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トロン [2010年 レビュー]

トロン」(1982年・アメリカ) 監督・脚本:スティーヴン・リズバーガー 脚本:ドナルド・カシュナー

 2010年末に「トロン:レガシー」が公開されると聞いて、「懐かしい」と思う人は僕と同世代でも少ないと思う。というのも1982年9月に公開された「トロン」は、当時「世界で始めてコンピュータ・グラフィックスを全面的に取り入れた映画」と謳われ、多くの期待を集めたものの、興行的には大コケをした作品だからだ。ちなみに劇場公開時に観た19歳の僕は「大した内容じゃない」とバッサリ斬り捨てていた(笑)。

 ソフトウェアメーカー・エンコム社のプログラマー、フリン(ジェフ・ブリッジス)は「スペース・パラノイド」というゲームを開発するが、そのデータを同僚だったデリンジャーに盗まれてしまう。ゲームは大ヒットし、デリンジャーは社長にまで昇進。フリンはゲームセンターのマスターに成り下がる。
 フリンは「スペース・パラノイド」が盗作であることを証明するため、夜な夜なエンコム社へのハッキングを試みるが、ことごとく失敗。それはデリンジャーがプログラムしたMCP(マスター・コントロール・プログラム)が、外部からの侵入を厳重に阻んでいたからだ。
 ハッキングの事実を知ったエンコム社の社員アランとローラは、エンコム社内のコンピュータから直接アクセス出来るようフリンに協力をするが、それに気付いたMCPはエンコム社が開発中だった物質転送機を使って、フリンをコンピュータ世界の中に引きずり込んでしまう…。

 ストーリーが大した内容じゃない割りに、こんなに説明を要するのは、「コンピュータの中」という設定が(実は今も)理解し難いからだ。
 ビジュアルも大きく影響している。コンピュータ内のプログラムは擬人化され、プログラマーと同じ顔をしているのは、これがエンタテインメントだから許されはするが、場合によっては理解されないまま終わる可能性もあって、実際に興行が不発に終わった一因は、若干理解し難い世界観にもあったと思う。

 そんな分かり難い世界を分かり易く、ドラマとしても面白くする方法がある。それは今回改めて観て気が付いたことだが、「フリンは自らの意思でコンピュータ世界に飛び込むべきだった」のだ。
 盗作の証拠がコンピュータによって固くブロックされ、人間の手ではどうにもならないなら、そのブロックを解除するために自らコンピュータ世界に乗り込むべきなのだ。
 ではどうやって?そもそもコンピュータ世界に入り込むってどういうこと?
 この説明にはかなりの時間を要するだろう。けれどそれでいいのだ。
 例えば「ジュラシック・パーク」でも、いかにして恐竜を現代に蘇えらせたのか、についてはかなりの時間を割いて、きちんと説明をしていた。この時間を惜しんでいたら「ジュラシック・パーク」はヒットしていなかったと思う。「トロン」もその勇気は持つべきだった。
 コンピュータ世界の説明が出来たら、次に目指すべきは
「どうやってコンピュータ世界に入り込むか」である。こうやって順を踏むと観客の興味も徐々に高まるに違いない。
 人類未踏の地へ人間を送り、その世界から再び引き戻すとき、ドラマはアドベンチャーとなる。「ミクロの決死圏」を思い出して欲しい。あのテイストをそのまま頂いてしまえば、本作は「技術以外に観るものがない映画」と揶揄されることもなかったはずだ。

 とは言え、僕はコスチュームデザインは気に入っていた。デザインを手掛けたのは「ブレードランナー」でもデザインを担当したシド・ミードだった。さすが。

トロン [DVD]

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  • メディア: DVD

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コメント 4

satoco

本作、宣伝は派手でしたよね。覚えてます。
私にはコンピュータの中に入るというのはイメージとしてすごくよくわかるのですが、それは私がコンピュータ業界に長くいたからだと思います。本作のストーリィもコンピュータにどっぷり浸かった方が考えたのかもしれませんね。一般的な観点からするとそれはおかしいぞって言うことが、分からなくなっちゃったんですね。「ジュラシックパーク」はよくできた脚本だと思います。
by satoco (2010-09-28 21:33) 

ken

satocoさんはコンピュータ業界にいらしたんですね。
新作がストーリー、ビジュアル含め、どこまで見せてくれるのか、
とても興味があります。3D向きな作品ですよね。
「ジュラシック・パーク」は開始5分で「おもしれー!」と思う映画でした。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-09-29 16:47) 

hana

今度公開の「トロン」よりも、こちらの「トロン」の方がなんだか気になってきました。
TSUTAYAにあるといいなぁ。

by hana (2010-11-09 00:47) 

ken

僕の近所のTSUTAYAには無かったので、買っちゃいましたw
新作はゼッタイに前作を観てからのほうが愉しめます!
いちいち前作リスペクトしてますから。予告観ただけだけど。
by ken (2010-11-09 04:20) 

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