The Namesake [2010年 ベスト20]
「その名にちなんで」(2006年・アメリカ/インド) 監督:ミーラー・ナーイル
長く映画を観て来て確信したいくつかの定理の中に、「家族を描いた映画は面白い」がある。
映画のみならず小説や演劇、あるいは絵画まで含めたエンタテインメントはすべて「コミュニケーションの描写」に他ならない。「家族」はそのコミニュケーションの起点であり、終点である。
家族の物語は「普遍的でありながら、実は透明性に欠けている」という点も大きい。「これは家族の問題だから」と外野をシャットアウトする人を、あなたも目撃したことがあるだろう。
つまり家族とは“小さな国家”なのだ。
だから「家族」の数だけコミュニケーションの形があり、ルールがあり、秘密がある。「家族の物語」が面白い理由は、こういう背景があるからだ。本作もそんな1篇である。
アメリカの大学で学んでいたアショケは、コルカタに暮らす美しい娘アシマと見合い結婚をする。2人はニューヨークに住まいを構え、やがて長男が誕生。アショケは学生時代の“ある経験”から長男を「ゴーゴリ」と名付けた。ロシアの文豪ニコライ・ゴーゴリを由来にしていたが、やがて大学生になったゴーゴリは名前を嫌い、改名したいと言い始める…。
命名の由来を親からちゃんと聞いたことのある人はどれくらいいるんだろう。僕も記憶では1度だけある。ただあまりに遠い過去のことで、父から「あみだくじで決めた」とはぐらかされた記憶しか残っていない。
僕は18歳からすでに家を出て暮らした関係で、父との交流は決して濃密じゃなかった。
共に暮らした18年という時間を、離れて暮らした時間が追い越して22年になったとき、僕は父を亡くした。その瞬間にはじめて僕は「僕と出逢うまでの父の生涯」を知りたいと思った。もちろん後の祭り。それが叶わないと気付いたときには激しく後悔した。
そして今日。僕はせめて命名の由来だけでも聞いておけばよかったと思った。なぜなら本作が「名前は、親の子に対する気持ちが込められた最初にして最大の贈り物」と思い知る作品だったからだ。本作にこれ以上の解説はいらないと思う。
インド人の夫婦アショケとアシマの四半世紀に及ぶ物語である。
この長い年数をそれぞれ一人で演じきった2人の俳優が素晴らしい。ヘアメイクの力を借りてはいるが、その佇まいから見事な表現だった。
家族の歴史を辿った映画では、チャン・イーモウの「活きる」を彷彿とさせる。
異国で暮らす家族を描いた映画では、ジム・シェリダンの「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」を、また結婚をテーマにアイデンティティを語る映画は「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」を思い出させる。
やはり「家族」を描いた映画はおもしろい。
そして、まだ間に合う人はぜひ「命名」の由来の確認を。
長く映画を観て来て確信したいくつかの定理の中に、「家族を描いた映画は面白い」がある。
映画のみならず小説や演劇、あるいは絵画まで含めたエンタテインメントはすべて「コミュニケーションの描写」に他ならない。「家族」はそのコミニュケーションの起点であり、終点である。
家族の物語は「普遍的でありながら、実は透明性に欠けている」という点も大きい。「これは家族の問題だから」と外野をシャットアウトする人を、あなたも目撃したことがあるだろう。
つまり家族とは“小さな国家”なのだ。
だから「家族」の数だけコミュニケーションの形があり、ルールがあり、秘密がある。「家族の物語」が面白い理由は、こういう背景があるからだ。本作もそんな1篇である。
アメリカの大学で学んでいたアショケは、コルカタに暮らす美しい娘アシマと見合い結婚をする。2人はニューヨークに住まいを構え、やがて長男が誕生。アショケは学生時代の“ある経験”から長男を「ゴーゴリ」と名付けた。ロシアの文豪ニコライ・ゴーゴリを由来にしていたが、やがて大学生になったゴーゴリは名前を嫌い、改名したいと言い始める…。
命名の由来を親からちゃんと聞いたことのある人はどれくらいいるんだろう。僕も記憶では1度だけある。ただあまりに遠い過去のことで、父から「あみだくじで決めた」とはぐらかされた記憶しか残っていない。
僕は18歳からすでに家を出て暮らした関係で、父との交流は決して濃密じゃなかった。
共に暮らした18年という時間を、離れて暮らした時間が追い越して22年になったとき、僕は父を亡くした。その瞬間にはじめて僕は「僕と出逢うまでの父の生涯」を知りたいと思った。もちろん後の祭り。それが叶わないと気付いたときには激しく後悔した。
そして今日。僕はせめて命名の由来だけでも聞いておけばよかったと思った。なぜなら本作が「名前は、親の子に対する気持ちが込められた最初にして最大の贈り物」と思い知る作品だったからだ。本作にこれ以上の解説はいらないと思う。
インド人の夫婦アショケとアシマの四半世紀に及ぶ物語である。
この長い年数をそれぞれ一人で演じきった2人の俳優が素晴らしい。ヘアメイクの力を借りてはいるが、その佇まいから見事な表現だった。
家族の歴史を辿った映画では、チャン・イーモウの「活きる」を彷彿とさせる。
異国で暮らす家族を描いた映画では、ジム・シェリダンの「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」を、また結婚をテーマにアイデンティティを語る映画は「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」を思い出させる。
やはり「家族」を描いた映画はおもしろい。
そして、まだ間に合う人はぜひ「命名」の由来の確認を。
名前の由来は是非聞いておくといいですね。
自分が祝福されて生まれてきた、ということが、よくわかる気がします。
家族はコミュニケーションの起点、同意です。
by Sho (2010-01-30 09:39)
そうですね。僕にとっては生涯最大の後悔かも知れません。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-01-30 11:41)
とても静かで、心に沁み入る作品でした。
名前は両親が我が子に最初に与える一生モノのプレゼントですからね〜。
by カオリ (2010-01-30 16:48)
僕も今年の夏に父親になるので、いろんなことを考えました。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-01-30 21:18)
ずいぶん前に本を読みました。ジュンパ・ラヒリの作品は読んだ後の
後味が好きです。しかし彼らの絆の深さに驚かされますねぇ。。
映画はどうなのかと少し迷ったのですが、DVDの予約リストに
いれました。楽しみです。
by po-net (2010-01-30 21:40)
原作ファンには多少の不満があるかも知れませんが、佳作だと思います。
po-netさんのレビューも楽しみです。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-01-30 23:48)
再びおじゃまします。やっとDVDが届きました。
映画を見つつストーリーを思い出す感じでしたから、ほぼ原作に
忠実に作られた映画なのだと思います。やはりいいお話しですね。
本を読んだイメージよりアシマもアショケも素敵でした。
やはり原作の方が一族の絆やゴーゴリの葛藤が濃厚に描かれていて
深みがありますが、それは仕方ないでしょうね。
ゴーゴリ役の俳優がDR.HOUSEの風変わりな医師役で、そのイメージが
強くて違和感がありましたけど、途中から話に引き込まれました。
やはり家族のお話しは面白いです。そしてアイデンティティーの問題
は複雑ですね。
by po-net (2011-02-12 10:25)
さすがに原作の壁は越えられないと思います。
それは仕方ないにしても、よく出来た家族の映画だったと思います。
再びお越し頂きありがとうございました。
by ken (2011-02-13 02:07)