・ギドクのデビュー作としての価値」を見出せない人は回避した方がいいかも知れません。
 その逆なら大いに価値あり。良くも悪くも“原点”がここにあります。

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コメント 4

Sho

よくしゃべる主人公ですか・・
これは観なきゃ!ですね。
by Sho (2009-02-04 06:24) 

ken

「悪い男」と同じ役者が主人公を演じています。
そのギャップも楽しんで下さい。
by ken (2009-02-04 16:14) 

ももこ

ますます見たくなりました。
近所のレンタルに置いてあるキムギドクは全部見たけど、
これは置いてないんですよ。
ネットレンタルしようかなぁ
by ももこ (2009-02-04 22:32) 

ken

僕は「魚と寝る女」がまだなんです。
どこかで借りられないかしら???
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-02-05 00:55) 

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