ジェネラル・ルージュの凱旋 [2010年 レビュー]
「ジェネラル・ルージュの凱旋」(2009年・日本) 監督:中村義洋 脚本:斉藤ひろし、中村義洋
「アイアンマン2」もそうだったけれど、本作も特に突っかかることなく観ることが出来た。
それは続編の持つ力、いわゆる「慣れ」のおかげだ。
設定も世界観も認知し、登場人物に親しみを覚えると作品はぐっと近くなる。当たり前だが説明に余計な時間が必要ない分、観客はすぐさま映画に入り込めるというわけだ。
「慣れる」ということは、一部「あきらめる」ということでもあった。
前作「チーム・バチスタの栄光」で最大の不満だった竹内結子の芝居。もちろん気にならないではなかったが、しばらくすると「これはもう、しょうがないこと」と途中から意識の外に置いて観ていた。
僕はきっと竹内結子と阿部寛をひとつのユニットとして認めたのだと思う。ボケが拙くてもツッコミが上手ければまずまず見ていられるお笑い芸人と同じ。だから阿部寛が登場してからは何も気にならなかった。ただ阿部寛の登場の仕方には引っ掛かった。交通事故に遭って病院に運ばれてくるとは、ご都合主義にもほどがある。
「慣れ」があったとは言え、前作に比べれば俄然面白かったと思う。
ドラマの縦軸は田口公子(竹内結子)の元に届いた一通の告発文書からスタートする。
「救命救急の速水晃一センター長は医療メーカーと癒着している。看護士長は共犯だ」
院長(國村隼)から事実関係の調査を託された田口は、周辺から聞き取り調査を始めるが、まもなく医療メーカーの支店長が院内で自殺を図る事件が起きる…。
縦軸となるのは謎解きである。
犯人探しを目的としたミステリーの場合、作品を面白くするためのポイントは、「観客をいかにミスリードさせるか」にかかっている。容疑者はいればいるほど面白い。それぞれに動機があって、かつアリバイがなければ、観客は大いに頭を悩ませ、作品に没頭していくだろう。
本作の場合、解明されるべきは、①速水センター長の癒着が事実か否か、②告発文書を書いたのは誰か、③医療メーカーの支店長はなぜ自殺したのか、と入り組んでいるせいで、田口と白鳥がこのもつれた糸をどう解すのか観客の期待も高かったはずだ。そして、その期待を裏切ることなく謎解きのプロセスには見応えがあった。
ただ、ある事件の犯人が前作同様小者で、動機も万人が納得するには至らず、ミステリーとしての失速感は否めなかった。
それを補ったのが、謎解きのあとに用意された“見せ場”だ。なんと後半の30分はミステリーからヒューマンドラマへと姿を変える。平素はいがみ合っている院内も有事となるとそれどころではなく、「医師の本分は人命を救うこと」を観客に再確認させるのだ。
このシフトチェンジは心地よかった。シリーズものの強みとも言うべき贅沢なキャスティングも効いていた。前作の主要キャストである佐野史郎と玉山鉄二が、ほんの数カットだが顔出ししたのは、クライマックスに相応しい演出だったと思う。
堺雅人の映画である。
後半30分に突入してしばらくすると、タイトルの「ジェネラル・ルージュ」の意味が明らかになるシーンがある。「血まみれ将軍」と謳った宣伝もいい伏線になって観客は心を震わせる。
そのシーン。堺雅人にとっての“大見得”だった。
歌舞伎も役者で観に行くものなら、本作も堺雅人を目当てに観ていい。きっと損はしないと思う。
救命救急医療を取り巻く社会的メッセージも良し。
「アイアンマン2」もそうだったけれど、本作も特に突っかかることなく観ることが出来た。
それは続編の持つ力、いわゆる「慣れ」のおかげだ。
設定も世界観も認知し、登場人物に親しみを覚えると作品はぐっと近くなる。当たり前だが説明に余計な時間が必要ない分、観客はすぐさま映画に入り込めるというわけだ。
「慣れる」ということは、一部「あきらめる」ということでもあった。
