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太平洋戦争 謎の戦艦陸奥 [2009年 レビュー]

太平洋戦争 謎の戦艦陸奥」(1960年・日本) 監督:小森白

 wowowで新東宝の戦争映画特集をやっていたとき、タイトルの意味が分からなくて、つい見逃してしまった作品。調べてみたら戦艦陸奥は1943年6月8日、広島湾沖に停泊中爆発、沈没しており、その原因は今もって解明されていないという。つまりタイトルにある「謎」とは陸奥が爆沈した理由であり、映画はその謎に迫るものかと思って観てみたのだが…。

 これは陸奥の爆沈事件をモチーフにした完全なるフィクションだった。
 序盤は、ミッドウェー海戦に参加しながら、陸奥を温存したかった司令部の命により戦線離脱し、それを潔しとしない乗組員たちの葛藤が描かれていて、まずまずフツーの戦争映画している。
 ところが、しばらくのちサングラスをかけて葉巻を燻らすけったいな外国人スパイが出て来た瞬間に、「あ、こりゃ違うな」と確信。そこから本作は「陸奥を沈めようと画策する人たち」の群像劇へと形を変えるのだけれど、もちろん登場人物たちの背景はすべてがでっちあげ。でも僕はこれはこれで面白いなと思った。というのも、陸奥を沈めようとする理由が何らかの形ですべて「反戦」に繋がっていたからだ。
 
 例えば、将校クラブのマダム美佐子。彼女の父は陸奥の建築技師だった。ところが陸奥の設計図を敵に渡したと疑惑をかけられ、美佐子の父は銃殺されてしまった。海軍に恨みを持つ美佐子に戦艦陸奥は遺恨の対象でしかなく、陸奥の爆破を企む国際スパイ団の一員として陸奥の副長、伏見少佐(天知茂)に近づくのだ。
 ところがこの映画がハチャメチャなところは、ここから先にある。爆破計画のため伏見少佐に接近した美佐子だったが、いつの間にか伏見を愛してしまい、「伏見を戦地へやらないため」に改めて陸奥の爆破を決意するのだ。正直、「銃殺されたオヤジのことはもういいのか」、と言いたい(笑)。まあ動機がどっちに転んでも、「反戦」であることに変わりは無いから許されると言えば許されるのだが。

 それにしても同じ新東宝が製作した「戦艦大和」と比べると趣は大きく異なる。
 本作はあくまでも事実をモチーフにした、娯楽アクション映画として観るべし。事件からも公開からも時間が経ち過ぎているために、これがひとつの仮説と取られるのは大きな誤りである。
 ま、ベタな外国人スパイが登場するから大丈夫だとは思うのだが、念のために注意を促したい。これはあくまでも仮想戦記である。そう思ってみると、かなり笑える。でも今さら誰も観ないだろうな。

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