(500)日のサマー [2010年 ベスト20]
「(500)日のサマー」(2009年・アメリカ) 監督:マーク・ウェブ
このタイトル。暑さに弱い妻は「500日も夏が続く映画ならゾッとする」と真顔で語ったが、もちろんそんな映画じゃない。これはサマーという名の女の子と恋に落ちる青年トムの物語。表面上は恋愛映画。ただしその実態は違う。
恋愛映画はそのほとんどが時系列で構成される。
仮に結末が冒頭に置かれたにせよ、本編はその結末に辿り着くプロセスを時系列で描くのが順当である。具体的には主人公の日常を追いかけながらエピソードを積み重ね、主人公の感情のうねりを観客に伝える。
本作の場合、サマーの心情には深く触れることなく、トムの一喜一憂だけがひたすら描かれるが、もちろんそんな作品もゴマンとある。韓国映画の傑作「猟奇的な彼女」もその典型だ。
ただし本作が他の恋愛映画と決定的に違うのは、時間軸を大きく前後させ、しかもエピソードがかなり断片的である点だ。一般的な恋愛ドラマが1から10まで順を追った連続するエピソードで構成されているとすれば、「(500)日のサマー」は1、9、3、7、10と言った不規則な飛び石状態なのである。
一体なぜか。それは本作が「恋愛映画」ではないからだ。
これは一人の平凡な青年の、一目ぼれから始まる恋愛をサンプルに、「運命の出会い」がこの世に存在するのか否かを考える「恋愛論映画」なのである。
この映画では恋愛論を展開するために必要最低限のエピソードが抽出され、恋愛論のために時系列は無視される。そしてストーリーテラーが存在するのは、観客に恋愛論を語るためである。
良く出来ていたと思う。
恋愛の甘い部分と苦い部分がうまく出ていて、まもなく子どもが産まれる47歳のオッサンにも充分愉しめた。
僕に言わせるなら恋愛とは、「時に憎悪にまで発展する『嫌い』という感情を生む種」である。男も女も一旦愛した相手だからこそ、裏切られたときに怨む。それは興味のない人間に対しては絶対に芽生えない感情なのだ。
そんな恋愛論をぶちたくなる小さなエピソードが本作には満載されている。それらは観客の“恋愛経験値”によって、クスッと笑えたり、ブスッと胸を刺されたりするだろう。僕は20年まえの嫌な記憶がよみがえって心が痛かった。
サマーを演じたゾーイ・デシャネルが文句なく可愛い。
彼女に一目ぼれした男性の観客は、完全に疑似恋愛をすると思う。サマーとの恋の行方はどうあれ、未婚の男子はエンディングで、ちょっとした勇気をもらうはず。男女の友達同士で観るのもきっと楽しい。
佳作。
このタイトル。暑さに弱い妻は「500日も夏が続く映画ならゾッとする」と真顔で語ったが、もちろんそんな映画じゃない。これはサマーという名の女の子と恋に落ちる青年トムの物語。表面上は恋愛映画。ただしその実態は違う。
恋愛映画はそのほとんどが時系列で構成される。
仮に結末が冒頭に置かれたにせよ、本編はその結末に辿り着くプロセスを時系列で描くのが順当である。具体的には主人公の日常を追いかけながらエピソードを積み重ね、主人公の感情のうねりを観客に伝える。
本作の場合、サマーの心情には深く触れることなく、トムの一喜一憂だけがひたすら描かれるが、もちろんそんな作品もゴマンとある。韓国映画の傑作「猟奇的な彼女」もその典型だ。
ただし本作が他の恋愛映画と決定的に違うのは、時間軸を大きく前後させ、しかもエピソードがかなり断片的である点だ。一般的な恋愛ドラマが1から10まで順を追った連続するエピソードで構成されているとすれば、「(500)日のサマー」は1、9、3、7、10と言った不規則な飛び石状態なのである。
一体なぜか。それは本作が「恋愛映画」ではないからだ。
これは一人の平凡な青年の、一目ぼれから始まる恋愛をサンプルに、「運命の出会い」がこの世に存在するのか否かを考える「恋愛論映画」なのである。
この映画では恋愛論を展開するために必要最低限のエピソードが抽出され、恋愛論のために時系列は無視される。そしてストーリーテラーが存在するのは、観客に恋愛論を語るためである。
