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僕の心の奥の文法 [2010年 レビュー]

「僕の心の奥の文法」(2010年・イスラエル) 監督・脚本:ニル・ベルグマン

 第23回東京国際映画祭、東京サクラグランプリ作品。
 個人的には「サラの鍵」が気に入っていたので、これがグランプリと言われるとちょっと不満。
 それよりも一番大きな問題は、僕がこの作品をイマイチ良く理解できなかったことだ。
 
 理由は大きく2つある。
 僕が映画の舞台となった1960年代初頭のイスラエル事情にまったく詳しくなかったこと。
 もうひとつは座席の位置。
 僕が抽選販売で入手した席はTOHOシネマズ六本木ヒルズで最大の座席数(644席)を誇るスクリーン7のD列45番、つまり前から4列目の一番右端だった。
 チケットを手にした瞬間から嫌な予感はしていたのだけれど、劇場に入ったら案の定。僕の席は巨大なスクリーンを一番端っこから斜めに見上げる場所だった。
 過去の記憶が蘇える。実は今から14年前に「ミッション:インポッシブル」を観たときも、やはり同じような場所だった。その日僕は、本来長方形に観るべきスクリーンを巨大なひし形に観て、大きく歪んだトム・クルーズの顔を追いかけた。これで料金も同じかと思うと余計に腹立たしく、雑念だらけで映画は素直に受け止められず、後年DVDで観直したときに「こんなに面白かったんだ」と驚く羽目になった。以来「劇場で“観る場所”を間違えると、映画の評価にも悪影響を与える」というのが僕の中で定説になっていたのだ。
 ただ、グランプリを獲得したこのイスラエルの小品が一般公開される保障はどこにもなかった。それで僕は席を立たずにおとなしく開演のベルを待った。

 1963年のイスラエル。ホロコーストの生き残りである両親と、好戦的な友人に囲まれたアハロンは、教養や芸術など人間性を高めてくれるものに興味があった。けれどそれは今の環境では手に入らない。このまま大人になることを拒否したアハロンは3年間成長することを止めてしまう…。

 思春期とは性欲的関心の芽生えを言い、その欲求が簡単には通らないことを知ったときに起きる「大人に対しての敵対心」が激しい感情の揺れを引き起こす。
 アハロンの悩みはそこまでストレートではなかったけれど、父親が壁の修理と称して美しい隣人宅に入り浸ることへの苛立ちは、初恋の相手が自分と異なる思想の持ち主だったことと無関係ではないだろう。この年頃の子どもは得てして純粋で高尚な生き物であることを改めて知らされた気がする。
 いずれにしても当時のユダヤ人のベクトルを理解しないで、この作品の真意は理解しかねる。いい映画だとは思うが、座席の関係もあってスクリーンから発せられる情報のすべてがキャッチ出来なかった僕にはこれ以上語る資格はないだろう。いつか観直してみたい。


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coco030705

こんばんは。
座席の位置で映画の印象が変わるってよくありますよね。私も経験があります。

ところで!お嬢様がお生まれになったんですね。遅ればせながら、
おめでとうございます♪♪♪
父親になられたご感想はいかがですか?絶対嫁にやらないぞ、
なんて思っておられたりして……。(^^)
by coco030705 (2010-11-15 22:23) 

ken

子供が産まれて確実に人生の目標が変わりました。
それは「お父さんが生きてる間にお嫁に行って」ですw
娘の人生だけは特等席で観たいですね。
by ken (2010-11-16 01:31) 

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