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フェイス/オフ [2010年 レビュー]

フェイス/オフ」(1997年・アメリカ) 監督:ジョン・ウー 脚本:マイク・ワーブ、マイケル・コリアリー

 アクションドラマの秀作。
 「人間の顔を外科手術によって入れ替える」というホラさえ赦せれば絶対に観て損はしない。僕は劇場ではなくDVDで、レンタルされて間もなく観たのだけれど、あまりに面白かったのですぐさまDVDを買い、すぐまた観た記憶がある。

 なんと言ってもジョン・トラボルタとニコラス・ケイジの“演じ分け”がスゴイ。
 2人は共に【FBI捜査官、ショーン・アーチャー】と【冷酷無比のテロリスト、キャスター・トロイ】を演じているのだが、2人で役作りしたのかと思うほど、どちらの役も見事板に付いている。この2人の達者な演技力が「顔を入れ替える」という究極のホラ話を、力技でもって観客に信じ込ませているだ。
 またこれらの役は、役者としての力量が拮抗している2人でなければ実現不可能なプロジェクトだったと思う。「両雄並び立たず」とはよく聞く言葉だが、この作品は“両雄が並び立たなければ”成功しないはずだった。どちらか一方が巧くても、どちらか一方が下手なら、結果どちらも“浮いた演技”に見えたことだろう。そういう意味でも本作の完成度の高さは奇跡に近い。そして脂の乗った2人の演技は観ているだけで愉しい。

 いくつかの「映画術」も確認できる。
 個人的に感心したテクニックは、「視点を替えることで登場人物を多面的に描くことが出来る」というもの。具体的にはキャスター・トロイの子どもを産んでいたサーシャ(ジーナ・ガーション)の描写。トラボルタ演じるショーンと向き合ったときには「ロスを壊滅しようとするテロリストの仲間」。一方ケイジ演じるショーンと向き合ったときは「子ども想いのどこにでもいる母親」として描けている。
 このテクニックのおかげで、ラストシーンはありがちなではあったけれど誰も文句を言わず、それどころか意外と泣けたりしたのだ。

 CG全盛の今から観ると、スタントマンが大活躍した最後の時代の1本と言えるかも知れない。
 特にクライマックス。ショーンとキャスターがボートで対決するシーンは素晴らしく見応えがある。スタントマンの仕事の間にトラボルタとケイジのインサートを入れる編集のセンスも良くて、充分2人の対決に見えている。
 ただ繰り返しになるけれど、一番の見ものは2人の芝居だ。
 特にトラボルタ。テロリストの顔から優しい夫の顔に戻るシーンは最大の見せ場。途中のキレっぷりがハンパないだけに、「もうゼッタイ堅気に見えないはず」と高をくくっていると、まるで憑き物が取れたような表情で現れるから驚く。
 とにかく百聞は一見にしかず。どれだけ美辞麗句を並べても、この映画の面白さは語れない、とここまで書いて気が付いた(笑)。

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コメント 6

satoco

まるっと同意です。以前別のところに私も「最初のトンデモ設定さえ乗り越えれば後は必ず楽しめる」と書いたことがあります。
この主演二人は本当にすごいですねえ。善と悪の両方の芝居に説得力があって、しかもそれを一本の作品の中で同時に見せられて違和感を感じないとは。さらに顔なんて全然似ていない二人なのに、最後にトラボルタが戻ってきた時、それまでニコラス・ケイジが演じてきたのと同一人物なのだとすんなり思える。ウルトラCです。
by satoco (2010-10-27 13:39) 

ken

「ウルトラC」って、なかなか映画には使わないからこそ、
この作品の褒め言葉としては最高だと思いました。うまいなあ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-10-27 16:27) 

movielover

私は劇場で観て素直に感心した作品でした。
そう!!何よりも二人の演技がすごかった。

なんだか久しぶりに観てみたくなりました。
by movielover (2010-10-31 00:09) 

ken

いいと思いますよ。久しぶりに観るのも。
改めて観ると、また違ったところに目線が行きますからね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-10-31 02:10) 

u_yasu

この映画は、本当に主演の2人の力が大きいですよね。
アクションシーンも大迫力で、大好きな映画です。

ジョン・ウー監督には、こういったアクション映画を
もっと製作してもらいたいなぁ〜と思います。
by u_yasu (2010-11-01 04:23) 

ken

ジョン・ウーといえば「M:I-2」もなかなかイケてる作品でしたね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-11-01 11:52) 

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