良く出来ていたと思う。
恋愛の甘い部分と苦い部分がうまく出ていて、まもなく子どもが産まれる47歳のオッサンにも充分愉しめた。
僕に言わせるなら恋愛とは、「時に憎悪にまで発展する『嫌い』という感情を生む種」である。男も女も一旦愛した相手だからこそ、裏切られたときに怨む。それは興味のない人間に対しては絶対に芽生えない感情なのだ。
そんな恋愛論をぶちたくなる小さなエピソードが本作には満載されている。それらは観客の“恋愛経験値”によって、クスッと笑えたり、ブスッと胸を刺されたりするだろう。僕は20年まえの嫌な記憶がよみがえって心が痛かった。
サマーを演じたゾーイ・デシャネルが文句なく可愛い。
彼女に一目ぼれした男性の観客は、完全に疑似恋愛をすると思う。サマーとの恋の行方はどうあれ、未婚の男子はエンディングで、ちょっとした勇気をもらうはず。男女の友達同士で観るのもきっと楽しい。
佳作。
この映画、映画館で見ましたが、最初は時系列でないのに
ついていけずアワアワしてしまいました。
トムの夢見る夢男ぶりが若いころの己のようで
(ホール&オーツの曲とアニメに合わせて踊る場面など)
やはり心が痛んだりしましたが、私もサマーの可愛さに
なんだか女の私も一目ぼれした感ありです。(笑)
by うつぼ (2010-08-16 23:05)
あんな可愛い子と仲良くなれたら、僕なんか運命なんか感じなくて
いつか悪いことが起きるんじゃないかと身構えちゃいますねw
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-08-17 13:43)
しょっぱい思い出が蘇る映画でした^^;
女子的にはサマーの気持ちが「わかる〜」って感じだったので
サマー目線の「(500)日のトム」とか観てみたいです♪
by ジジョ (2010-08-18 12:06)
その“しょっぱい思い出”が聞きたいですw
「(500)日のトム」は面白いですね!
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-08-18 14:24)
まさに男友達と見に行ってしまいました^^
サマーのように掴み所のない女の子をやってみたくなりましたけど
案外サマーも恋に臆病な普通の女の子だと思います。
トムが浮かれすぎ!サマーの気持ちをわかって!と思いました。
素敵な映画でした♪
by Cecilia (2010-09-21 09:15)
鑑賞後、男友達との会話に興味があります。
サマーみたいな女の子は、男にしたらハラハラしますね。
トムの浮かれっぷりは、指摘されるまで分かりませんでしたw
by ken (2010-09-22 12:48)
こんにちは。
面白い映画でしたね。kenさんのように、くまなく映画の紹介ができたら
いいなと思います。私はどうも自分だけが納得して、書いているような
気がします。
ところで、サマーという女の子は、男の人からみたらつかみどころがなくて、
かえって惹かれてしまうんでしょうね。でも、女性の立場からいえば、たとえ
「どこまでいっても友達関係よ。」といってたとしても、相手がもっと強引に引っ張ってくれたら、ぜったい気持ちは動くと思いますよ。その点では、トムは
ちょっといい子過ぎたような感じが……。惚れた弱みかな。トムの気持ちもわかります。そういう経験がありましたもの。(笑)
by coco030705 (2011-02-04 17:47)
「惚れた弱み」というワードは、若かりし頃にずいぶん使った記憶がありますw
その強引さが僕にはなくて、ずいぶんもったいないこともしました。
「恋愛論映画」はそういうことも思い出させてくれるからいいんですね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2011-02-06 23:45)