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鴨川ホルモー [2010年 レビュー]

鴨川ホルモー」(2009年・日本) 監督:本木克英 脚本:経塚丸雄

 どこかで予告編を観たとき、CGで作られた奇妙な生き物がちょこまか動いているカットが薄気味悪くて、一体誰がこんな映画を観るんだろうと思った。でも巷で万城目学の原作は売れていて、なんだか奇妙な話が「本屋大賞」の候補になっているんだなあと、そのときの僕は思っていた。

 ホルモーとは体長20センチほどのオニを使い、肉弾戦によって勝敗を決める競技。
 この競技を行っているのが、京都大学青竜会、京都産業大学玄武組、龍谷大学フェニックス、立命館大学白虎隊の4団体。主人公の安倍(山田孝之)は2浪の末なんとか入った京大で、第499代青竜会会長の菅原(荒川良々)に「フツーのサークルだから」と騙されて行ったコンパの席で、早良京子(芦名星)に一目惚れし入会。その後オニの存在を知って、ホルモーの世界に引き込まれていく。

 僕はコメディで見せる山田孝之の芝居が大好きだ。
 その芝居は(誤解を恐れずに言うと)お笑い芸人がコントで見せる、ややオーバー目の芝居なのだが、俳優でこれを嫌味なくやれる人はなかなかいない。僕の記憶の中では風間杜夫さんくらいだと思う。そんなコミカルな山田孝之が観たい一心で僕は本作に手を伸ばした。だから作品の内容をとやかく言うつもりはない。ただ山田孝之の芝居は堪能させてもらった。
 一番面白かったのは、青春ドラマの“鉄板”とも言うべき「片思いの相手を自分の小汚いアパートに上げる」のシークエンスだ。
 コンパの帰り道。酒と早良京子に酔った安倍は、気持ちよくなって寝転がった公園で、偶然にも泣いている京子を発見する。深夜、警官の職務質問を受ける京子に助け舟を出した安倍は、思い切って「良かったらウチに寄ってかない?」と声をかける。
 独り暮らしをしたことのある男子なら、きっと誰もが思い出し笑いをしてしまうシーン。この前後は「そうそう、そんな感じになっちゃうよね」と語りかけたくなる山田孝之の芝居が絶品だ。
 僕は以前、「いいオッサンになると若者の恋愛ドラマはもう観ていられない」と書いたことがあるけれど、青春ドラマなら意外と観ていられるんだなと思った。若さの特権とも言うべき、無鉄砲で無自覚で無責任な日常は、もうそんな時代には戻れないと分かっているからこそ、今は懐かしく振り返ることが出来て、素直に受け止めることが出来るのだろう。
 想う人には想われず、想わぬ人から想われる、という恋愛の法則もドラマに生かされていて愉しかった。ただ栗山千明がもうちょっと可愛ければもっと良かったんだけれど。
 
 ホルモーとは陰陽道を取り入れた設定なのだそうだ。興味がある人なら、作品そのものを愉しめるのかも。僕はそうじゃなかったので、山田孝之と荒川良々と濱田岳の芝居を愉しんだ。目的を持たずに観ると辛いかも?

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satoco

原作が好きで見た映画ですが、原作ファンじゃない方の感想を知りたかったので、とても興味深く読ませていただきました。ホルモーはあくまでモチーフであってストーリィの本筋は青春ですが、その部分は合格だったのですね。山田孝之は私も大好物です。
by satoco (2010-11-19 16:10) 

ken

懐古的なものでも、笑えるものは観ていられるようです。
恋愛は痛い思い出が多くて観ていられないのかも。
山田孝之のコメディがもっと観たいと思った1本でした。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-11-20 01:23) 

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