NINE [2010年 ベスト20]
「NINE」(2009年・アメリカ) 監督:ロブ・マーシャル
ミュージカル映画はまずサウンドトラックを聴いてから劇場に行くに限る。
そうするとすべてが知った曲に聞こえるからすごく馴染みやすい。僕は「シカゴ」のサントラを5年近くヘビロテした人間なので、「NINE」もロブ・マーシャルの新作と聴いてすぐさまサントラを買い、何度か聴いてから劇場に行った。結果は大満足。詳細は後述。
ところで、この作品については興味深いデータがある。
「NINE」はアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞、放送映画批評家協会賞において、合わせて20部門でノミネートされながら無冠に終わるという珍しい記録を作ったのだ。
アカデミー賞受賞監督による2作目のミュージカル作品。
2度のトニー賞に輝く大ヒットミュージカルの初映画化。
アカデミー賞受賞、あるいはノミネート女優たちの夢の競演。
投票してもなんら恥ずかしくない作品である。なのに票は集まらなかった。
なぜか。
アメリカでは興行的に大コケしたからだ。
製作費8千万ドル(約74億円)に対し、アメリカ国内の興行収入は2千万ドル弱(約18億円)。2009年の全米興収ランキングは520作品中、110位だった。
どうしてコケたのかまでは分からない。けれど「ネタ枯れになってしまった映画監督のハナシ」なんて今の時代にそぐわないということか。映画監督だからって冴えない中年男がモテモテなのは、そりゃ僕だって気分が悪い。妻はマリオン・コティヤール(超カワイイ!)、愛人はペネロペ・クルス(超エロい!)、ミューズはニコール・キッドマン(スゲー貫禄!)、そしてモーションをかけてくるのはケイト・ハドソン。ま、ケイトはアンパンマンみたいな顔だったから別にいいけど(笑)、こんな設定を「薄っぺらい映画」だとアメリカ人は思ったのかも知れない。「俺たちはそれどころじゃないよ」と。「現実を観ろよ」と。
けれど僕は終始ゾクゾクしていた。
ゴージャスなキャスト。美しいロケーション。心に届く楽曲。そして皮肉の利いたセリフ少々…。
よろしい。アメリカの映画人が評価しないなら、日本人客の僕が評価する。
「THAT'S MOVIE. これは間違いなく一級のミュージカル映画です」
オープニング。
「オーバーチュア・デル・ドンネ」に合わせて、まさか主要キャストが全員登場するとは思いもしなかった。驚くと同時に、あんぐりと空いた口から何が出て来そうなくらいの胸騒ぎがする。怖い。でも観たい。レールとクレーンを駆使したショットの積み重ねが美しい。「シカゴ」を彷彿とさせる映像。カメラマンはロブ・マーシャルの盟友ディオン・ビープ。ステージを撮らせると本当に巧い。
さらに感心するのは編集の妙である。
現実と非現実の繋ぎ方。モノクロームとカラーの使い分け方。そして芝居から歌への移行を違和感なく見せるシーンの作り方。
ロブ・マーシャルは天才だと思う。
そして往年のミュージカル映画を観て「芝居の途中で突然歌い出すから嫌い」になってしまった人たちにも、「これなら大丈夫」と言わせるだけの作品に仕上がっていると思う。これぞ21世紀のミュージカルの作り方。ロブ・マーシャル式がスタンダードになるといい。
先のキャストに加えて、ファーギー、ジュディ・デンチ、ソフィア・ローレンも名を連ねる。
こんなことがあっていいのか?
