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あの頃ペニー・レインと [2009年 レビュー]

あの頃ペニー・レインと」(2000年・アメリカ) 監督・脚本:キャメロン・クロウ

 ロックを愛する人向けの佳作。
 監督は若干15歳で音楽ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、16歳でローリングストーンズ誌のスタッフとなったキャメロン・クロウ。自身の経験を基に書いた本作はアカデミー賞脚本賞を受賞している。

 ロックを題材にした映画は沢山ある。
 そのジャンルは「ドキュメンタリー」、「伝記」、そして「ドラマ」の三つに分けられるだろう。その中で本作は「ドラマ」に分類されるが、“ロックドラマ”で僕が思い出すベストムービーは、「ストリート・オブ・ファイヤー」、「スクール・オブ・ロック」、そして「すべてをあなたに」の3本だ。いずれもフィクションで、音楽に対する情熱が主人公の背景にあり、音楽の持つ力がストーリーの重要な要素になっている。
 本作はALMOST FAMOUS(原題)なバンドの取材をすることになった15歳の少年の物語だ。メンバーの仲違いや、グルーピーとの関係を目撃しながら、少年は学校や家庭では教えてもらえない、ある重要なことを学んでいく。

 なにより主人公のウィリアムが初めてロックに触れるシーンがいい。ウィリアムは家出した姉から何枚もの名盤を譲り受けるが、そのアルバムのセンスがいいのだ。
 まず1枚目に出て来たのがビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」。ブライアン・ウィルソンがビートルズの「ラバーソウル」に影響を受けて作った畢生の名作だ。
 続いてストーンズのライブアルバム「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト」、「レッド・ツェッペリンⅡ」、ジミ・ヘンドリックス「アクシス・ボールド・アズ・ラブ」、「クリームの素晴らしき世界」、ジョニ・ミッチェル「ブルー」、ボブ・ディラン「ブロンド・オン・ブロンド」、そしてロック・オペラの金字塔、ザ・フーの「トミー」。
 このアルバムの中のどれか1枚でも自身のコレクションと一致したら、ウィリアムとの距離は一気に縮まる。そしてアナタは抜群にリズム感の良いダイアローグにロックと同じ心地よさを感じるはずだ。

 唯一残念なのは、ウィリアムが伝説的なロックライター(フィリップ・シーモア・ホフマン)に何故認められたのか、そのいきさつが丁寧に描かれていないこと。この納得感が得られないと、「そもそも15歳で音楽ジャーナリストなんてあり得ないでしょ?」という思いが頭から離れず、純粋に楽しめない可能性がある。
 繰り返すけれど、本作はキャメロン・クロウの体験を基に書かれた物語。だから、あながち嘘じゃないことを理解した上で観るのがいいだろう。
 上り調子にあるバンドのあらゆる角度から斬られたバックステージは、リアリティを損なわない程度の演出が効いていてかなり楽しめると思う。
 邦題は気に入らない。でも本編は気に入った。

あの頃ペニー・レインと デラックス・ダブルフィーチャーズ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: DVD

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