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レッド・ドラゴン [2009年 レビュー]

レッド・ドラゴン」(2002年・アメリカ) 監督:ブレット・ラトナー

 「ハンニバル」を観てから、これもいつかと思っていたレクター3部作の1作目にあたる作品。
 いや、面白かった。
 これも「容疑者Xの献身」同様、原作の良さは出し切れていないだろうが
、サスペンス映画としては申し分ない。ストーリーとキャスティングという点においてはレクター3部作の中で本作が一番好きだ。

 まずキャスティング。
 主役2人のほかに、「スモーク」のハーヴェイ・カイテル、「イングリッシュ・ペイシェント」のレイフ・ファインズ、「パンチドランク・ラブ」のエミリー・ワトソン、そして「カポーティ」のフィリップ・シーモア・ホフマンが名を連ねる

 このキャスティング・バランスは絶妙だ。
 ときどき主役クラスの俳優が出ないシーンになると、途端にパワーダウンする作品があるけれど、本作のキャスティングはアンソニー・ホプキンスや、エドワード・ノートンが出ていないからと言って決して見劣りするシーンがない。誰と誰が2ショットになっても良い化学反応が起きていて、カットの隅々にまで力がみなぎっている感がある。実に素晴らしい。個人的にはハーヴェイ・カイテルである。相変わらず格好良くて参る。

 ストーリー。
 このシリーズは「幼少期の受け入れ難い経験が、人格の形成に大きな影響を与える」をテーマに登場人物の創造がされているが、本作の猟奇殺人犯については「同情の余地あり」なのがいい。殺人のディテールは相変わらず残忍だが(鏡の破片をそこに突っ込むのはやめて)、人と鬼畜との境目で揺れている様は実に見応えがあった。

 と言いつつ不満もあるのだ。これが(笑)。
 ストーリー上の時系列は1作目だが、公開順では3作目である。本作はそれを踏まえて「レクター博士の素性」を極端に排除した作りになっている。おかげで“つかみ”も抜群で、映画としては見事なテイクオフを果たすのだが、シリーズ初見の人には「なぜFBIはレクター博士に助言を求めに行くのか」が伝わり難いだろう。僕は「過去2作を観ていて当然」という製作者のおごりが気に入らなかった。
 合わせてもう一点。“猟奇殺人犯”のトラウマに関する描写も若干だが足りなかったように思う。が、ここは上映時間との闘いで止む無く割愛したものと思いたい。

 映画は「終わりよければすべて良し」でもある。
 本作のラストショットは巧かった。そして多くの人が再び「羊たちの沈黙」を観たことだろう。僕も確実にそうする。

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コメント 2

satoco

3部作の中で一番好きな映画です。一番面白かったのは「羊たちの沈黙」ですが、本作はレイフ・ファインズが切なくて切なくて。図書館で絵をほおばるシーンで泣いてしまいます。それにおっしゃるとおり実力派ぞろいの見応えが素晴らしい映画ですね。
原作はサスペンスとしてすごく面白いのですが、映画の方が詩情があります。
by satoco (2009-12-01 19:15) 

ken

作品のクオリティは「羊たちの沈黙」が一番だと思います。
でもsatocoさんが仰るとおり、本作はレイフ・ファインズが泣かせますね。
詩情ですか。なかなか使わない言葉だけに重みがあります。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-12-02 01:11) 

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