バトルクリーク・ブロー(1980年・アメリカ/香港) [2011年 レビュー]
原題:THE BIG BRAWL/殺手壕 監督・脚本:ロバート・クローズ
ジャッキー・チェンにとっては「汚点」と呼んでもいい作品のひとつ。
ゴールデン・ハーベスト社に移籍後、「ヤングマスター/師弟出馬」に続いて出演したアメリカデビュー作は、あまりにお粗末だった。
監督は知る人ぞ知る「燃えよドラゴン」のロバート・クローズ。彼を引っ張り出したのはレイモンド・チョウか誰か知らないが、このクローズに書かせた脚本が映画史上稀に見る酷さ。
これをどこかの脚本賞に出したら、一次審査で落選間違いナシというサイテーの脚本である。
その中味は、1930年代のシカゴでマフィアが運営する賭博格闘大会に、兄の許婚を人質に取られたジャッキーが出場する羽目になる、というもの(本当にどうでもいいハナシだ)。
中でも全員が立ち上がって「おいおいおい」とツッコミを入れたくなるのが、許婚の替え玉問題。兄のところへやってくる許婚は、中国古来のしきたりで顔を見ずに相手を決めたという設定になっている。だから互いに顔を知らない。その許婚をジャッキーが迎えに行った途中で誘拐されてしまうのだが、マフィアが用意した替え玉は腰が抜けそうなほどのオカチメンコで、ジャッキーはその替え玉を兄に合わせてしまうのだ。当然兄はオカチメンコの顔を見て一瞬ひるむのだけれど、しきたりだからそれを呑み込まざるを得ないし、それどころか賭博格闘大会に出場したジャッキーの勝ち上がりぶりをラジオで聞きながら(そんなものラジオ中継してる設定もぶっ飛んでる)、兄と替え玉の女がワーワー喜んでいるのだ。
あり得ない。
ではジャッキーが優勝し、ホンモノの許婚を取り戻せたら、コイツらどうなるんだと思う。しかしそんなシーンは一切ないのだ。ジャッキーの優勝を喜んだマフィアのボスは、「約束どおり返すからな」と言い、ジャッキーは「分かった!」と優勝を喜ぶ始末。
なんだこりゃ。
詐欺である。ロバート・クローズ詐欺。
この作品が無ければ、ジャッキーのハリウッド進出はもっと早いタイミングで実現したんじゃないかと思うが、過ぎたことをとやかく言ってもしょうがない。
ただし、ジャッキーのアクションはまずまず楽しめる。ストーリー完無視で観るならいい。
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