空気人形 [2010年 レビュー]
「空気人形」(2009年・日本) 監督・脚本:是枝裕和
本物のアカデミー賞と違って、日本アカデミー賞はなんとも見どころの薄いイベントである。
初めて見たのがいつだったか記憶にないが、アメリカと日本とではどうしてこんなにも違うんだろうと幻滅した記憶はある。だから日本アカデミー賞の放送はいつも横目でちらちら見る程度だった。
今年も仕事をしながら、見るでなく聞くようにチェックしていたのだが、主演女優賞の段になって耳と目を疑うことがあった。優秀主演女優賞の中にペ・ドゥナの名前とその姿があったからである。
壇上に上がったのは次の5人だった。
綾瀬はるか (おっぱいバレー)
広末涼子 (ゼロの焦点)
松たか子 (ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~)
ペ・ドゥナ (空気人形)
宮崎あおい (少年メリケンサック)。
外国人がノミネートされるのは1993年のルビー・モレノ(月はどっちに出ている)以来2人目。ただしルビー・モレノは日本で活動していたタレントであるから、外国人俳優がノミネートされるのは実質初と言っていいだろう。
ペ・ドゥナが壇上にいる姿は感動的だった。日本映画界と言う閉鎖的なコミニュティの式典に韓国人女優が参加しているのだ。さらに、ここでもし日本人が韓国人に主演女優賞を与えたら、歴史的な快挙だと思った。僕は仕事の手を止め、是非ともそうなって欲しいと願ったが、残念ながら叶わなかった。それでもペ・ドゥナの表情は晴れやかだった。
ペ・ドゥナファンにとって「空気人形」は衝撃の映画である。
僕はこれまで彼女のことを「可愛らしい」と思ったことはあるけれど、「いい女」だと思ったことはなかった。そんな印象があるからか、性欲処理のためにある“空気人形”が心を持ってしまうハナシと知りながら、彼女がここでヌードを披露するとは思いもしなかった。
動揺した。動揺したけれど、すぐさま「今までにない美しさ」を感じた。それは「触れてみたい」という種の感情ではなく、「所有したい」という感情に近い。理解してもらえないかも知れないが、まるで「温もりのある彫刻」のようで、そんなアートがあるなら是が非でも手に入れたいと思うほどの美しさだった。撮影監督は「花様年華」のリー・ピンビン。感服。さすがとしか言いようがない。
これは大人の童話である。
ダッチワイフが心を持つ段階で整合性は崩壊しているから、観客はあらゆることを受け入れるだろう。僕はレンタルビデオ屋の店員・純一(ARATA)の振る舞いを見ていて、心が解放される感覚を得た。なぜなら「偏見さえ無くせばこの世は限りなく穏やか」であることを教えられたからだ。
もちろん「心を失いつつある人間たち」への皮肉もたっぷりとこめられている。“空気人形”の周辺で生きる人たちを考察するだけでも見応えがある。
ペ・ドゥナファンにとって「空気人形」は宝物のような映画である。
僕たちもまったく気付かなかったペ・ドゥナの新境地がここにある。何より圧倒的に美しい。
思えば、彼女が日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を逃しても、失意の欠片も感じさせなかった理由は作品そのものにあったのだろう。是枝裕和とリー・ピンビンによって引き出された女優としての新たな一面が、何にも勝る達成感と満足感を彼女に与えたに違いない。
ペ・ドゥナのベスト・ムービー。
本物のアカデミー賞と違って、日本アカデミー賞はなんとも見どころの薄いイベントである。
初めて見たのがいつだったか記憶にないが、アメリカと日本とではどうしてこんなにも違うんだろうと幻滅した記憶はある。だから日本アカデミー賞の放送はいつも横目でちらちら見る程度だった。
今年も仕事をしながら、見るでなく聞くようにチェックしていたのだが、主演女優賞の段になって耳と目を疑うことがあった。優秀主演女優賞の中にペ・ドゥナの名前とその姿があったからである。
壇上に上がったのは次の5人だった。
綾瀬はるか (おっぱいバレー)
広末涼子 (ゼロの焦点)
松たか子 (ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~)
ペ・ドゥナ (空気人形)
宮崎あおい (少年メリケンサック)。
外国人がノミネートされるのは1993年のルビー・モレノ(月はどっちに出ている)以来2人目。ただしルビー・モレノは日本で活動していたタレントであるから、外国人俳優がノミネートされるのは実質初と言っていいだろう。
ペ・ドゥナが壇上にいる姿は感動的だった。日本映画界と言う閉鎖的なコミニュティの式典に韓国人女優が参加しているのだ。さらに、ここでもし日本人が韓国人に主演女優賞を与えたら、歴史的な快挙だと思った。僕は仕事の手を止め、是非ともそうなって欲しいと願ったが、残念ながら叶わなかった。それでもペ・ドゥナの表情は晴れやかだった。
