新宿インシデント [2009年 レビュー]
「新宿インシデント」(2009年・香港) 監督・脚本:イー・トンシン 脚本:チュン・ティンナム
ジャッキー・チェンの最新作。
みなさん。これは心して観なければなりません。従来のジャッキー映画を期待して観に行くと、「なんじゃこりゃあ」なことになります。
なんたってジャッキー映画初のR-15指定作品で、演じるのも「新宿歌舞伎町で犯罪に手を染め、裏社会でのし上がっていく密入国者」という、かつてないダーティな役どころ。カンフーなんて使わないし、悪人を(と言っても、ジャッキーも悪人なんだけど)バッタバッタと倒してくれないし、僕たちを笑わせてもくれません。
おそらくジャッキーは「カンフースターからの脱却」を狙っているのでしょう。とすれば本作は「主役の『鉄頭』を演じるのが別の俳優だったら?」という目線で観なければ正当な評価は出来ないと思います。それで面白いのか否か。
これは中国をはじめアジア諸国からの密入国者が相次いでいた90年代初頭のハナシ。
僕が「歌舞伎町の裏社会を描いたエンタテインメント」と言われて、まず思い出すのは馳星周の傑作小説「不夜城」です(映画は面白くないw)。
わずか500メートル四方の歓楽街で繰り広げられる中国人たちの激しい勢力争い。その中を器用に渡り歩いていたはずの主人公・劉健一が、歌舞伎町全体を揺るがす事件に巻き込まれて行く…。
複雑に入り組んだ利権と人間関係はまさに混沌(カオス)と呼ぶに相応しく、あらゆる犯罪を呑み込んでしまうという意味ではブラックホールのようでもある歌舞伎町。「不夜城」はそんな世界で唯一無二の街を、実に魅力的に描いていたと思います。
けれど、「新宿インシデント」の中の歌舞伎町にその魅力はありませんでした。
ドラマには日本の暴力団、警察、そして密入国者たちが登場しますが、その関わり合いがまったく面白くない。背景も良く分からない。だいたい街のど真ん中でドンパチやりゃーいいってもんじゃないんですよ。僕は歌舞伎町で20年ほど遊んでて、キャッチバーから死ぬ気で走って逃げたこととかありますけど、チャカもってうろうろしてる連中は見たことないですから。
でも怖いんですよ、この街は。一見平和そうに見えるところが怖い。その危うい空気はまったく描けていないんです。さらに言うなら歌舞伎町のロケーションも生かされていない。残念です。
結論を言えば、ジャッキーじゃなくても、このドラマは面白くなかった。
ついでに言えば、ジャッキー以外のキャスティングもいまいちだった。
ダメ押しすれば、ジャッキーの年齢設定にも無理があった。
カンフースターからの脱却を図るのなら、映画は選んだほうがいい。
そう思った119分でした。
完全に余談ですが、「書きたくなかったけど、書けと言われて書いた」と本人がブログで告白した「鎮魂歌-不夜城Ⅱ」も、「長恨歌-不夜城 完結編」も、素晴らしく面白いです。
ジャッキー・チェンの最新作。
みなさん。これは心して観なければなりません。従来のジャッキー映画を期待して観に行くと、「なんじゃこりゃあ」なことになります。
なんたってジャッキー映画初のR-15指定作品で、演じるのも「新宿歌舞伎町で犯罪に手を染め、裏社会でのし上がっていく密入国者」という、かつてないダーティな役どころ。カンフーなんて使わないし、悪人を(と言っても、ジャッキーも悪人なんだけど)バッタバッタと倒してくれないし、僕たちを笑わせてもくれません。
おそらくジャッキーは「カンフースターからの脱却」を狙っているのでしょう。とすれば本作は「主役の『鉄頭』を演じるのが別の俳優だったら?」という目線で観なければ正当な評価は出来ないと思います。それで面白いのか否か。
これは中国をはじめアジア諸国からの密入国者が相次いでいた90年代初頭のハナシ。
僕が「歌舞伎町の裏社会を描いたエンタテインメント」と言われて、まず思い出すのは馳星周の傑作小説「不夜城」です(映画は面白くないw)。
わずか500メートル四方の歓楽街で繰り広げられる中国人たちの激しい勢力争い。その中を器用に渡り歩いていたはずの主人公・劉健一が、歌舞伎町全体を揺るがす事件に巻き込まれて行く…。
複雑に入り組んだ利権と人間関係はまさに混沌(カオス)と呼ぶに相応しく、あらゆる犯罪を呑み込んでしまうという意味ではブラックホールのようでもある歌舞伎町。「不夜城」はそんな世界で唯一無二の街を、実に魅力的に描いていたと思います。