盆と正月とクリスマスと感謝祭が一緒にやって来たような、まさにお祭り状態である。その中心にいるのがダニエル・デイ=ルイス。当初はハビエル・バルデムがグイド役をやる予定だったと聞いたが、いやいやハビエルだったら僕は観なかったかも知れない。ソフィア・ローレンとの親子役はハマっただろうが、以外はきっとノー天気に見えたと思う。浮き沈みを味わう映画監督役にはダニエルが向いている。とにかく味があって良かった。でもタバコは吸い過ぎ(笑)。「オール・ザット・ジャズ」のロイ・シャダーを思い出してしまった。
さて、ミュージカル映画には大抵の場合、オリジナルの舞台が存在する。先に書いたとおり「NINE」もしかり。だから評価されるべきはオリジナルであって、映画版ではないという意見があってもおかしくない。
しかし本作の場合は、映画版だからこそ評価されるべき点がある。
実はケイト・ハドソン演じるヴォーグ社の記者ステファニーは、映画オリジナルのキャラクターで、彼女が歌う「シネマ・イタリアーノ」はオリジナル舞台で作詞作曲を担当したモーリー・イェストンが、映画のために書き下ろした新作なのだ。この楽曲はTVスポットでも使われるほどインパクトの強い曲に仕上がっていて、この曲のあるなしで映画の雰囲気はずいぶん違っていただろう。僕はオリジナル舞台にこの曲が無いと知って、舞台版を観る気が完全に失せてしまった。
そのオリジナル舞台はフェデリコ・フェリーニの映画「8 1/2」が原作なのだそうだ。
一度トライして挫折した映画である。やっぱり観なきゃマズイか。
ミュージカル映画はまずサウンドトラックを聴いてから劇場に行くに限る。
そうするとすべてが知った曲に聞こえるからすごく馴染みやすい。僕は「シカゴ」のサントラを5年近くヘビロテした人間なので、「NINE」もロブ・マーシャルの新作と聴いてすぐさまサントラを買い、何度か聴いてから劇場に行った。結果は大満足。詳細は後述。
ところで、この作品については興味深いデータがある。
「NINE」はアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞、放送映画批評家協会賞において、合わせて20部門でノミネートされながら無冠に終わるという珍しい記録を作ったのだ。
アカデミー賞受賞監督による2作目のミュージカル作品。
2度のトニー賞に輝く大ヒットミュージカルの初映画化。
アカデミー賞受賞、あるいはノミネート女優たちの夢の競演。
投票してもなんら恥ずかしくない作品である。なのに票は集まらなかった。
なぜか。
アメリカでは興行的に大コケしたからだ。
製作費8千万ドル(約74億円)に対し、アメリカ国内の興行収入は2千万ドル弱(約18億円)。2009年の全米興収ランキングは520作品中、110位だった。
どうしてコケたのかまでは分からない。けれど「ネタ枯れになってしまった映画監督のハナシ」なんて今の時代にそぐわないということか。映画監督だからって冴えない中年男がモテモテなのは、そりゃ僕だって気分が悪い。妻はマリオン・コティヤール(超カワイイ!)、愛人はペネロペ・クルス(超エロい!)、ミューズはニコール・キッドマン(スゲー貫禄!)、そしてモーションをかけてくるのはケイト・ハドソン。ま、ケイトはアンパンマンみたいな顔だったから別にいいけど(笑)、こんな設定を「薄っぺらい映画」だとアメリカ人は思ったのかも知れない。「俺たちはそれどころじゃないよ」と。「現実を観ろよ」と。
けれど僕は終始ゾクゾクしていた。
ゴージャスなキャスト。美しいロケーション。心に届く楽曲。そして皮肉の利いたセリフ少々…。
よろしい。アメリカの映画人が評価しないなら、日本人客の僕が評価する。
「THAT'S MOVIE. これは間違いなく一級のミュージカル映画です」
オープニング。
「オーバーチュア・デル・ドンネ」に合わせて、まさか主要キャストが全員登場するとは思いもしなかった。驚くと同時に、あんぐりと空いた口から何が出て来そうなくらいの胸騒ぎがする。怖い。でも観たい。レールとクレーンを駆使したショットの積み重ねが美しい。「シカゴ」を彷彿とさせる映像。カメラマンはロブ・マーシャルの盟友ディオン・ビープ。ステージを撮らせると本当に巧い。
さらに感心するのは編集の妙である。
現実と非現実の繋ぎ方。モノクロームとカラーの使い分け方。そして芝居から歌への移行を違和感なく見せるシーンの作り方。
ロブ・マーシャルは天才だと思う。
そして往年のミュージカル映画を観て「芝居の途中で突然歌い出すから嫌い」になってしまった人たちにも、「これなら大丈夫」と言わせるだけの作品に仕上がっていると思う。これぞ21世紀のミュージカルの作り方。ロブ・マーシャル式がスタンダードになるといい。
先のキャストに加えて、ファーギー、ジュディ・デンチ、ソフィア・ローレンも名を連ねる。
こんなことがあっていいのか?
