画家と庭師とカンパーニュ [2009年 レビュー]
「画家と庭師とカンパーニュ」(2007年・フランス) 監督:ジャン・ベッケル
あちこちのブログで何かと高評価を得ていた作品をようやく観る。
主演はダニエル・オートゥイユ。
もしもアナタが「ぼくの大切なともだち」を観ていたら、「ダニエルはまた自分勝手なマイペース男を演ってるの?」と思うはず。その通りです(笑)。
妻と別居するためパリを離れ、生まれ故郷のカンパーニュに戻ってきた画家の“キャンバス”。
住む古い家の庭に小さな菜園を作ろうと雇った庭師“ジャルダン”は、偶然にも小学校時代の同級生だった。2人はしばらく昔話に花を咲かせるが、やがて卒業後の人生に大きな隔たりがあることを知る。かつて都会に出たキャンバスと、田舎に残ったジャルダンは価値観の違いを認めながら友情を育んで行くが…。
前述通り「ぼくの大切なともだち」を観た人は多少中だるみを感じると思います。なぜなら主人公の性格付けが極めて似ていて、否応にも結末を想像させるから。
ただ救われるのは、僕たちの安易な想像を軽く裏切ってくれる結末が用意されていることです。僕自身、途中は完全にダレたんですけど、ふいにやってきたエンディングに思わず泣かされてしまいました。これは途中の伏線が見事に効いてましたね。
さて。ここから先はどうしてもプチネタバレになると思うので、観た方のみどうぞ。
それ以外の方。もし「ぼくの大切なともだち」を観てなかったら、この映画はオススメします。
観てる人は、一旦忘れて、観て下さい(笑)。
キャンバスの描く絵に、何の気なしに注文を付けるジャルダン。聞いていたキャンバスがイライラを爆発させる。実はそれは自分に対する怒りでもあった。
「本物の絵とは涙が出るほど感動的でわくわくするもんだ。そんな絵は僕には描けない」
全編穏やかな空気が流れる中、このシークエンスのキャンバスだけが妙にヒステリックに描かれています。この違和感は間違いなくエンディングに向けてのものですが、悪く言うとエンディングから逆算して無理やり作ったシーンとも取れて、個人的には不満が無いわけでもありません。
しかし、エンディングではもう一つ別の小さな伏線も効いていて、制限時間ギリギリで1本決められたような、ぐうの音も出ない感覚もありました。
ジャルダンを演じたジャン=ピエール・ダルッサンの枯れた演技が絶品。
キャンバスの教え子マグダを演じたアレクシア・バルリエは目の保養に。
ダニエル・オートゥイユはかつてのアル・パチーノを思わせる安定感があった。
出色だったのは効果音。
夏のカンパーニュの音が丁寧に作りこまれていて、野鳥の鳴き声や虫の羽音など自然豊かな表情が音から伝わって来たように思います。
いろんな意味でモチベーションが下がり気味な人へ。
佳作。
同感ですね~。「ぼくの大切なともだち」を観て1ヶ月経ってなかったから、またか・・・って感は否めませんでした。ま、オートゥイユ好きとしては、なにやってくれてもいいんですが。
ストーリーも、「ぼくの~」に比べると抑揚がなくて、ラストはよかったけれど中間はちょっとダレました。
ああいう隠居暮らしもいいですね。
by クリス (2009-08-18 07:14)
なんたって昼間っからワインを飲みながら絵を描くってところがいいよねw
憧れます。
それにしてもどうしてここまで似た作品に出ちゃったんだろう、オートゥイユ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-08-18 10:35)
庭師役のあの静かな脱力感がなんとも言えず印象的でした。
なんだか本当に演技なのかと思えるほどでした。
絵を評価する庭師の困った顔とか。。
横たわって畑の世話をする姿にはちょっとやられましたねぇ。。
by po-net (2009-08-22 23:56)
僕たちがフランス人俳優に馴染みが薄いからかも知れませんが、
ダルッサンの演技は本当に素晴らしかったと思います。
映画であることを忘れさせる、とはまさに彼のことだったなと。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-08-23 00:14)