インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア [2009年 レビュー]
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」(1994年・アメリカ) 監督:ニール・ジョーダン
映画は公開から年数を経て、ワインのように熟成する場合もあることを、最近いくつかのレビューで知った。ひとつはてくてくさんの「デイ・アフター・トゥモロー」。もうひとつはsatocoさんの「バットマン・ビギンズ」。お2人とも公開から時間を置いて観直してみたら面白味が増したり、味わいが変化した、といったことを書いておられた。
僕個人は一度観た映画を観直すことはなかなか無いのだけれど、「熟成」という観点で観直してみるのも、映画の愉しみ方のひとつとして悪くない。
そういう意味で言うと本作は、一度も開封しなかった94年物を今になって初めて開けるようなものだ。そもそも素材は偶然にも良かった。トム・クルーズ、ブラッド・ピット、アントニオ・バンデラス、クリスチャン・スレーター、そしてまだ幼かったキルスティン・ダンスト。初見である。当時の味は知らないが、15年後のいま開封するとどんな味がするのだろう。
吸血鬼伝説が浸透している国とそうでない国。ここが本作を受け入れられるか否かの境界線だと思う。たとえば「四谷怪談」は面白い話だが、それを欧米の人間が受け入れられるかどうかは、また別問題なのと同じだ。
序盤、ブラッド・ピット演じるルイは、ヴァンパイアになりながら人を殺すことを拒み、レスタト(トム・クルーズ)が“非常食”と呼ぶ動物の血で飢えを凌いでいる。日に何人も命を奪うレスタト。人間の心を残したルイにその行為は許されなかった。
ここまで観て僕は、「人間の心を残したヴァンパイアの苦悩」が本作のテーマなのかと思った。ところがドラマはさらなる展開をする。
人の血を飲まずに耐えていたルイだが、ある日出逢った幼い娘クローディア(キルスティン・ダンスト)の首に噛み付いてしまう。ふと我に返って動揺するルイ。レスタトはその様子を喜び、自らの血をクローディアに与え、ヴァンパイアとして蘇生させる。
実はヴァンパイアは、ヴァンパイアとして生まれ変わった瞬間から老いることがない。
数年後、クローディアは自らの容姿を呪うようになる。精神的な成長を果たした彼女は、大人の女の肉体が欲しいと騒ぎ立てるが、それは叶わない。
と、ここで僕は「不老不死を手に入れた者の不幸」が本作のメインテーマなのだな、と膝を打つ。しかし、ここから先の展開が何を意図するのか、僕には読めなかった。とにかく、あっちへふらふら、こっちへふらふらする映画なのだ。
特にオープニングから90分後、バンデラスが出て来てからは理解不能に陥った。
一体なにが言いたいのか?
15年前に素材は抜群と騒がれた94年ものの1本は、素材の良さを生かしきれずに瓶詰めされ、形にならずに崩壊した1本と言っていいかも知れない。特に日本人にこの味は分からないはず。飲み手を選ぶ1本。
映画は公開から年数を経て、ワインのように熟成する場合もあることを、最近いくつかのレビューで知った。ひとつはてくてくさんの「デイ・アフター・トゥモロー」。もうひとつはsatocoさんの「バットマン・ビギンズ」。お2人とも公開から時間を置いて観直してみたら面白味が増したり、味わいが変化した、といったことを書いておられた。
僕個人は一度観た映画を観直すことはなかなか無いのだけれど、「熟成」という観点で観直してみるのも、映画の愉しみ方のひとつとして悪くない。
そういう意味で言うと本作は、一度も開封しなかった94年物を今になって初めて開けるようなものだ。そもそも素材は偶然にも良かった。トム・クルーズ、ブラッド・ピット、アントニオ・バンデラス、クリスチャン・スレーター、そしてまだ幼かったキルスティン・ダンスト。初見である。当時の味は知らないが、15年後のいま開封するとどんな味がするのだろう。
吸血鬼伝説が浸透している国とそうでない国。ここが本作を受け入れられるか否かの境界線だと思う。たとえば「四谷怪談」は面白い話だが、それを欧米の人間が受け入れられるかどうかは、また別問題なのと同じだ。
序盤、ブラッド・ピット演じるルイは、ヴァンパイアになりながら人を殺すことを拒み、レスタト(トム・クルーズ)が“非常食”と呼ぶ動物の血で飢えを凌いでいる。日に何人も命を奪うレスタト。人間の心を残したルイにその行為は許されなかった。
ここまで観て僕は、「人間の心を残したヴァンパイアの苦悩」が本作のテーマなのかと思った。ところがドラマはさらなる展開をする。
人の血を飲まずに耐えていたルイだが、ある日出逢った幼い娘クローディア(キルスティン・ダンスト)の首に噛み付いてしまう。ふと我に返って動揺するルイ。レスタトはその様子を喜び、自らの血をクローディアに与え、ヴァンパイアとして蘇生させる。
実はヴァンパイアは、ヴァンパイアとして生まれ変わった瞬間から老いることがない。
数年後、クローディアは自らの容姿を呪うようになる。精神的な成長を果たした彼女は、大人の女の肉体が欲しいと騒ぎ立てるが、それは叶わない。
と、ここで僕は「不老不死を手に入れた者の不幸」が本作のメインテーマなのだな、と膝を打つ。しかし、ここから先の展開が何を意図するのか、僕には読めなかった。とにかく、あっちへふらふら、こっちへふらふらする映画なのだ。
特にオープニングから90分後、バンデラスが出て来てからは理解不能に陥った。
一体なにが言いたいのか?