ペ・ドゥナファンにとって「空気人形」は衝撃の映画である。
僕はこれまで彼女のことを「可愛らしい」と思ったことはあるけれど、「いい女」だと思ったことはなかった。そんな印象があるからか、性欲処理のためにある“空気人形”が心を持ってしまうハナシと知りながら、彼女がここでヌードを披露するとは思いもしなかった。
動揺した。動揺したけれど、すぐさま「今までにない美しさ」を感じた。それは「触れてみたい」という種の感情ではなく、「所有したい」という感情に近い。理解してもらえないかも知れないが、まるで「温もりのある彫刻」のようで、そんなアートがあるなら是が非でも手に入れたいと思うほどの美しさだった。撮影監督は「花様年華」のリー・ピンビン。感服。さすがとしか言いようがない。
これは大人の童話である。
ダッチワイフが心を持つ段階で整合性は崩壊しているから、観客はあらゆることを受け入れるだろう。僕はレンタルビデオ屋の店員・純一(ARATA)の振る舞いを見ていて、心が解放される感覚を得た。なぜなら「偏見さえ無くせばこの世は限りなく穏やか」であることを教えられたからだ。
もちろん「心を失いつつある人間たち」への皮肉もたっぷりとこめられている。“空気人形”の周辺で生きる人たちを考察するだけでも見応えがある。
ペ・ドゥナファンにとって「空気人形」は宝物のような映画である。
僕たちもまったく気付かなかったペ・ドゥナの新境地がここにある。何より圧倒的に美しい。
思えば、彼女が日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を逃しても、失意の欠片も感じさせなかった理由は作品そのものにあったのだろう。是枝裕和とリー・ピンビンによって引き出された女優としての新たな一面が、何にも勝る達成感と満足感を彼女に与えたに違いない。
ペ・ドゥナのベスト・ムービー。
こんばんは。
この作品、評価高いですよね。こんな筋書きとは知らなかったです。
でもおもしろそうですね。それにオダジョーもでてるみたいだから、
観てみるつもりです。
by coco030705 (2010-04-06 23:45)
kenさんのこのレビューを拝読し、俄然興味が湧きました。
そして予告編をyoutubeで見て、次に公式サイトを訪れて、どうしても見たくなりました。こういう気持ちは久しぶりです。
まだ映画を見ていないのに、空気人形がたまらなく愛しくなっています。
早く見たいと思います。
ご紹介くださって、ありがとうございます。
by Sho (2010-04-07 07:28)
>coco030705さん
オダジョーがまたいい役なんですよ~w
ぜひ観てあげて下さい!
nice!ありがとうございます。
>Shoさん
ペ・ドゥナがいたから完成した映画だと思います。
彼女の素晴らしい演技に注目してください。
by ken (2010-04-07 10:35)
ペ・ドゥナ良いですね。
劇場公開jに観に行こうと思いましたが妻の反対にあって
「母の証明」を観ました(汗)
by silvercopen (2010-04-07 21:29)
DVDをレンタルして、独りでこっそり愉しんでくださいw
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-04-08 00:04)
観ました。
ペ・ドゥナは本当に可愛かったですね。
彼女は「復讐者に哀れみを」に出ていた人なんですね。ずいぶん感じが変わっていたと思いました。
by Sho (2010-04-10 11:06)
ペ・ドゥナは映画によってコロコロ変わる、モデルのような人です。
逢ってみたいなあ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-04-10 11:59)
こんばんは。観ましたので、TBさせていただきます。
by coco030705 (2010-04-25 00:12)
はい。
by ken (2010-04-26 13:28)
ペ・ドゥナさん、
本当に素晴らしいですネ☆
by u_yasu (2010-05-09 19:44)
僕のミューズです。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-05-10 01:39)
やっとみました。
ぺ・ドゥナの素晴らしさに、原作ファンの私もただただ驚きと感動でした。
いい作品ですね。
by satoco (2011-04-29 23:46)
是枝監督の演出力に改めて驚かされた1本でした。
そして、ペ・ドゥナをキャスティングしたセンスにも驚きました。
以前、wowowで放送されたのを録画して、また観ましたが
やっぱり良かったです。
nice!ありがとうございます。
by ken (2011-05-01 22:29)