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TSUNAMI-ツナミ- [2010年 レビュー]

TSUNAMI -ツナミ-」(2010年・韓国) 監督:ユン・ジェギュン

 タイトル通り、韓国の最新パニック映画。
 のっけからなんだが、この映画、日本では
当たらないと思う。それは内容の以前の問題として、韓国が作るCG映像のクオリティに期待する日本人がいないと思うからだ。
 たとえ実作業はハリウッドのスタジオで行われていようと、かける予算はアメリカと韓国とではケタ違いである。もしも近くのシネコンで「2012」と本作がかかっていたら、少なくとも僕は「2012」を選ぶと思う。
 かといって「TSUNAMI」に勝機がないわけじゃない。今回僕が観てみようと
思ったのも、「韓国にしか作れないディザスター・ムービーだったら掘り出し物」と期待したからだ。ちなみにここで言うディザースター・ムービーとは、「天変地異による災害」と「人的な大惨事」とする。

 そもそも何故ディザスター・ムービーは作られるのか。
 これは言うまでもなく、人の「怖いもの見たさ」につけこんだ映画会社の戦略である。
 たとえば、関東大震災は起きて欲しくない。けれど発生の可能性は充分にある。ではそのとき首都はどうなるのか?そんな様子をリアルに描いた映画があれば、多くの人が観たいと思うだろう。建設中の東京スカイツリーは立っていられるのか。関東ローム層の上に雨後のタケノコの如く増えた高層マンション群は大丈夫なのか。
 ただし、北海道や沖縄の人が首都壊滅の様子を観たいかどうかは分からない。
 本作におけるポイントもここにある。

 古い話になるが、ゴジラを代表とするかつての怪獣映画がやれ東京タワーだ、大阪城だ、銀座和光ビルだを壊しまくったのは、観客に怪獣のサイズを容易にイメージさせるためと、人間の持つ“破壊欲”を刺激するためだったと思う。
 破壊欲とは本来、「自分に危害を加えようとするものを排除しようとする感情」のことだが、人間には「作ったものを壊してみたい」という欲求も少なからずある。スクラップ・アンド・ビルドのスクラップが時折ショーとなり得るのはその証で、そのためにも映画の中で破壊される建造物は架空のものではなく、実在する認知度の高いランドマークでなければならなかった。それは1933年に製作された「キング・コング」からそう。あの日コングがエンパイア・ステート・ビルに登らなければ、観客は大して驚きもせず、きっと今に名を残す作品にはなっていなかっただろう。 

 さて。
 「TSUNAMI」が舞台としたのは朝鮮半島の南、釜山に近い海雲台(ヘウンデ)というリゾート地である。本編はディザスター・ムービーの王道よろしく、グランドホテル形式で何人もの生活が描かれるが、津波に襲われるシーンで日本人の知るランドマークは無く、僕は何のリアリティも感じなかった。
 きっとこれは韓国の国内向けの映画なのだ。少なくとも僕にはそうとしか思えなかった。
 またリアリティという点では、「対馬大地震によって100メートル級の津波が発生する」という設定にも疑問があった。そもそも日本海である。この狭い海域で仮に津波が発生したとしても一体何メートルの高さになるというのか。

 技術が向上すれば、観たこともない映像を作りたくなるのが、クリエイターの性である。しかしドラマを紡ぐのはデジタル技術ではないのだ。人間の暮らしは数学と違って「割り切れない」ことも無数にある。僕は天変地異に対する韓国人気質がもっと観たかった。最終的には脚本の完成度が低かったということか。

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  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD

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