THIS IS IT [2009年 レビュー]
「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」(2009年・アメリカ) 監督:ケニー・オルテガ
休日とはいえ劇場はかなりの席が埋まっていた。
僕も含め、日本人はマイケル・ジャクソンが好きだ。いや世界中でそうなのかも知れない。驚いたのは随分と年配のお客さんもいたことだ。でもジャクソン5の頃からのファンならうなずける。ユナイテッドシネマ豊洲、スクリーン10。東京の端っこの劇場。ここの様子を観ただけマイケルの偉大さが分かるなんて、やっぱり只事じゃない。
映画を観ていて、いろんなことを考えた。
まずは、ついに捕まった英国人女性リンゼイさん殺害・死体遺棄事件の容疑者、市橋達也。
逃走のために整形手術を受けていた容疑者の顔は、およそ素人には見分けがつかない変貌を遂げていたが、マスコミはこぞって「顔は変えられても、声だけは変えられない」と市橋の声を繰り返し流していた。「はなみずき。夏には白い花を、秋には赤い実」(なんでこんな肉声を自分のPCに残していたのかすごく気になるんだけど、それはさておき)。この「いくら整形しても声だけは変えられない」説は、マイケルにも見事当てはまっていた。10年前、20年前と変わらない美しい声。あの「フォー!」も健在。僕はこの声を聴いた瞬間、「じゃあ、幻のロンドン公演はどんなステージだったんだろう」と俄然興味が沸いた。本編はその興味に応えてくれる111分である。
マイケルはショウを完成させようとしていた。
「皆が聞きたい曲を演る」と語るマイケルは過去の栄光を引きずる“往年のポップスター”に見えなくもなかったが、リハーサルにのぞむひたむきな姿勢を観ていると、僕たちがマイケルに何を望んでいたかがよく分かった。はっきり言って近年のマイケルは「ヘンな人」だった。少年に対するいたずら問題や、子どもをホテルの窓から突き出してみたり、そもそもどうして白くなっちゃったのかもよく分からない。世界中のマスコミはそれらをおもしろおかしく伝え、僕たちも注目して来たのだけれど、僕たちは心のどこかで、「音楽やれよ、マイケル」と思っていたのだ。本作に老若男女がわらわらと集まるのは、そういう背景があるからだろう。
一部は演出上、レコーディング音源がオーバーダビングされていると思う。中でも「スリラー」のリハーサルシーンはその施しが顕著だが、聴き応えがあるのはマイケルの地声である。ミキシングされていないマイケルのストレートヴォイスは、ライブでは絶対に堪能できない代物である。良くも悪くもこれこそ「LIVE」だと思った。それはまるでビートルズの「Let It Be...Naked」のようでもあった。
とは言うものの、所詮「ライブDVDの特典映像」レベルである。
観客に見せるべきは「ショウ」であって、「バックヤード」ではない。しかしショウは行われなかった。そしてリハーサルの映像だけが残った。本来なら見世物にならないはずの粗い画像。正直言って中だるみすると思う。僕は途中で眠くなってしまった。けれど本作には重要な意味がある。
僕は観ながら結果的に「マイケルの死」を実感した。なぜならマイケルが死んだからこそ、こんなものが表に出ることになったのだ。ブルース・リーの「死亡遊戯」と同じ。あのときも僕は、映画の完成度の低さから、稀代のアクションヒーローの死を実感したのだ。
幻のロンドン公演は、この映画を観た観客がベストなライブをイメージするといい。それはチケットを買えなかった人にも平等に与えられたマイケルからの贈り物である。
休日とはいえ劇場はかなりの席が埋まっていた。
僕も含め、日本人はマイケル・ジャクソンが好きだ。いや世界中でそうなのかも知れない。驚いたのは随分と年配のお客さんもいたことだ。でもジャクソン5の頃からのファンならうなずける。ユナイテッドシネマ豊洲、スクリーン10。東京の端っこの劇場。ここの様子を観ただけマイケルの偉大さが分かるなんて、やっぱり只事じゃない。
映画を観ていて、いろんなことを考えた。
まずは、ついに捕まった英国人女性リンゼイさん殺害・死体遺棄事件の容疑者、市橋達也。
逃走のために整形手術を受けていた容疑者の顔は、およそ素人には見分けがつかない変貌を遂げていたが、マスコミはこぞって「顔は変えられても、声だけは変えられない」と市橋の声を繰り返し流していた。「はなみずき。夏には白い花を、秋には赤い実」(なんでこんな肉声を自分のPCに残していたのかすごく気になるんだけど、それはさておき)。この「いくら整形しても声だけは変えられない」説は、マイケルにも見事当てはまっていた。10年前、20年前と変わらない美しい声。あの「フォー!」も健在。僕はこの声を聴いた瞬間、「じゃあ、幻のロンドン公演はどんなステージだったんだろう」と俄然興味が沸いた。本編はその興味に応えてくれる111分である。
マイケルはショウを完成させようとしていた。
「皆が聞きたい曲を演る」と語るマイケルは過去の栄光を引きずる“往年のポップスター”に見えなくもなかったが、リハーサルにのぞむひたむきな姿勢を観ていると、僕たちがマイケルに何を望んでいたかがよく分かった。はっきり言って近年のマイケルは「ヘンな人」だった。少年に対するいたずら問題や、子どもをホテルの窓から突き出してみたり、そもそもどうして白くなっちゃったのかもよく分からない。世界中のマスコミはそれらをおもしろおかしく伝え、僕たちも注目して来たのだけれど、僕たちは心のどこかで、「音楽やれよ、マイケル」と思っていたのだ。本作に老若男女がわらわらと集まるのは、そういう背景があるからだろう。
一部は演出上、レコーディング音源がオーバーダビングされていると思う。中でも「スリラー」のリハーサルシーンはその施しが顕著だが、聴き応えがあるのはマイケルの地声である。ミキシングされていないマイケルのストレートヴォイスは、ライブでは絶対に堪能できない代物である。良くも悪くもこれこそ「LIVE」だと思った。それはまるでビートルズの「Let It Be...Naked」のようでもあった。