けれど、「新宿インシデント」の中の歌舞伎町にその魅力はありませんでした。
ドラマには日本の暴力団、警察、そして密入国者たちが登場しますが、その関わり合いがまったく面白くない。背景も良く分からない。だいたい街のど真ん中でドンパチやりゃーいいってもんじゃないんですよ。僕は歌舞伎町で20年ほど遊んでて、キャッチバーから死ぬ気で走って逃げたこととかありますけど、チャカもってうろうろしてる連中は見たことないですから。
でも怖いんですよ、この街は。一見平和そうに見えるところが怖い。その危うい空気はまったく描けていないんです。さらに言うなら歌舞伎町のロケーションも生かされていない。残念です。
結論を言えば、ジャッキーじゃなくても、このドラマは面白くなかった。
ついでに言えば、ジャッキー以外のキャスティングもいまいちだった。
ダメ押しすれば、ジャッキーの年齢設定にも無理があった。
カンフースターからの脱却を図るのなら、映画は選んだほうがいい。
そう思った119分でした。
完全に余談ですが、「書きたくなかったけど、書けと言われて書いた」と本人がブログで告白した「鎮魂歌-不夜城Ⅱ」も、「長恨歌-不夜城 完結編」も、素晴らしく面白いです。
2009-03-27 19:37
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コメント(8)
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この映画って,今朝ワイドショーか何かで,
「新しいジャッキーを見て下さい」みたいなコメントを言ってた
映画ですかね??
ここ数年,ジャッキーは全然パッとしないですよねー。
どの新作も,「ジャッキーだから観ようかな??」っては
全く思わないですもん。
「不夜城」私も好きです。金城武いいです♪
by noyuri (2009-03-27 19:51)
その映画です。
ジャッキーは演技派の俳優になりたがっているようです。
金城武の劉健一は良かったんですけどね~。映画はサイテーでしたw
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-03-27 21:31)
時々、玉キズのかた運ばれてきます。ご近所なんで、ついつい遊びに行っちゃうけど、道々チョークでヒト型とか書いてあるしねえ....まさに、カオスです。
金城武、どうも好きになれないなー。ハードボイルドは似合わないと思う....
by snorita (2009-03-28 09:15)
あ、ご近所なんですね。もしやT医大ですか?
僕は最近でこそ行かなくなりましたが、昔は完全に“庭”でした。
個室バーの奥から、コワイお兄さんが出て来て、
「タダで帰れると思うな、コラ」
と追いかけられたのが、いい思い出ですw
by ken (2009-03-28 10:32)
ジャッキーの場合、あまりダーティな役は似合わないように思います。というか、どうしても従来のキャラクターを思い浮かべながら観てしまうので、そのギャップを乗り越えられないうちに映画が終了してしまうような。
演技派を目指すなら、もう少し明るい役どころを狙った方がよいのではないでしょうか・・・
by 葵ママ (2009-03-29 23:25)
ジャッキーの魅力って、実は「笑顔」にあると思うんですよね。
だからダーティな役はかなり無理があります。
僕ももう少し明るい役どころを狙った方がいいと思いました。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-03-29 23:52)
そういえば、ジャッキー・チェンの映画、観たことありません・・・。自分に染み込んでいるイメージを打ち破るために、どんな作品を選ぶのか。どうしても、こういう選択してしまいそうです。
「不夜城」、読みたいなってずっと思っていたのでそろそろ読んでみようと思います。
by カオリ (2009-03-31 09:28)
ぎょえー!ジャッキーの映画、観たことない?
いらっしゃるんですね、そう言う人もw
でも「不夜城」を読む方がいいと思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-03-31 20:12)