盆と正月とクリスマスと感謝祭が一緒にやって来たような、まさにお祭り状態である。その中心にいるのがダニエル・デイ=ルイス。当初はハビエル・バルデムがグイド役をやる予定だったと聞いたが、いやいやハビエルだったら僕は観なかったかも知れない。ソフィア・ローレンとの親子役はハマっただろうが、以外はきっとノー天気に見えたと思う。浮き沈みを味わう映画監督役にはダニエルが向いている。とにかく味があって良かった。でもタバコは吸い過ぎ(笑)。「オール・ザット・ジャズ」のロイ・シャダーを思い出してしまった。
さて、ミュージカル映画には大抵の場合、オリジナルの舞台が存在する。先に書いたとおり「NINE」もしかり。だから評価されるべきはオリジナルであって、映画版ではないという意見があってもおかしくない。
しかし本作の場合は、映画版だからこそ評価されるべき点がある。
実はケイト・ハドソン演じるヴォーグ社の記者ステファニーは、映画オリジナルのキャラクターで、彼女が歌う「シネマ・イタリアーノ」はオリジナル舞台で作詞作曲を担当したモーリー・イェストンが、映画のために書き下ろした新作なのだ。この楽曲はTVスポットでも使われるほどインパクトの強い曲に仕上がっていて、この曲のあるなしで映画の雰囲気はずいぶん違っていただろう。僕はオリジナル舞台にこの曲が無いと知って、舞台版を観る気が完全に失せてしまった。
そのオリジナル舞台はフェデリコ・フェリーニの映画「8 1/2」が原作なのだそうだ。
一度トライして挫折した映画である。やっぱり観なきゃマズイか。
個人的にはお話はどうでもいいような、、
恵まれた映画監督の悩みなんて知ったこっちゃないよな、と思いました。
配役はすごいですね。
ミュージカルシーンとしては、ファーギーとケイト・ハドソンの部分が良かったと思いました。
ペネロペ・クルスやニコール・キッドマンやジュディ・デンチも歌い踊りますが、どちらかというと俳優としての演技の方が印象的。
いや特にペネロペ・クルスの踊りは楽しいのですが。
マリオン・コティヤールは歌うまいですね。
この映画は楽しく見ましたが、ちょっと超豪華かくし芸大会を見た様な気もしました。
by きさ (2010-04-20 05:39)
マリオン・コティヤールは歌より何より、とにかく可愛かったです。
そう思うと「エディット・ピアフ」はすごいメークでした。
かくし芸大会…nice!です。
by ken (2010-04-20 15:52)
こんばんは。
マリオン・コティヤール、よかったですね。私もこの人が好きです。「エディット・ピアフ」以来、意識して観ています。
他の女優さん達もすごく素敵でした。なんと豪華な映画だったことでしょう。
アカデミーや様々な賞で無冠だったとは知りませんでした。大変残念なことだと思います。
TBさせていだだきます。
by coco030705 (2010-04-20 22:35)
ありゃ~~,私も「薄っぺらい映画」だと思って
興味なしでした。俳優陣はスゴイな~と思ってたけど。
もう金曜日までしかやってない・・・・
ぜひ映画館で観るべきでしたね・・・・
by 漣花 (2010-04-20 22:53)
余談ですが・・・
kenさんのタイトルのサブタイトル??
時々変化してますね。
この前は「死ぬかも」だったのに,
やめたのですね(笑)
by 漣花 (2010-04-20 22:55)
>coco030705さん
ミュージカル映画マニアには、素晴らしい作品だったと思いますね。
そして、マリオンLOVE、ですw
気が狂うくらい可愛かった!
nice!ありがとうございます。
>漣花さん
ま、DVDでもいいと思いますよ。ただし大画面でw
ところで、ブログ紹介文までチェックしていただいてありがとうございます。
ずっと「さすらいもしないで、このまま死なねえぞ」という民生の歌詞を
使っていましたが、ある時期とにかく忙しくて、さすらうまもなく、このまま
死ぬかもなあと思ったので、「死ぬかも」にしていました。
でも、一段落着いたので、元の歌詞に戻していますw
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-04-21 01:20)
面白くて10回以上見てしまったわ。
本質から外れますが、クレーンワークと手持ちショットの
コマ落としがとても上手でした。
by うろごつはくば (2010-04-24 22:46)
10回観る気持ち、分かります。
早くDVD出ないかしらん。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-04-26 13:28)
こんにちは。
歌も映像も素敵でした~!十分見応えのある作品でしたよね。
何でアメリカではダメだったのでしょう(^_^;)
早くDVDにならないかなあと待ってます☆
by non_0101 (2010-05-02 11:38)
僕もブルーレイになったらゼッタイ買います。
そもそもミュージカル映画ってなかなか当たらないんですよね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-05-02 11:42)
NINE、8 1/2好きな人にはいまいち受けが悪いので、ちょっとためらってましたが、
kenさんのレビュー読んでやっぱり行こうと思いました。
シカゴを楽しめた私なら(しかもDVDも持ってます)楽しめるかなと思います。
観たらレビューしますね。
by movielover (2010-05-06 01:08)
逆に僕は「8 1/2」がダメだったので、本作は良かったのでしょうか?w
レビュー楽しみにしています。
by ken (2010-05-06 21:03)
こんにちは、初めまして^^NINE最高でした。一回目はストーリーにあれっ?って思ったけど、日にちがたつとまた見たい気持ちが大きくなって。2回見て最高のミュージカルだと思いました。わたし的にオペラ座の怪人と張る。NINEは女性の愛が余すところなく描かれていると思います。DVD化が待ち遠しい。
by Cecilia (2010-05-30 10:48)
Ceciliaさん、ようこそ。
僕も「オペラ座の怪人」は大好きなミュージカル映画です。
それにしてもロブは明らかに「NINE」で「シカゴ」を越えようとしていましたよね。
その気持ちが分かるから、なおさら「つまらない」なんて思わないんです。
だってすごく頑張って作ってるもん(笑)。僕もブルーレイが待ち遠しいです。
by ken (2010-05-30 23:43)