とは言うものの、所詮「ライブDVDの特典映像」レベルである。
観客に見せるべきは「ショウ」であって、「バックヤード」ではない。しかしショウは行われなかった。そしてリハーサルの映像だけが残った。本来なら見世物にならないはずの粗い画像。正直言って中だるみすると思う。僕は途中で眠くなってしまった。けれど本作には重要な意味がある。
僕は観ながら結果的に「マイケルの死」を実感した。なぜならマイケルが死んだからこそ、こんなものが表に出ることになったのだ。ブルース・リーの「死亡遊戯」と同じ。あのときも僕は、映画の完成度の低さから、稀代のアクションヒーローの死を実感したのだ。
幻のロンドン公演は、この映画を観た観客がベストなライブをイメージするといい。それはチケットを買えなかった人にも平等に与えられたマイケルからの贈り物である。
マイケル・ジャクソン THIS IS IT デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- メディア: DVD
ナイス。ストレートな感想だと思います。伝わりました!
>「音楽やれよ、マイケル」わたしも、そう思いました。
by Betty (2009-11-12 11:42)
ミュージシャンが音楽やらなくてどーする!って感じでしたもんね。
良かった。伝わってw
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-11-12 12:22)
私はマイケル中毒なので
この映画を何回も見ちゃったし、泣いちゃったし・・・
by ecco (2009-11-12 20:36)
私も迷ったのですが、見ました。
冒頭で「マイケルと競演できるなんて」と涙を流すダンサーのインタビューを見て、でもこのステージは実現しなかったんだな、とフクザツな気持ちになりました。
映画を見て、ラストはこのステージを一緒に作り上げようとした彼らは幸せだったかも、と思いました。
by きさ (2009-11-12 22:05)
ファンというまででは無かったけど,やはり
マイケルの曲・ダンスは見るの好きでしたね。
そして最近は「どーなったのこの人」と思ってました。
・・・亡くなるまで。
亡くなって,どのテレビ局でも色々やってるのを見て,
この人は大変な・複雑な人生を送ったのだなーと。
苦しい想いをしたのだろうなーと,私も「ヘンな人」と
思ってたので,反省・・・
今,DVD何枚か欲しいナーとも思ってて。
珍しくダンナが,この映画観たいと言ってます。
by rennka (2009-11-12 23:29)
>eccoさん
中毒。分かります。特にダンスをやってる人たちにマイケルは神ですよね。
nice!ありがとうございます。
>きささん
目前でマイケルのリハーサルを観ていた彼らは、間違いなく神に撰ばれた
人たちだったと思います。
>rennkaさん
「スリラー」のおかげで、マイケルは誰も観たことの無い世界を覗いて
しまったのです。だから僕たちが理解できない行動に至ったのでしょうね。
複雑です。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-11-13 09:12)
こんにちは〜☆
私は映画を観て、いろんな事を自分と照らし合わせて
考えてしまいました、、、(^-^;
タイムリーで、ジャストフィット!な映画でした☆
先日、深夜の上映を観たんですが(AM1時上映開始)
満席!でした、、、すごい。。。
by ジジョ (2009-11-17 03:54)
マイケルの1曲1曲が、青春時代の思い出とオーバーラップします。
それにしてもレイトショーで満席とは、マイケルの人気、恐るべし!ですね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-11-17 15:04)
eccoさんご紹介で参上。76才のマイケル狂です。日本公演は2回とも(まだ若かったので・・)行きました。
マイケルに限らず、高校生の頃からの映画フリークです。お見知りおきを。
by okko (2009-11-18 10:39)
okkoさん、ようこそお越し下さいました。
ぜひ映画のお話もお聞かせ頂ければと思います。
これからもよろしくお願い致します。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-11-18 22:52)
今日観てきました。それほどマイケルには思い出もなにもないワタシ、ワタシのなかの「変な人」カテゴリーに入っていた彼が、実は正気だった、ということがわかりました。でも、kenさんがおっしゃるように、この公演は結局実現されなかったわけで・・・。複雑で、悲しい気持になってしまいました。パフォーマンスはすばらしかったですけどね。
by カオリ (2009-11-21 00:38)
実は正気だったんですよ~意外ですよねえw
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-11-23 16:49)
はじめまして。
遅まきながらトラックバックさせていただきました。
マイケルの全盛期ぎりぎり最後の方を知ってる世代としてはぜひ観なくては!!と思って観ましたけど…ホント最後に彼のこんな姿を見られて良かった。
きちんと細かいところまで推察されてて素敵な記事でした。
nice!
by movielover (2010-01-06 23:40)
movieloverさん、ようこそ。
ここにコメントを寄せてくださる方々の気持ちからも
マイケルの偉大さが分かります。本当に惜しい人を亡くしました。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-01-07 00:59)