15年前に素材は抜群と騒がれた94年ものの1本は、素材の良さを生かしきれずに瓶詰めされ、形にならずに崩壊した1本と言っていいかも知れない。特に日本人にこの味は分からないはず。飲み手を選ぶ1本。
こんばんは^^
お邪魔してビックリ!!
私の名前を記事の中に発見し、鼓動が速まりました。
嬉し恥ずかしいような、緊張感を味わっとります(笑)
ありがとうございます。
さて、「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」。
ずい分昔に観ました。
その時は妖艶なヴァンパイア絵巻に浸ったような記憶があります。
もう一度見てみようかな。
by てくてく (2009-11-14 00:46)
私も昔見ましたが、うーむ、と思いました。
驚いたのは萩尾望都の傑作コミック「ポーの一族」と良く似た話だったこと。
原作が書かれたのはほぼ同時期で奇妙な偶然ですね。
「ポーの一族」の方がずっと面白いですが。
by きさ (2009-11-14 08:39)
何が言いたいのかよくわからない映画ですよね。でもおっしゃるとおりバンデラスが出る前までは結構好きな映画です。うまく雰囲気作ってますよね。最後の方はまさに迷走していますが...
リバー・フェニックスが急逝しクリスチャン・スレーターが代役をしたのも、"美男子と死”の雰囲気を盛り上げていましたっけ。私がもともと「ポーの一族」や「吸血鬼ノスフェラトゥ」でヴァンパイアに対して好意的なイメージを持っていたからかもしれません。
ところでご紹介痛み入ります。てくてくさんのレビューを拝見したらとても読み応えがあり、私のはあんなんで、恥ずかしいです....
by satoco (2009-11-14 09:37)
>てくてくさん
無断リンク飛ばし、失礼致しました。
トムとブラピ、そしてバンデラスの妖艶なイケメンに見とれていると
ま、これはこれでいいか、ってことになるかも知れませんねw
時間を置くと「冷静になれる」というのもひとつのメリットかも。
nice!ありがとうございます。
>きささん
「ポーの一族」は有名ですが、まったく読んだことがありません。
そうですか、似てるんですか。面白そうですね。
萩尾望都さんの作品で読んだことあるの、「地球へ…」だけかなあ。
>satocoさん
お、satocoさんも「ポーの一族」ですね。
ブラピが十字架やにんにくの吸血鬼伝説を否定していく辺りは
くだらなくて好きなんですけど、「ヴァンパイア神話」が生まれたいきさつとか
何も知らない僕には、ちょっとついて行けない映画でした。
ところで、無断リンク飛ばし、申し訳ありません。
いいタイミングで、いい記事を読ませて頂きました!
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-11-14 09:48)
「地球へ…」は竹宮恵子さんですね。
萩尾望都さんは「ポーの一族」の一編をリアルタイムで雑誌で読んで以来のファンなので。
萩尾さんは「11人いる!」とか「トーマの心臓」とか「残酷な神が支配する」とか「イグアナの娘」とかです。
by きさ (2009-11-14 11:08)
ああ、そうでした。間違えましたw
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-11-14 11:15)
偶然にも,近々久しぶりに観ようかなと思っていた作品。
当時はミーハーで・・・今もやや,その傾向あるけど・・・笑
トムクルーズが好きだったのです。原作者はトムはイヤだと
言ってた作品ですよね,でも,トムは良かったよ~~と思ったのと,
キルスティン・ダンストが大人になりたいとダダこねるのが
かわいかったのです。
あれから10年以上経ってて,今はトムのことがあまり好きで
ないので・・・・ガッカリするかもしれないですね・・・
by rennka (2009-11-15 21:57)
トム・クルーズは少なくとも一時代、ハリウッドの中心にいた人物。
彼の作品そのものがハリウッドの歴史の1ページだと思います。
だから歴史を紐解くつもりで観れば、きっとガッカリすることは無いと思います。
ぜひリトライしてみて下さい。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-11-16 00:38)
トム・・ブラピに対抗して出たとしか思えません(笑)
どっちがインパクトあるかって・・トムの勝ちです。
だってハリウッドの中心は自分でなくてはならないのだから。
キルスティン・ダンスト・・あの執念深そうな目がいいですね
吸血鬼の世界なんだけど、とっても人間っぽい。葛藤や欲望が同じなんです。
ラストもいい。インタビューをとったクリスチャン・スレーターがこの世の話とは思えないニュースにドキドキしている。それを無残にいとも簡単にレスタトに喰われてしまう。人間には見えない。知るまでは見えないんです。あ~怖
この映画は94年。深作欣司の『忠臣蔵四谷外伝』も94年ですね
by spika (2009-11-20 23:25)
そう思うと、四谷怪談も改めて観たくなりますね。
by ken (2009-11-23 16:45)
ほんとうに・・!
この二つの作品が同じ時期に出ているのは非常にありがたい。
そしてタランティーノの『パルプ・フィクション』・『ナチュラル・ボーン・キラーズ』も94年なんです
監督も役者も爆発してる
(クリスチャン・スレーターは『トゥルーロマンス』が良かった)
この役者がこんな事したら面白いって引き出すのは監督のセンスですよね。また、観客はそれが見たいわけです
by spika (2009-11-25 19:28)
「ナチュラル…」はサントラだけ持ってて映画は観ていないという
僕的にも稀有なパターンです。いつか観よう。
監督のセンスって映画の完成度に大きく影響しますよね。
by ken (2009-11-26 00:06)