前作「チーム・バチスタの栄光」で最大の不満だった竹内結子の芝居。もちろん気にならないではなかったが、しばらくすると「これはもう、しょうがないこと」と途中から意識の外に置いて観ていた。
僕はきっと竹内結子と阿部寛をひとつのユニットとして認めたのだと思う。ボケが拙くてもツッコミが上手ければまずまず見ていられるお笑い芸人と同じ。だから阿部寛が登場してからは何も気にならなかった。ただ阿部寛の登場の仕方には引っ掛かった。交通事故に遭って病院に運ばれてくるとは、ご都合主義にもほどがある。
「慣れ」があったとは言え、前作に比べれば俄然面白かったと思う。
ドラマの縦軸は田口公子(竹内結子)の元に届いた一通の告発文書からスタートする。
「救命救急の速水晃一センター長は医療メーカーと癒着している。看護士長は共犯だ」
院長(國村隼)から事実関係の調査を託された田口は、周辺から聞き取り調査を始めるが、まもなく医療メーカーの支店長が院内で自殺を図る事件が起きる…。
縦軸となるのは謎解きである。
犯人探しを目的としたミステリーの場合、作品を面白くするためのポイントは、「観客をいかにミスリードさせるか」にかかっている。容疑者はいればいるほど面白い。それぞれに動機があって、かつアリバイがなければ、観客は大いに頭を悩ませ、作品に没頭していくだろう。
本作の場合、解明されるべきは、①速水センター長の癒着が事実か否か、②告発文書を書いたのは誰か、③医療メーカーの支店長はなぜ自殺したのか、と入り組んでいるせいで、田口と白鳥がこのもつれた糸をどう解すのか観客の期待も高かったはずだ。そして、その期待を裏切ることなく謎解きのプロセスには見応えがあった。
ただ、ある事件の犯人が前作同様小者で、動機も万人が納得するには至らず、ミステリーとしての失速感は否めなかった。
それを補ったのが、謎解きのあとに用意された“見せ場”だ。なんと後半の30分はミステリーからヒューマンドラマへと姿を変える。平素はいがみ合っている院内も有事となるとそれどころではなく、「医師の本分は人命を救うこと」を観客に再確認させるのだ。
このシフトチェンジは心地よかった。シリーズものの強みとも言うべき贅沢なキャスティングも効いていた。前作の主要キャストである佐野史郎と玉山鉄二が、ほんの数カットだが顔出ししたのは、クライマックスに相応しい演出だったと思う。
堺雅人の映画である。
後半30分に突入してしばらくすると、タイトルの「ジェネラル・ルージュ」の意味が明らかになるシーンがある。「血まみれ将軍」と謳った宣伝もいい伏線になって観客は心を震わせる。
そのシーン。堺雅人にとっての“大見得”だった。
歌舞伎も役者で観に行くものなら、本作も堺雅人を目当てに観ていい。きっと損はしないと思う。
救命救急医療を取り巻く社会的メッセージも良し。
すべておっしゃる通りだと思います。私は亡くなった支店長が遺したものがクライマックスの救急救命の場で役だった場面で涙が出てしまいました。
by satoco (2010-09-19 23:24)
キックバックの有効な使い方ですね。
僕もあのシーンは泣けました。
チュッパチャプスが伝票に載っているのはどうかと思いましたけどw
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-09-20 02:33)
まさにドンピシャリな感想で、うんうんとうなずきながら読みました。倫理委員会での速水医師の「人も寄こさない」がびりびりと心に響き、到着したドクターヘリを見上げる場面で、じんと来てしまいました。
by eriy (2010-10-03 13:55)
これはもう堺雅人に出て欲しくて、当て書きしたとしか思えない脚本でした。
だからこそ、僕たちも感動できたんじゃないかと思いますね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-10-04 02:08)